朝の光の粒が、バス停看板に付いた水滴に
反射してきらきら光っている。
冬の頃とは違う、青みを増した空と
緑が混じった桜の木は
完全に春の気をこの街に運んできているようで。
私は時間通りに到着したバスに乗って
席に座りながら、そんな春を帯びた景色を
眺めては胸を躍らせていた。
私が探しているヒーローのこと。
1個上のライなら、その人のことを
知ってるかもしれない。
だけど、誰かの力を借りてでも
早く見つけたい気持ちと
自分だけで見つけ出したい気持ちが
せめぎ合った結果、
なんとなく後者が勝ってるような気がして。
だからライにはまだ、
私が受験の時に起きたあのことを
まだ話していない。
自分の力だけで探し出すのなんて
無謀だって分かってるんだけど。
それでも、あの時体調の悪い私を見つけてくれた
あの人みたいに、私もあの人を自分の力で
見つけ出したいって思うの。
そんな、勝手に作りあげた私のエゴなのだ。
廊下を歩きながらそう思い返す。
あの人と出会ったのがバスだったこともあり、
今日の朝一緒に乗ってた人たちを
かなりセンサーを張って見てたつもりだったけど
それらしき人は見当たらなかった。
バス通だと思ったんだけどなぁ…
あの時はもしかしてたまたまだったのかな。
歩みをピタリと止めてそう思いつく。
すると急に、背中にゴツンと何かが
ぶつかってきて、
…その何か、いや“誰か”は
「あたっ」と短く声を上げた。
きっと私の後ろを歩いてて、
私が急に立ち止まったせいでぶつかって
しまったんだろう。
体を向き直してその子を見ると、
果実みたいな深い赤色に差し色の白が
いちごミルクを連想させる髪を揺らした
女の子としっかり目が合った。
初めて会う人に自分の名前を言う時は
いつも少し緊張してむず痒い。
そんな私に女の子は
顔をぱぁっと明るくさせて。
教室一緒に行こっ!と弾んだ声色を
響かせた女の子…ベリーちゃんは
にっこりと可愛らしい笑顔を浮かべる。
ふわふわ揺れる髪と綺麗に持ち上がった
まつ毛が、The女の子って感じで
女の私から見てもとっても可愛かった。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。