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第75話

×田島将吾
1,148
2024/05/14 13:00



この人の気持ちが読めたらとか
本音が見えたらとか



皆よくそんなこと言ってるけど、実際はめちゃくちゃ迷惑な能力だと思う。




…気持ちが読める能力を持ってる人間として言います。








「酒井さん、明日までにクラTの提出よろしくね!!」
「あ、はい…」





クラスの人気者に話しかけられるのは
なにか私に頼みたい雑用がある時だけだ。



私はこの能力のせいで最悪な人生を歩んでる。





私の家系が元々「人の心が読める」能力を持っている。
その人の目を見ると心の中で考えていることや本音がふわふわと頭の上を浮いているように見えて、
その人の心の中を見ることが出来る。



私以外の家族はこの能力を上手い具合に使って生きてるらしいが、私はどうもこの能力とほんとに相性が悪い。



根っからのネガティブ人間なのか、相手のネガティブな本音ばかり目に入るのだ。




少しだけ能力を抑えるメガネをつけているけど、人と長い時間目を合わせることができない私は常にクラスの最下位カーストで


知らぬ間に学級委員に任命され毎日雑用に囲まれてる。




本音を見ると、多分私なんて気持ち悪がられてるに決まってるし、それを見たくないから目を合わせない。そしてまたなにか思われる。



そんな人生だ。




「…はあ。」




私には学校に友達と呼べる人は一人もいないから
いつも校舎の裏のベンチで一人で食べている。


ここは木に囲まれてるから人目もつかないし
何より1人になれるから嬉しい。



自分の手作り弁当を開けたその時、



「うわ!!!」




頭上を通過した鳩が
私の弁当にフンを落とした。



…あの野郎!!




「最悪すぎじゃん…」





1人でそう呟いた時だった。






「俺の食べる???」



空から声が聞こえて慌てて上を見る。




「ハンバーガー、2個あるんだよね。」




木の上からひょいと降りてきたのは




田島将吾





私と同じクラスの…



とにかくよく分からない人。



まず手に持ってるハンバーガーもチェーン店の。
いつ買ってきたんだか。




「チーズバーガーとね、テリヤキバーガー。どっち?」


「え、あ、いや私は」
「じゃあ俺チーズね。はいどうぞ!」


田島くんが私にテリヤキバーガーを押し付けてきて渋々受け取った。


「災難だねえ。フン落とされちゃうなんてね笑」
「…はい。」
「しかも弁当いつも超美味しそうだし。」

「…え?」


思わず田島さんの目を見てしまい、慌てて伏せた。


「…私がいつもここに居るの、知ってたんですね。」
「うん。俺はこの木の上にいるからね。」



木の上にいるのはジブリ男子だけかと思ってた。



「別にジブリ男子以外も木登るよ笑」



…ん??

今私が心で思ったことに返事した…?




たまたま、だよね?



「あなたちゃんいっつも雑用押し付けられてて嫌じゃないの??」

サラッと下の名前で呼ばれてちょっとキュンとした。


「…別に平気です。」



「そう、か。」








気まずい。





その時強い風が吹いて、
葉っぱが大量に落ちてきた。


「きゃあ!!」
「わあ!!笑すげえ!!」



何を言ってるんだこの人は…笑



「あなたちゃん、前髪に葉っぱついてる。」
「え?」


「こっち向いて?」



思わず田島さんの方を見ると、私の前髪に付いた鮮やかな緑の葉を取ってくれた。



「へへ笑とれました〜」
「あ、ありがとうござい…」



田島さんは急に真顔になって私の顔を見つめる。



「な、なにか…」



私が目を逸らそうとした時、


田島さんが私のメガネを取った。





「え」






「あなたちゃん、めっちゃ目綺麗だね。」





真剣な顔で言われて固まってしまう。

な、何だこの衝撃展開。


イケメンに、目が綺麗と言われる。



「…ってか可愛い。」

「は、はあ!?!?」




「いやあ、いっつも顔伏せてるからさ。こんな可愛いと、ちょっと焦っちゃうね笑」


「な、なにを…」




…あれ



私今こんなに田島さんのこと見てるのに

彼の気持ちは何も読めない。




「…あれ、」


「ふふ笑あなたちゃん可愛いわあまじ。」




私の頭をくしゃくしゃって撫でて田島さんは立ち上がった。





「また明日ね笑」





そう言って少し笑って田島さんは行ってしまった。






…ん?


んんん!?!?!?




な、何で今メガネもしてないのに
田島さんの心が読めなかったの!?!?




…というか




最早私の心が読まれてるんじゃないかってそう思うぐらい





田島さんに、めっちゃドキドキした。




いやこれは、




…恋???





田島さん、私はあなたの気持ちが知りたいのに


どうして読めないんですか!?!?!?





あなたの心
読ませてください…!!!





~fin?~





今日から1週間
こちらの短編集を全体公開にします!!!!🌟


たくさんの方に読んで頂きたいので…(またすぐに限定公開にするけど笑)




初めて読む方はぜひぜひ全話読んでみてください🎀
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