今日は倉田が夏期講習の為家には来ていない
バイトの用意をしているお姉ちゃんが口にする
そうは言っても何から手をつけていいのかわからない
赤いアザみたいなのができていて痛そうだった
素早く手で隠し必死に何か誤魔化そうとしている
さては何かあるなこれ
私がそう言うと何か思い出したように真っ赤な顔をした
やっぱり
あの光景を見て倉田がお姉ちゃんの首に跡残したんだ
慌てて玄関へ向かうのを私は止める
先日私と倉田が見た例の男だ
あの男は間違いなくお姉ちゃんに行為を寄せていた
じゃあ何も無かったんだ
私は安心してホッとため息をこぼす
はーいと答え、お姉ちゃんはバイトへ向かった
.
私勘違いしてた
お姉ちゃんの方が倉田の事好きだと思ってたけど
逆だった
倉田の方がお姉ちゃんにぞっこんじゃん
面白くない
心のどこかでモヤモヤする
私ってこんなに性格悪かったっけ
そんなことを考えていると見知らぬ場所に来ていた
気分転換に散歩しようとしていたら道に迷った
とりあえず来た道戻ろう
そう振り返るがどこから来たかわからなくなった
ポケットに手を入れるが置いてきたことに気づく
どうしよう
とりあえず歩き続けたらわかる場所まで辿り着くでしょ
.
どのくらいの時間が経っただろう
もう辺りは真っ暗で余計に道がわからなくなった
お腹も空いてきて体力が出ないため近くの公園のベンチに腰をかける
このまま一生帰れなかったらどうしよう
知らない街で散歩なんかしなきゃよかった
体を丸め顔を疼くめる
グッと涙を堪えているとどこからか倉田の声が聞こえてきてその瞬間私は立ち上がった
公園を出ると遠くの方で何か必死に探している姿があった
私は手を振り倉田の方へ走る
あちらも私の声に気づき焦ったように向かってきた
息を切らしながらそう言葉にした
もしかして私の事探してくれてたのかな
私は安心が一気に込み上げてきて涙が溢れる
ダメだまた迷惑かけてしまった
謝ろうとしても涙が出てきて上手く言葉が出ない
その瞬間私の頭に優しく暖かい手が感じられた
すぐさま顔を上げるが既に歩き出していて倉田の表情が見れなかった
彼なりの励ましだったのかな
私は涙を拭い倉田の後を着いていく
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。