入学式の、駅の入口で私は彼に出会った。
その人形のように白い肌も綺麗な亜麻色の髪も空のように澄んだ目も、すらりとした佇まいも綺麗でまるで天女のように美しかった。
男なのにそう考えてしまう私はどうかしているのだろう。
駅で降りた時彼が落としたハンカチを拾った時はまだなんとも思っていなくて、ただただ「綺麗な人だなあ…」としか認識していなかった。
「っ……あ、あのっ…ハンカチ。」
「?……あぁ、ありがとう」
私はその時頬が真っ赤に染まっていたことだっただろう。
渡した時のボディーソープの爽やかな香りに太陽のような眩しい輝いた笑みに、私の心は一瞬にして奪われた。
名前はなんて言うのだろう?制服が同じということは何年生なんだろう?聞きたいことが山ほどあって、聞きたかったけれど私の引っ込み思案な性格上でそんなことは聞くことも出来ずに彼は行ってしまった。
「神様、この恋は叶うのでしょうか?」
この珍しい私の独り言は誰の耳にも届くことなく儚く消えてしまった。
でも、その時は知らなかったんだ。
彼には素敵なお似合いな彼女がいたこと、彼は到底届かないような存在だったこと。
あいつが、私に恋をしていたことなんて……
全て知らなかったんだ。
「……っ、どうしてっ」
「なぜだか、お前といると安心するんだ。」
「貴方には彼を渡さない!」
「お前はいい加減俺のモノになれよ。」
「私は、あなたのことが好き____。」
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!