「ん…ん?あれ?ここは?」
「あ、良かった。ようやく起きた」
「うわあ!?!?!?」
目を覚ますと、さっきの青年─アークが隣に座っていた。
「び、びっくりしたでしょ!?いきなり話しかけないでよ!」
「えぇ…全然信用してないじゃん」
信用できるわけないでしょ!!と言いそうになったが、流石にやめておいた。
同時に、吐きそうになるほどの物凄い空腹感が襲ってきた。
「もう…じゃあ僕のおすすめの場所を案内するから着いてきて」
「私こんな状態で歩けないよ」
私がそう言うとアークがキョトンとした顔で私を見るなり、ひょいと私を担いで走り出した。
「ちょっ!?え!?な、何これー!?!?」
「何って…お姫様抱っこだけど」
「そう言うことじゃなくってー!!」
すごい揺れと共に、このままどこへ連れて行かれるのだろうか、魔物の巣へ放り込まれるんじゃないかと、私は不安でいっぱいだった。
けれどそれ以上に、この先にどんなものが待っているのだろうという興奮も湧き上がっていた。
どうやらもう着いたらしい。周りの音が反響しているから、おそらく洞窟の中なのだろう。
目を開けると、そこには植物の蔦が絡まった巨大な扉があった。大昔に作られたのか、取手は錆びており、周りは苔むしている。
「…ここがあなたのオススメの場所?私の視界には大きな扉しか見えないけど」
「まぁ普通はそう思うよね。そこでこの鍵!」
そう言ってアークは独特の形をした鍵をポケットから取り出した。
「何それ」
「僕の師匠がくれた鍵だよ。この扉には特殊な魔術式が施されていてね、この特別な鍵を使わないと変な場所に繋がっちゃうんだ」
「"どこにでもつながるドア"って事?」
「それ師匠も言ってたなぁ…ま、見たほうが速そうだね」
そう言ってアークは鍵穴に差し込み、扉を開けた。
次の瞬間、悍ましい姿をした魔物達が私の視界に飛び込んできた。
目は充血し、羽は溶け、身体中には魔力が血管の様に迸っている。
「ア?ナンデコンナトコニ人間ガイルンダ?」
「オイオイオイオイ、女モイルジャネェカヨ!コリャ豊作ダゼ!!」
「「は?」」
「ねぇアーク…ここがあなたのオススメの場所なの…?」
「そんなわけ無い…いや、でもこの鍵は確かにこの扉の…」
アークがブツブツと何かを呟く。けどこれはちょっと…それどころじゃなさそう…
「……逃げた方が良いんじゃない?」
「それが出来たらとっくにやってるよ!!会話ができるほど知能が発達した魔物のランクはA級!!それも2体!血管が浮き出るほど魔力を内包している場合は最低でもS級……」
「えーっと、つまり……」
詰み。その二文字が脳裏によぎる。あの時と似たような恐怖が私を襲う。
身体中が萎縮し、思うように動かない。
このままじゃ、二人とも魔物の餌食だ。
だとしても。
「─っ!!」
「あ、ちょっと!!リア!?」
私はアークの手を引いて全速力で扉の方へと駆け出した。
当然、魔物達は突然駆け出した私達に向かって走り出す。とくに、真っ先に私を狙ってきた。暗闇の中の洞窟を私たちは闇雲に走り続ける。
人の手を引いて走ったことなんてないから腕が引き千切れそうだ。
「ちょっと待ってリア!!僕らじゃあんな化け物から逃げられないよ!!」
「だったら何!?このまま喰われるのを指を咥えて待ってろなんて言うの!?そんなの私は嫌だよ!それに、アークもなんとかしてよ!!その…超能力とかで!」
「そんなの急に言われても………でもまぁ、困ってる人を助けるのは当たり前だからね!」
任されたからにはやるしかない、そう言うとアークの周囲に無数の文字の束のようなものが浮かび上がり、空気が揺らいだ。
「汝よ、我が元にひれ伏せ。闇系統上級魔術『墜冥』」
─轟音と共に、巨体が冷たい地面に不可視の力によって叩き伏せられた。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。