甘木 視点
1人分にしては無駄にでかいベッドに座り込み大きなため息を1つ。
𝑄 何があったの?
𝐴 闇不とかいう奴に突き飛ばされて壁にぶつかったかと思いきやなんと部屋でした!以上!!
って、誰に向けて言ってんだ俺は。
一瞬の出来事すぎて夢なんじゃないかと疑う。いっそ夢だったらと願う。けど手元にあるハンカチと拭き取った血の跡がそれを否定してくる。
僅かに血腥い服を脱ぎたいと脱衣所へ向かう。
脱衣所の扉に1枚の紙が乱暴に貼られている。誰かが既に来ていたのか…?いやそれよりも、
今物音がした気が…いやあれは間違いなく人の声やな。耳4つあって聞き間違うはずないわ。
顔を覗かせるとベッドの辺りにびびくんがしりもちをついたような体勢で座り込んでた。
事情を聞いたところ、自分の部屋に戻ろうとしたら何故か俺の部屋に入ったらしい。あれか?触れる壁の位置が変わると行き着く先も変わる的なことか…?つかこれじゃ侵入し放題やん!?
緑玉 視点
予め持っていたパソコンを開きネットに繋げる。持ち物検査とか無くてよかったと思う。
カチカチっと慣れた手つきでフォルダを開く。中にある写真を懐かしむ様に眺める。
どれも楽しそうで、幸せそうで、次々と拝見していると覚えのない動画が1本。尺も12秒という短い動画だった。
ブチッ
どこに向けたらいいのか分からない怒りの籠った拳を机に勢いよく叩きつける。何度も、何度も、机が赤く滲もうと関係なかった。
平常心を保てない。俺の中から黒い渦がどんどん溢れ出て止まらない。頭がおかしくなってしまいそうになる。
包帯を巻いた左手をそっと撫でる。闇不はそれについて何も触れなかった。
闇不が1つ、手を叩くとさっきまで居た部屋にはもう戻れなくなっていた。先程出てきた壁を触ってもすり抜けない。反対側の壁に触れても、特に透けたりしなかった。
闇不はこの部屋…というか、壁の仕組みに興味津々の様子。確かに不思議ではあったが、今の俺が気になるのはそこじゃない。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!