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第25話

023 大丈夫大丈夫。
23
2026/02/26 05:13 更新
先輩の伝言はそれくらいで、あとは全体に
あなた
ほんっっっっまに熱中症は
気ぃつけて‼️
と伝えるくらいだった。


先輩、大丈夫だろうか。
きっと不安だろうな…。

合宿は楽しいけど、終わらないのがもどかしいという初めてのきもち。

先輩は今、どうしてるんだろ。



✳︎









あなたside


翔陽くんは今、何しとるんやろな。

私は、仙台行きの新幹線に乗っていた。


お腹は空いてない。
食欲がない。

しばらくして、電車は何事もなく駅に着いた。


何かあって欲しかったと少しだけ思う。


お母さんの姿なんて見たくなかった。


できるだけ目を逸らしていたかった。


ホームは、蒸し暑い。




指定された病院に向かい、
受付で病室を教えてもらう。

病室には、お母さんがいた。

寝ている。

穏やかな呼吸音に混じって、機械の音も聞こえる。


あなた
…お母さん


口に出してみても、お母さんは起きない。



正直、複雑な気持ちだった。

お母さんに苦しめられた私がいることは事実や。

けど、お母さんのおかげで食い繋いでた事実もある。


私は、どないすればええんや。


行き場のないもやもやを、どこに持ってけばええん。


あなた
…なぁ、お母さん
あなた
私は、どないすればええの






電車の中で、電話を通じて、
警察の人から説明を受けた。

お母さんは、市内のアパートで見つかったらしい。

そのアパートの名前を私は知らなかったから、
たぶん、新しい彼氏かなにかのアパートなのだろう。

部屋の住人である男性(つまり、恐らくお母さんの彼氏(仮))の部屋には、お母さんしかいなかった。

お母さんは、出血や怪我こそなかったものの、意識のない状態で倒れていたそうだ。

回覧板か何かを届けにきた近所の人が、鍵が空いていることに気づき、中に入ってみると、お母さんが見つかったとのこと。

さらにお医者さんがやってきて、説明してくれた。

血中の濃度から、恐らくお母さんは睡眠薬を過剰摂取してこうなったであろうこと。

そのうち目が覚めるとは思うが、警察の情報などから察するに男女のトラブルによる服薬自殺未遂で、継続的な心身のケアが必要であろうこと。

もしかしたら精神病棟などに入ったほうがいいかもしれないこと。
高校生の私に言われたって、できることとか、
なんもないやろが。


ヘビー過ぎる話や。



今朝まで、翔陽くんと一緒に居れたのに。


お医者さんが出て行って、私は一人病室に残された。









いっそお母さんが死んでしまったなら、
と碌でもないことを思ったり、


生きていてくれてよかったと思ったり、


手続きがめんどいと思ったり、


部活には出られんくなるんかなぁと心配になったり、









…翔陽くんに会いたいって思ったり。












会いたい。






となりに、いてほしい。






一緒に居れば、この現実のやりきれなさも、


少しだけ軽くなる気がしてならなかった。


✳︎

後日。
あなた
…というわけで、部活に出る日数を減らして頂くことになるかと…

お母さんが入院してしまったこと、それで早退したのだということだけを手短に伝えて、私はキャプテンの澤村さん&清水先輩に頼んだ。
お母さんを一人にするわけには行かない。
恐らく男女間のトラブル的なことで自殺未遂までしたお母さんを一人にしておけば、また自殺を図るかもしれんし、とにかく何をしでかすかわからんから、こうする他に手がなかった。
あなた
ごめんなさい、急に…
澤村 大地
いや、宵宮さんのせいじゃないだろ。
清水 潔子
だね。元々、マネージャーは二人だったわけだし。辞めはしないんでしょ?
あなた
はい、それはもちろん!!!
あなた
ひと段落ついたら復帰して、ちゃんと出ます!
清水 潔子
うん。ありがとうね。
澤村 大地
宵宮さんも、無理はするなよ
あなた
っ、ありがとうございますっ…!!!
そして、それはその日のうちに部活内で共有された。
みんな理解を示してくれてよかった。




✳︎
その日はちゃんと部活に出て、帰る時間になった。
日向 翔陽
先輩、帰りましょ!!!
あなた
うん。
月島 蛍
…僕も、同行していいですか
日向 翔陽
つ、月島!!!
あなた
月島くん…
月島 蛍
家の方面はちょっと違いますけど…聞きたいこと、いくつかあるんで。
あなた
あ…そう言えば、言っとったね。
日向 翔陽
…先輩はいいんすか…?
あなた
大丈夫。ありがとう。



✳︎

日がくれても、世間は夏休みなのでまだまだ暑い。
日向 翔陽
あっつう…
あなた
せやね…。
あなた
えーっと、どこから話せばええんかな…
月島 蛍
…その、
あなた
うん
月島 蛍
…なんで日向だけ、先輩の事情を
知ってるんですか
日向 翔陽
…なりゆきで…としか…
あなた
せやね、偶然一緒に帰ったのと、家が近かったのくらいしか…理由ないね?
月島 蛍
…そうですか

間を空けて応える月島くん。
あなた
…怒っとるん?
月島 蛍
…僕にも、わかりません

彼の顔には困惑が滲んでいた。


あなた
まぁでも、別に知っておもろいもんでもないしなぁ。
月島 蛍
…なんでですか
あなた
やたら重いちゅうか、他人を不快にさせてもうたり、嫌なこと思い出させてもうたりする可能性が高いからね。
あなた
…聞きたい?
月島 蛍
… 先輩が嫌なら、別にいいです
あなた
私もどっちでもええよー
月島 蛍
…じゃあ…
日向 翔陽
先輩、いいんですか??
月島 蛍
あーもう、日向は黙ってて💢
日向 翔陽
ハァ⁉️
あなた
ちょ、喧嘩やめぇ!!汗
あなた
別にいいよ。

少しずつ、話した。
母の家系は学歴重視の風潮があって、だから学歴を気にしない父と反りが合わず、離婚したこと。

シングルマザーになった母のストレスは募っていき、ネグレクトや虐待じみたことをされていたこと。

他にも、成績は完璧であれという母の教育方針から、教育虐待のようなものを受けていたこと。

中学受験で失敗したので、推薦狙いで強制的にバスケ部に入らされたこと。

バスケ部でも色々あり、男の子が苦手になったこと。
…改めて振り返ると色々あったな…

(※まだ17歳)
月島 蛍
あなた
ごめんごめん、こんなこと並べ立てられても反応に困るよねえ。

月島くんが固まってしまったので、そう声をかける。
あなた
ふーんって感じでええからね。

月島 蛍
…で、そのお母さんが、入院した…と?
あなた
せやね。
日向 翔陽
…大丈夫なんですか?
日向 翔陽
なんかこう、セイシンテキに??
月島 蛍
…それだと、
頭おかしい人みたいになるけど
日向 翔陽
ちっ、違え!!!辛くないですかってききたいの!!!
あなた
あはは、ありがとう。
あなた
まあ、とりあえずは頑張るよ。頑張るんも我慢するんも慣れてるし。
あなた
でもどうしようもなくなったら、二人に相談したり、翔陽くんちでご飯食べたりさせてもらうわ。

日向 翔陽
ハイッ!!!
月島 蛍
…え、日向のうちで?
あなた
あ、変な意味(?)じゃないよ!!!前にお母さんのことで辛くなってたとき、翔陽くんが…見つけてくれて。
あなた
で、翔陽くんの妹ちゃんとお母さんと、翔陽くんと私の四人でご飯食べたの。
日向 翔陽
先輩、めっちゃ料理うまいんだぞ!!
月島 蛍
なんでキミが誇らしげなの…
日向 翔陽
アァン⁉️💢
あなた
もー…

ぶつくさ言いつつも、私はほっとしていた。


良かった、月島くんが受け入れてくれて。


月島 蛍
…あの、先輩
あなた
ん?
月島 蛍
っていうことは、先輩は、
月島 蛍
…自分を苦しめてた人のお見舞いに、
わざわざ行ってるってことですよね
日向 翔陽
ちょっ、お前…!!!
月島 蛍
だって、そんなの…‼️




あなた
あーはいはい、もう落ち着いて。口論終わり。ステイステイ。

二人の間に割って入り、手で制す。

二人が言わんとしていることは、何となくわかった。
あなた
うん。月島くんが言ってるのも事実。そんなのやり切れない、みたいなことを言おうとしてくれてたんやろ?
月島 蛍
…はい
あなた
うん、それもそう。翔陽くんは翔陽くんで、私のことを気にして深追いしないようにしてくれたんよね?
日向 翔陽
はい…
あなた
どっちも正解やし正義や。
二人ともありがとう。
あなた
でもなぁ、…何にしたってあの人は私の生みの親で、育ての親やねん。
あなた
お母さんがいなきゃ二人にも会えんかったし、あの人の稼ぎがあったから私はここまで成長できた。
あなた
子供一人の養育費を出すのって、かなりかかるんやて。
あなた
勿論、全部許すとは言わんし言えん。あの人に傷つけられた記憶はまだくっきり残ってる。
あなた
でも全く感謝がなかったか言うたら、それはちゃう。小さい頃は優しかったし。
あなた
世の中、そんなに単純とちゃうからね。


それらを言うと、二人は黙ってしまった。

あなた
ごめんね、論破したかったとかそういうのとちゃうねん…
日向 翔陽
あ、イエ、それはダイジョブです!!
月島 蛍
… というより、…なんて言うんだろう
日向 翔陽
なんか、な
月島 蛍
うん、何か

珍しく二人が意気投合しとる…
人間、共通の敵を見つけると結託するて言うしな…

ってことは、私は敵なんか?? 

などと自問自答していたとき、月島くんがゆっくりと言った。
月島 蛍
… その、先輩の言う通りです。世の中そんなに単純じゃない、ってやつ
日向 翔陽
…なー。おれも、先輩はやさしすぎるって思ってました。
日向 翔陽
だからこそすごいし、尊敬するけど、自分のことを傷つけた人のことも心配するってなかなかできないよなって。
月島 蛍
僕も同じ。
…でも確かに、母親っていう位置にいるってことは、傷つけられただけじゃないって、…考えないと解りませんでした。
あなた
よかった、二人がわかってくれて。

ほっとして笑った。
日向 翔陽
世界ってムズカシイデスネ…
月島 蛍
それは同意かも…
あなた
今回、珍しく二人の意見が合っとるね。
日向 翔陽
…なんか、スミマセン…
月島 蛍
…(汗)
あなた
ええよ。元気なのはええことや。
あなた
ただ、ちょー…っと澤村さんたちの負担が重いんとちゃうかなぁ、とは思うわ。

注意喚起も含めて微笑む。
月島 蛍
…それは日向だけですよね
あなた
…欲を言えば月島くんも、もうちょい他人に突っ掛からんとええけどね。
月島 蛍
…善処はします…
あなた
ま、二人ともいい子やから、大丈夫。

大丈夫大丈夫、と私は思った。


そうやって言い聞かせた。


お母さんに対する負の感情を、押さえ込むように。

日向 翔陽







✳︎
おはようございます、こんにちは、こんばんは!
作者の狛圦です!
今回、前回よりも更に遅かったですね。ハイ。長らくお待たせいたしました。でもテスト期間だったんです。勘弁してください。ハイ。

そして!閲覧数が3700を超えました!感謝すぎますね。ひとえに皆様のおかげです。ハートも58個、お気に入りも28個!!!! テスト終わって久々にきたら地味に増えてて嬉しい限りです。新作の発表まで、ハートもお気に入りも残り2個です。スポットライトやコメントももちろんお待ちしてます!例え佐久早くんのような回転がかった反応だとしても真正面から受け止めさせて頂きますので!(※自分でも意味わからん)

はい、本作では暗いですね。日向くんもツッキーも、これからどうしていくんでしょう。お気に入りに登録して待っていてくださればと思います!次回もよろしくお願いします!
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