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第5話

3 貴方に生きて欲しいと思う
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2026/03/06 21:59 更新













雨が降っていた、土砂降りの雨が




そんな中、1人の少女はベンチに座っていた




わたしは、何となく、声をかけた

kanade.
kanade.
ねぇ、大丈夫?


生憎、わたしは傘を持っていなかった




もう帰るつもりもなかったから




少女は、顔を上げる気配がなくて





隣に座ってみても、何も言われなかった


kanade.
kanade.
…寒いね



少女はそこで、初めて顔を上げた




泣き疲れたような顔をしていて、何処か見覚えがあった




彼女の瞳は冷え切っていて、尚知っているものだった




何にも希望が持てない、全部、投げ出したい




そんな瞳…わたしにとって、最も痛いもの


shiho.
shiho.
寒いなら、帰ったらいいじゃないですか
kanade.
kanade.
目の前にびしょびしょで、こんな暗い時間に座り込んでる人がいるんだよ?
kanade.
kanade.
話しかけないわけには、行かないでしょ?
shiho.
shiho.
余計なお節介です…



何があったのか、わたしにはわからない




"誰も救えない音楽家"だとしても




気がついてしまったなら、気にしてしまったなら




大切な人たちから生涯を奪ってしまう…




死神の鎌に見える、呪われた手を伸ばしてしまう


kanade.
kanade.
余計でいいよ、元々余計な人間だから
kanade.
kanade.
貴方が誰で、どうしてここにいるのかもわからないけど…
kanade.
kanade.
わたしは、貴方に生きて欲しいと思う、別に、信じなくていいけど
kanade.
kanade.
望むなら、貴方が生きていたいって思えるまで、行動で示して見せるから
shiho.
shiho.
自分で知らない人って言っておいて、生きて欲しいとか…訳わかんないですね…
kanade.
kanade.
そうかもね…あ、タメ口でいいよ、固苦しいのは嫌だし



救えないとしても、誰かに救ってもらえるから




きっと、家族も、友達もいるんだろうから




こんなところで人生を諦めてほしくない


shiho.
shiho.
逆に、何でこんなところに…?
kanade.
kanade.
…大したことじゃないよ
shiho.
shiho.
…?
kanade.
kanade.
死にたいんだ、もう、わたしの生きる意味はないから
kanade.
kanade.
…いや、ずっと昔から、なかったんだろうけど



わたしが救いたかった人は、もう、手が届かない




お父さんも、お母さんも、届かなくて




わたしが、わたしがどうにか出来ていれば




こうは、ならない人もいたはずなのに





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