第128話

エピソード : A 「門出」
7
2025/02/28 20:43 更新
無機質な白い部屋に、

透明すぎてどうしようもない窓


しかしそこに映るのは、またしても機械的な、

コンクリートに囲まれた実験室だ

厚く重い扉は、カードキーをかざせば

すぐに微笑み道を開ける


扉の外には、青々とした人工芝が育っていた
空中30cm程を浮遊する男は

カードキーをいじくりながら、

場に似合わぬ原始的な赤いポストを開ける
ヲザレ・フィクリウス
ヲザレ・フィクリウス
手紙1枚ありっ!
そうして、また重い扉を開け、

無機質な部屋へと戻っていった
桔梗 南
桔梗 南
おい、まだ飛ぶなって言ってるだろ
システムは不完全なんだよ
ヲザレ・フィクリウス
ヲザレ・フィクリウス
はっ、システム?
そんな言葉使って楽しい?
すると赤髪の男は愉快なように、フィクリウスの頬を掴む

真顔なフィクリウスに、反応を求めているようだ
ヲザレ・フィクリウス
ヲザレ・フィクリウス
ムギャ〜!とでも言えば、満足?
桔梗 南
桔梗 南
・・・あぁ、満足だよ
そして少し遅れ、フィクリウスはうなじにあるはずの

ソフト カセットが見えないことに気づく


しかしよく目を配ると、

フィクリウスの首には肌色のバンドが首に巻かれていた
ヲザレ・フィクリウス
ヲザレ・フィクリウス
あれっ!?ちょっ、何で取るんだよ!
すると南は、するりと慣れたようにバンドを取り、

グレーのソフトカセットを外気に晒す
桔梗 南
桔梗 南
危ないからダメって言ってるだろ
ヲザレ・フィクリウス
ヲザレ・フィクリウス
はー、これだから。したたかでしょうがない
雰囲気に酔ったような素ぶりは無視し、

南はため息を吐いた
桔梗 南
桔梗 南
それはよかった
つゆはいつ帰ってくる?
ヲザレ・フィクリウス
ヲザレ・フィクリウス
おーおー、俺がいるときにつゆの話かよ
桔梗 南
桔梗 南
・・・、手紙はドーパミンからか?
話をすり替えようとするも、

南もある程度の情報は持っている様子


フィクリウスはつまらなそうに、

あるいは皮肉げに笑った
ヲザレ・フィクリウス
ヲザレ・フィクリウス
だったら何?俺宛だ
桔梗 南
桔梗 南
渡せ、研究に関する大切なデータが入っている可能性がある
ヲザレ・フィクリウス
ヲザレ・フィクリウス
はぁ?ドーパミンはいつから研究者になったんだよ?お兄さん
二人の間に緊張した、

空気が張り詰める
桔梗 南
桔梗 南
みなまで言わなきゃわかんねぇのかよ
ヲザレ・フィクリウス
ヲザレ・フィクリウス
わかんないね
膠着こうちゃく状態のふたりは、

顔を合わせ無言で見つめ合っている


するとそこに、買い出しを終えた花巻が、姿を現した
花巻
花巻
戻りました・・・って、まだやってるんですか
ヲザレ・フィクリウス
ヲザレ・フィクリウス
あー花巻、実験クソ野郎に何か用?
花巻
花巻
ありありのありよ、新しい「扉」が見つかったわ
先程まで向かい合っていたふたりも、

すぐさま花巻へ注目する


花巻の手には一通の白い手紙と、

薄っぺらいガラスのついた板が握られていた
花巻
花巻
でも相変わらず鍵は開かなかった、得られたのは「工芸品」だけ
桔梗 南
桔梗 南
今すぐ工芸品を裏に回せ
そういい、南は部屋の奥の方へ指をさす
花巻
花巻
わかってるわ
花巻
花巻
でも明日は「鍵」の見つかった唯一の扉を彼らに開けてもらう、工芸品の鑑定より、まずはそっちが先決よ
ヲザレ・フィクリウス
ヲザレ・フィクリウス
なあ、それ俺も行かせろよ
フィクリウスを花巻がきっと睨みつけた


文句がある様な花巻だが、

南に目線を配り、動向をうかがっている
ヲザレ・フィクリウス
ヲザレ・フィクリウス
ヒースクリフが起きるまでの契約だ、あいつの「研究助手」としての役割ももう終わる
桔梗 南
桔梗 南
行くとしたら、事件に関わった全員でだ
するとフィクリウスは信じられないものを見たかのような顔をして、

花巻に目を向けた
桔梗 南
桔梗 南
あぁ、花巻にはこっちで研究を任せるよ
ヲザレ・フィクリウス
ヲザレ・フィクリウス
なんだよ!出不精な花巻がとち狂ったのかと思った
桔梗 南
桔梗 南
だが調査に行くのが俺たちだけって訳でもない
フィクリウスの目が、

怪訝けげんそうに細まる
桔梗 南
桔梗 南
メンバーは、
打って変わってそこは帝都学園


通常ならチョークと、管楽器の音しか聞こえないはずの学園に、

大声が響き渡る
夜蘭
夜蘭
はぁ!?今日研究所に来い!?
そしてやってしまったという様に、

夜蘭は急いでその口を急いでふさいだ
杏里
杏里
異界に関する情報が見つかったらしいんだ、ドーパミンさんたちが見つけたんだって
杏里
杏里
ヒースクリフさんは記憶が戻って今は混乱してるらしい、でも、きっと大丈夫だろうって
夜蘭
夜蘭
ふーん、・・・てか、まだ準備も何もしてねーんだけど!
杏里
杏里
すぐ準備するよ、なにしろ今日中だ
夜蘭
夜蘭
はぁ、俺たちですら今知ったってことはドーパミンもそうなんだろうな
杏里
杏里
あの人も苦労するね
そう言って、ふたりはそそくさと、机の上を片付け始めた
天文台の下にある、いつもの場所


本棚が囲むそこには、

前と違うものがある


見慣れぬ白いベッドと、

少しばかりの薬
ガラン・ヒースクリフ
ガラン・ヒースクリフ
あああああああっ!!
ガラン・ヒースクリフ
ガラン・ヒースクリフ
俺は、俺は、・・・!!
外れない重々しい鎖が、

ヒースクリフの体に揺れた


この場所に合わない手錠は、

ヒースクリフ体を掻きむしるのを抑えている
ドーパミン=サザン
ドーパミン=サザン
ヒース
ガラン・ヒースクリフ
ガラン・ヒースクリフ
俺は、夜蘭を、何で、何で・・・!!!あいつは悪魔じゃないのに、俺はなんてことを、
ドーパミン=サザン
ドーパミン=サザン
ヒースククリフ!!!
ドーパミンの大声に、

ヒースクリフの瞳孔が怯えたように強く震えた
ドーパミン=サザン
ドーパミン=サザン
今からあいつらに会いに行くぞ
ガラン・ヒースクリフ
ガラン・ヒースクリフ
はぁっ、っ、はぁ!?
ドーパミンは震えるヒースクリフの肩を支え、

優しく背中をさする
ドーパミン=サザン
ドーパミン=サザン
でも、行くかどうかはお前が決めろ
ガラン・ヒースクリフ
ガラン・ヒースクリフ
・・・っ、
ヒースクリフは、体を引き裂くような腹痛に身をよじ

唇を噛んで、血が出かけている


しかし、そうしながらも、

確実に何かを話しだそうとしていた
ガラン・ヒースクリフ
ガラン・ヒースクリフ
やだ
ドーパミンの目元に、軽く影が落ちる
ガラン・ヒースクリフ
ガラン・ヒースクリフ
逃げるのは、もう嫌だ
ガラン・ヒースクリフ
ガラン・ヒースクリフ
俺を連れて行ってくれるか、ドーパミン
涙のにじむヒースクリフを見つめ、

ドーパミンは手に力を込めた
ドーパミン=サザン
ドーパミン=サザン
・・・あんたはたまに、俺が信じられないくらい強い
ヒースクリフの赤い目は、

ドーパミンを真っ直ぐに見つめている
ドーパミン=サザン
ドーパミン=サザン
・・・よく頑張ったな
ガラン・ヒースクリフ
ガラン・ヒースクリフ
ただ、自分に素直でいたいだけ
息を呑み、震える体を押さえつけた
ドーパミン=サザン
ドーパミン=サザン
もちろん、連れてくよ
ドーパミン=サザン
ドーパミン=サザン
俺が必ず、目的地まで
そうすると手紙が光を帯び、

そらへ浮かび上がる


いずれそれは鳥になり、

どこかの無機質な場所へと、飛んでいった

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