第125話

【 最終話 】まだまだ未来は広がり続けるから
21
2025/02/12 12:14 更新
少しだけほこりの舞う、

広いが心をくすぐられはしないような、普通の舞台裏


夜蘭はノックを三回落とし、

重く広い扉に手を掛けた
夜蘭
夜蘭
舞台に来るのはなんだか懐かしいな
夜蘭の胸の中にあるのはざわめく不安と、

一縷いちるの期待
杏里
杏里
・・・俺にとって
劇場はトラウマだけどな
夜蘭
夜蘭
はは、そーか、だよな
夜蘭たちが入ったそこは所謂「楽屋裏」に

繋がっていて、個室へと導いてくれる



その狭い灰色の、しかしきらびやかな

衣装が目をちかちかとさせるアンバランスな部屋


そこは、役者が舞台前に打ち合わせをする場
ドレス・スロット
ドレス・スロット
ちょっとちょっと遅いよー!もう始まるんだけど!?
たくさんの役者で賑わう楽屋の隅から、

見慣れた男が走ってきた


相変わらず忙しないのは変わらないようで、

夜蘭はささやかにため息を漏らす
夜蘭
夜蘭
悪いな、予想外の客がいて
ドレス・スロット
ドレス・スロット
ったく、まあまだ始まってないからいいんだけどさ
ドレスが奥へ案内しようとすると、

ドレスの横を見慣れた影が通り過ぎた
ドレス・スロット
ドレス・スロット
あ!リスタさん!
ちょっとこっちきて!
リスタ・ナイトレード
リスタ・ナイトレード
なんやねんもー、今衣装着るとこやったんやけど、って、・・・
そこでやっとふたりの「客」に気づき、

ぼっと顔を赤くし優美に着飾った衣装を振り回す
リスタ・ナイトレード
リスタ・ナイトレード
でっでででで殿下!?
なんで!!杏里くん!?
衣装に足を通そうとしながらこちら向くもので、

リスタはふらふらとけそうになっていた


いつも都合の悪いタイミングでいるような、

そんな絶妙にかっこのつかない男に、

杏里は早速話しかける
杏里
杏里
お久しぶりです、今回はピエロの役なんでしたっけ
リスタ・ナイトレード
リスタ・ナイトレード
ってちゃうわ!
皮肉言うようになったな君も!
そんな中夜蘭は、

久しぶりの会話に少しだけ体を緊張させていた
夜蘭
夜蘭
招待してくれてありがとな、わざわざ
ドレス・スロット
ドレス・スロット
いやもちろん!
招待するにきまってるでしょう
夜蘭にリスタの落ち着かないような視線が、

じっとりと絡みつく


しかしそれを振り払うように、

気まづげに夜蘭は新しい話題を振った
夜蘭
夜蘭
最近どうだ?
ドレス・スロット
ドレス・スロット
せや、団長がワガママ言って、ここ抜けたんですわ!!きゅうに!!バカンスだとか言って!
その既視感のあるニュースには、

さすがの二人も苦笑いをせざるをえない
杏里
杏里
さっきレストラン出会いましたけど
ステラ・ユハン
ステラ・ユハン
っはあ!?
台本読みのフリをしていたユハンも、

ついこちらに顔を出した
夜蘭
夜蘭
猫先輩も、ひさしぶりです
しかし相変わらずドレスのやかましい話はは止まらず、

次よ次よと、話題が回る
ドレス・スロット
ドレス・スロット
しかもあの人、そーやって逃げるくせして、たまにオーディションに参加しにくんだよ!?
ドレス・スロット
ドレス・スロット
そんで、劇団で1番いい演技をして、ただ気持ちよくなって帰ってく!!クソムカつくぜマジ!!
ステラ・ユハン
ステラ・ユハン
おい、それくらいにしとけ
ふたりがうんざりとしてきた頃、

やっと、ユハンがドレス羽交い締めにし、

おしゃべりの幕は閉じる
ドレス・スロット
ドレス・スロット
・・・まっ、それはそれだよな
ドレス・スロット
ドレス・スロット
とにかく今回は楽しんでいってくれよな、じゃ!、
まるで嵐が去ったように、ドレスが去り、

リスタだけが置いてけぼりになったその場は、

妙にしんとしてしまった
リスタ・ナイトレード
リスタ・ナイトレード
・・・ほんま、来てくれてありがとございます
リスタ・ナイトレード
リスタ・ナイトレード
初めての舞台やさかい、
緊張してたんです
リスタ・ナイトレード
リスタ・ナイトレード
でも、あなたの顔みたら、
なんか元気出ました
リスタ・ナイトレード
リスタ・ナイトレード
見守っててください!
ほな楽しんで!
そう言い、リスタもせっせと準備のため

奥へと消えていく
夜蘭
夜蘭
・・・
しかし一言も言葉を交わすことが出来なかった

夜蘭は、すこし不満げのようだ
杏里
杏里
考えてること当ててやろうか
杏里
杏里
なんかちょっと寂しいな、だろ
夜蘭
夜蘭
お見通しだな
夜蘭は言葉尻のまま、

少しだけ眉を下げる


その様は雨に濡れ落ち込んだ、

捨て犬のようにも見えた
夜蘭
夜蘭
俺達も含めて、
みんな違う道へ歩み始めてる
夜蘭
夜蘭
昔なんてなかったみたいに
夜蘭
夜蘭
でも俺は、そんなのできない
杏里
杏里
・・・みんなそうだよ、みんな怖がりながら、必死に未来へ進もうと生きてるんだ。目を逸らしたくなる過去を抱えて。
夜蘭は何も語らない

しかし、楽屋の扉に手をかける
夜蘭
夜蘭
行くか
杏里
杏里
あぁ、今度は観客として、な
杏里たちが戻る頃には、

ホールの照明が軽く落ちていた


迷いながらも席に着くと、

そのには案の定、腕を組むレインと、

冷たい眼差しで見つめるロイがいる
レイン・シャルロット
レイン・シャルロット
もー遅い!どこ行ってたんですか!?マリン先輩は寝るし、ロイはずっと変なことしか言わないしちょー大変だったんですが!
むくれ、腹を立てた様子のレインに、

杏里は静かに目を伏せた
杏里
杏里
ごめんごめん、もう離れないから
レイン・シャルロット
レイン・シャルロット
なっ、・・・
顔を染め硬直するレインを真横に、

オレンジ色の照明は完全に色を落とす


そして、劇場は闇に包まれた


冷たい飲み物を抱える夜蘭の手は、

静かに結露した雫によって冷たく濡らされている
夜蘭
夜蘭
お前も割と罪だよなー・・・なんて
ぼんやりと手の内の冷たさに脳を奪われる夜蘭は、

独りごち、また冷たいものに口をつけた


そこで通信魔法が、

劇場全体をジャックする
ドレス・スロット
ドレス・スロット
Hi!!レディース エンド 
ジェントルマン!!!
それは劇場の隅までも届くような

どこまでも伸びる聞き心地の良い声
ドレス・スロット
ドレス・スロット
そして悪魔の皆さんも、
よくいらっしゃいました!
ドレス・スロット
ドレス・スロット
ここからは全て空想仮想幻の世界!!
今日は全てを忘れ、楽しみましょう!
そして、けたたましいブザーと共に、

粛々しゅくしゅくとした劇が始まる
_______________________________



物語は、救世主が自殺する所から始まった


それは前代未聞、

異色のノンフィクション台本シナリオ



救世主は正義の代償に一度命を失うが、

民に復活させられる


かつての悪魔皇子は英雄へ

救世主こと悪魔皇帝は伝説へ


そして、悪魔の垣根は幻へ




それが、

この喜劇のあらすじ
夜蘭
夜蘭
・・・聞き覚えがあるじゃねえの
杏里
杏里
つい先日の話なのに、よく伝説とか言えるもんだ
レイン・シャルロット
レイン・シャルロット
先日?二年前が舞台の劇ですよ、これ
動き傾く舞台


周りからはくしゃくしゃと、

何かを食べる音が聞こえる
レイン・シャルロット
レイン・シャルロット
なんか舞台袖にいるあの人せんせに似てねー?
ロイ・シャルロット
ロイ・シャルロット
たしかにな、しかし先生の方がお美しい
主演のドレスは黒いマントをまとい、

即位したばかりの皇帝を完璧に演じきっていた


剣舞はしなやかに、したたかに


しかし、現在は一度盛り上がったシーンから一変し、

日常的で微笑ましい、退屈な絵面が続いている



それは、映画の内容だけではなく

舞台背景までも見る余裕が出るくらい。

物語は中盤に差し掛かった頃
レイン・シャルロット
レイン・シャルロット
ロイ、杏里先生も夜蘭先生も、なんかめっちゃいい匂いするんだけど!!
ロイ・シャルロット
ロイ・シャルロット
何!?席を変われ!!せめて夜蘭先生の隣だけでも!!
生徒会長候補たちは退屈のあまり、

水面下小声上で密会を繰り広げていた
夜蘭
夜蘭
おい、静かに
そこで皇帝が一人、

重々しく壇上に上がった


それは先程の演舞のように、

空気を一変させる


生徒会長候補たちの視線も、

また舞台に釘付けになった


男が独りたたずむその姿は寂しそうだが、

不思議と男の顔に不安はなさそうだ
ドレス・スロット
ドレス・スロット
悪魔になんて生まれなかったら、
って何度も思った
ドレス・スロット
ドレス・スロット
迫害されるうちに、だんだん悪さをするのが正しいことなのかもと思い始めた
ドレス・スロット
ドレス・スロット
時には残虐な事だってした、取り返しのつかない事だってした
杏里
杏里
・・・
ドレス・スロット
ドレス・スロット
・・・でも、俺は正義を裏切れない
皇帝は一目見るだけで怖気の立つほど薄く

鋭利な剣を懐から抜き、

純白のカーペットに突き立てる
ドレス・スロット
ドレス・スロット
 だから、俺は決めたんだ
レイン・シャルロット
レイン・シャルロット
なにしてんだろ?
ロイ・シャルロット
ロイ・シャルロット
さてな、私は知らん
もう夜蘭先生に注意されたくないからな
するとそこに、白いタキシードをまとう、

皇帝とは真逆まさかの色合いの、銀髪男が舞い降りた



男は純白のカーペットに突き刺さる剣を引き抜き








赤い幕が血飛沫のように、

舞台に降りる
レイン・シャルロット
レイン・シャルロット
・・・え?
ロイ・シャルロット
ロイ・シャルロット
っ、先生!?
夜蘭
夜蘭
・・・、
ロイ・シャルロット
ロイ・シャルロット
あれ・・・先生じゃないのに

剣が、皇帝の腹に突き刺さる


純白のカーペットに、

赤い血が海のように広がっていく
ステラ・ユハン
ステラ・ユハン
・・・
ドレス・スロット
ドレス・スロット
そんなに悲しい顔をするな
ステラ・ユハン
ステラ・ユハン
悪魔皇帝、なぜお前は、・・・
ドレス・スロット
ドレス・スロット
真の皇子よ、俺を赦してくれ
臓物を貫く金属は、

ドレスの声を震わせた


立っていられないほど痛むはずなのに、

男は目を細めながらも、ただ話す事をやめない
ドレス・スロット
ドレス・スロット
ただひとりの死で償えるなら、
俺は何度でもここで見せしめに死のう
ドレス・スロット
ドレス・スロット
すべての罪を、俺が背負うか、、だから、もう、
男の体は冷えていき、

目から光は失われていく
ステラ・ユハン
ステラ・ユハン
っ、なぜ、なぜ!?
お前は悪魔のくせに!!
皇帝は腹に突き刺さる冷たい剣を握る


その握力は強く、

手に赤い血がしずくとなりにじんだ
ドレス・スロット
ドレス・スロット
お前も悪魔だと思われていた時期があるのならわかるだろう
ドレス・スロット
ドレス・スロット
罪を背負わされることの重さが、心をむしばむ罪悪が、痛みが
美しい銀髪をたくわえる男性は、

皇帝の手を掴み、剣から手を離させようとするが


しかし、手は握りを強くするばかりで、

皇帝は一向に手を離そうとしない
ステラ・ユハン
ステラ・ユハン
お前・・・!!!
こんなもの、痛くない


皇帝はそう訴えかけるような、

不敵な笑みを浮かべる


かつて悪魔と呼ばれた銀髪の皇子は、

そのあまりの執念に、無意識的に体を緊張させた
ドレス・スロット
ドレス・スロット
悪魔は悪くない、悪くない、俺が証明するんだ、何度死んでも、なんど、
ステラ・ユハン
ステラ・ユハン
・・・っ、もう話すな!!
ドレス・スロット
ドレス・スロット
もう、誰も苦しまない世界に、だれもしいたげられない世界に、だれも、
ステラ・ユハン
ステラ・ユハン
ーーーっ!!!!
自分で刺したはずなのに、

痛むのは自分でないはずなのに


皇子は耐えられないような悲痛な声で、

天に向かい願いを乞う
ステラ・ユハン
ステラ・ユハン
巫女よ、お願いします!!彼を助けてください!!そしてこの世界の、すべての罪も!!!
巫女と呼ばれる深紫の短髪を揺らす男は、 

悲しげに目をつむり、皇帝の腹に手を当てた
ステラ・ユハン
ステラ・ユハン
・・・!!
ドレス・スロット
ドレス・スロット
俺は、・・・され、
血溜まる純白のカーペットに、

皇帝は膝をつき崩れ落ちる


赤黒い腹の傷は、

奇妙な光に包まれ、優しくえていく
ドレス・スロット
ドレス・スロット
俺を・・・
ゆるしてくれるのか・・・?
ドレス・スロット
ドレス・スロット
あぁ・・・あぁ・・・あぁ、
ドレス・スロット
ドレス・スロット
神よ、世界よ、ごめんなさい
ドレス・スロット
ドレス・スロット
そして
ドレス・スロット
ドレス・スロット
・・・ありがとう


会場が拍手と、

号泣に包まれる



『こうして、悪魔はすべての罪を許され、

人との共存を許されたのでした』


これは、この世界に革命を起こしたある一日の話
夜蘭
夜蘭
あいつら・・・性格りいな
杏里
杏里
言えてる
二人の会話を、レインは不安そうに聞いた
次第に、オレンジ色の明かりも色を取り戻す
杏里の手は震えている
レイン・シャルロット
レイン・シャルロット
・・・ボンクラ先生
杏里
杏里
はぁ、俺はボンクラじゃ、
そう言い返そうとして、

杏里ははっと口をつぐんだ


目の前のレインは、

今にも泣きそうな顔をしている
レイン・シャルロット
レイン・シャルロット
私、なんだか不安になっちゃって
先生たちが、急にいなくなるんじゃないかって
杏里
杏里
・・・もう居なくならないよ
レイン・シャルロット
レイン・シャルロット
ねぇ、また、また、一緒に、映画見に来よう・・・?
レインの頬は赤く染まっている


杏里は答えづらいように、

顔を伏せていた


夜蘭はその光景をみて、

なんとも言えない気持ちになる
夜蘭
夜蘭
・・・
夜蘭は、あからさまに左に目を逸らす

しかしそこにも、号泣するロイがいた
夜蘭
夜蘭
っ、四面楚歌しめんそかかよ
二人に目を向けないように

カーテンコールを見送る


すると、いつのまにかレインが、

杏里の前に立ち上がった
レイン・シャルロット
レイン・シャルロット
絶対卒業までに
堕としてやるからな!
泣きそうに、

しかし力強くいつものように笑う


レインは涙ぐみながら、

強い希望に満ちた表情で、杏里に向かい合った
夜蘭
夜蘭
・・・俺は教師として、止めるべきか友達として、止めるべきか
しかし杏里もまた、

信念の宿る表情で見つめる


そして最後にはどこか遠いような目をして、

優しくふにゃりと笑った
杏里
杏里
楽しみにしてる
レイン・シャルロット
レイン・シャルロット
え・・・、せんせ、・・!!
杏里
杏里
それじゃあまた、学校で
そういい杏里は立ち上がり、

レインに背を向ける


手だけをふらふらと遊ばせ、

もう振り返ることはない
杏里
杏里
夜蘭、帰るぞ
レイン・シャルロット
レイン・シャルロット
はぁっ!?
せんせー達って同棲してんの!?
ロイの肩がぴくりと震えた

心做こころなしか、動転しているように見える
ロイ・シャルロット
ロイ・シャルロット
え、?
ロイ・シャルロット
ロイ・シャルロット
だめ!!
僕、僕が、夜蘭先生を予約します!!
ロイまでもが立ち上がり、

自分の服の袖を握り不安げに夜蘭をうかがった
夜蘭
夜蘭
・・・はは、帰ろう、帰ろう、学園にも居場所がなくなったら終わりだ、おいマリン起きろ!
レイン・シャルロット
レイン・シャルロット
え、あんたってレズなんじゃ、
その発言にさらに顔を引きひきつらせるも、

夜蘭はもう知らんぷりをするように

ふいとそっぽを向く
ロイ・シャルロット
ロイ・シャルロット
僕は女として女の先生が好きなんだ!
先生は女の子だ!!
夜蘭
夜蘭
・・・拗れてんな
呆れたように苦笑いを向ける夜蘭に、

ロイはさらに続けた
ロイ・シャルロット
ロイ・シャルロット
私、必ず生徒会長になります!そしてあなたを嫁にしますから!必ずです!その横のボンクラを倒し、そして絶対!
今まで二人に曖昧な笑顔を向けていた杏里だったが、

そのロイの挑発的を聞くや否やニヤリ、

と口角に狐を宿す


その様は少しばかり妖艶ようえんで、

夜蘭はい気を飲んだ
杏里
杏里
やれるもんなら、是非
ロイ・シャルロット
ロイ・シャルロット
・・・この、っ!!!
レイン・シャルロット
レイン・シャルロット
・・・
二人は胸底が沸くるように、

もやもやとたぎり、ロイは悔しげに唇を噛む
夜蘭
夜蘭
はは、どいつもこいつも・・・
夜蘭
夜蘭
でも、そうなりゃ二人とも、俺らを落とすにはこの国でいちばん強くならなきゃな
ロイ・シャルロット
ロイ・シャルロット
夜蘭
夜蘭
頑張ってくれよな、せいぜい
目をうるませる生徒会長候補を置き去りに、


二人は眠りこけるマリンの鳩尾みぞおちに拳を放る




そして身柄を回収し、さっさと劇場から去り、


あるべき場所へと帰って行った
そこは打って変わって、

劇場と遠く離れた辺境へんきょう



ドーパミンは、目を擦る
ドーパミン=サザン
ドーパミン=サザン
・・・起きたか
ヒースクリフの頬き、

なにかぬるいものが伝う
ガラン・ヒースクリフ
ガラン・ヒースクリフ
誰だ?お前は、誰だ?
ガラン・ヒースクリフ
ガラン・ヒースクリフ
ここは、どこだ
ヒースクリフの目の前の男は、

うんともすんとも口を開かない


ただその場には非常に重苦しい空気が張り詰めていた
ガラン・ヒースクリフ
ガラン・ヒースクリフ
なんで、思い出せない・・・?
ガラン・ヒースクリフ
ガラン・ヒースクリフ
俺はなんで!
お前が誰か思い出せない!?
ヒースクリフは無意識に、

口内の肉を強く噛む


しかしそれはざらざらとして、

気持ちが悪かった
ガラン・ヒースクリフ
ガラン・ヒースクリフ
夜蘭はどこだ・・・!!
お前は誰だ!!お前は、!!
ドーパミン=サザン
ドーパミン=サザン
・・・、ヒースクリフ、
落ち着いて、聞け
たった一言に、ヒースクリフがかくりと顎を震わさた

その目は、怯えきっている
ドーパミン=サザン
ドーパミン=サザン
俺は、絶対にお前に危害を与えない、それは断然として揺るがない、確固たる約束だ
ガラン・ヒースクリフ
ガラン・ヒースクリフ
・・・俺を、悪魔から
護ってくれるのか?
ドーパミン=サザン
ドーパミン=サザン
ヒースクリフ
ガラン・ヒースクリフ
ガラン・ヒースクリフ
俺は、あいつらを殺さなきゃ・・・
ヒースクリフを見つけるドーパミンのその眼は、

どこまでも、無垢で、真摯で


だけど、少しだけ怖くなる
ドーパミン=サザン
ドーパミン=サザン
もう悪魔なんてこの世界にはいないよ
ガラン・ヒースクリフ
ガラン・ヒースクリフ
ぃやだっ!!いゃ、ちがう!!
いなきゃ、だめなんだ!じゃなきゃ、
涙がまたこらえようもなく、

ヒースクリフの首から、自然に流れ落ちた
ガラン・ヒースクリフ
ガラン・ヒースクリフ
じゃなきゃ・・・
ガラン・ヒースクリフ
ガラン・ヒースクリフ
なぁ、夜蘭はどこなんだ・・・?
俺はあいつに何をした?俺は何を、
ガラン・ヒースクリフ
ガラン・ヒースクリフ
っ!!お前は、
その懐かしき記憶の破片に、

ドーパミンは、目を広げる
ドーパミン=サザン
ドーパミン=サザン
・・・俺は巫女に治療してもらった、
平気だ
ガラン・ヒースクリフ
ガラン・ヒースクリフ
っ、ー、
ヒースクリフは辛そうに丸まり、頭を抱える
ガラン・ヒースクリフ
ガラン・ヒースクリフ
悪い、・・・俺は・・・、
ドーパミン=サザン
ドーパミン=サザン
いいよ、もう、ゆっくり休もう、
何者にも怯えず
ガラン・ヒースクリフ
ガラン・ヒースクリフ
わかんない、わかんない、
わかんない・・・!!俺は・・・!!
『いいんだ』


そのどこまでもやさしい声が、

ヒースクリフの脳髄のうずいにこびり付く


びりびりとして、

分からない感情が付随ふずいしてさらにわからなくなる
ガラン・ヒースクリフ
ガラン・ヒースクリフ
・・・っ
ドーパミン=サザン
ドーパミン=サザン
ヒースクリフ、聞いてくれ
ドーパミン=サザン
ドーパミン=サザン
お前はきっと猶予ゆうよが終わったら、
あぁ、・・・来年の春になったら
ドーパミン=サザン
ドーパミン=サザン
お前はきっと何かを思い出して、真実を知って、後悔してきっと、死ぬほど辛い思いをする
ドーパミン=サザン
ドーパミン=サザン
「俺は間違った」と、
残酷な真実に心を痛める
ドーパミン=サザン
ドーパミン=サザン
でも、それでもいいんだ
不安げなヒースクリフの眼には、

しかしおびえは見当たらなかった
ドーパミン=サザン
ドーパミン=サザン
俺はお前の隣にいる
ドーパミン=サザン
ドーパミン=サザン
何があっても、だ
ヒースクリフは、目をとろんと座らせ瞬かせる

きっと、それは長い眠り
ガラン・ヒースクリフ
ガラン・ヒースクリフ
・・・お前の、なまえ、は、
ドーパミン=サザン
ドーパミン=サザン
ドーパミン=サザン
ドーパミン=サザン
ドーパミン=サザン
お前だけの、騎士だよ
ヒースクリフの目は、

渋げに瞑られた


そっと、一粒だけ涙がこぼれた


それにドーパミンは強く胸を痛める
ガラン・ヒースクリフ
ガラン・ヒースクリフ
・・・
ドーパミン=サザン
ドーパミン=サザン
気にしなくていい、お前は、
遠のく意識の中、

安心の皮を被った毛布のような男は消えていかない
ガラン・ヒースクリフ
ガラン・ヒースクリフ
・・・ありがとう
ガラン・ヒースクリフ
ガラン・ヒースクリフ
俺の隣に居てくれて
記憶を失ったヒースクリフには

信じられない出来事に、ドーパミンは驚き立ち上がる
ドーパミン=サザン
ドーパミン=サザン
ヒース!?
しかし、もう返事は無い

掴みかけた手は、力なく空に解けた
ドーパミン=サザン
ドーパミン=サザン
・・・また、あした
涙を零す
ドーパミン=サザン
ドーパミン=サザン
また、っ、
涙がこぼれる
ドーパミン=サザン
ドーパミン=サザン
また、必ずお前を・・・!!









異界に悪魔がやってきた!!


完ー









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