jn × tn
古びたマンションの一室。
ベランダの外をぼうっと眺めながら、あなたのことを考えていた。
何もかも、脳裏に深く焼き付いている。
初めて出会った日、ふいに手が触れたあのときのことも。
名前を呼ばれただけで胸が高鳴ったあの瞬間も。
お互いの気持ちが通じ合ったあの日のことも。
肩を寄せ合って、くだらないことで笑い合ったあの時間も。
言葉を交わさずにただ見つめ合ったあの時も。
求めあうようにキスして、深くつながったあの夜も。
何気ない笑顔を向けられたあの朝も。
たわいのない毎日が、あなたと出会ったことで何にも代えられない、特別なものになった。
ねぇ、ジャニヒョン。
もう、あなたとは一緒にいられないから。
きっと、一緒にいない方がいいんだってわかったから。
突然消えた僕を心配してくれてる?
悲しんでくれてるかな。それとも、案外平気だったりするのかな。
できれば、僕に一生依存し続けてほしいな、なんて。
「……ゆき、?」
窓の外では、白い雪がちらちらと舞い始めていた。
雲に覆われた空は、どこか現実味がなくて。まるで何かを隠しているような、そんな色をしていた。
ねぇ、懐かしいね。覚えてる?
初雪を一緒に見ると一生一緒にいれるんだって、そんな夢みたいな話をしてくれたっけ。
くだらない話をして、キスをして。
そうしていれば雪の寒さなんていつの間にか忘れていたのに。
迎えにきてよ、って言ったらすぐに僕の元に駆けつける、そんな素直なあなたが好きだった。
僕のこと、本当に大好きだったもんね。
そんなジャニヒョンのことだから、きっと僕がいなくなった今、苦しくてたまらないでしょう?
きっと何をしていても僕のこと思い出すでしょう?
窓を開けると冷たい空気が体中を突き刺した。
ベランダに出て息を吸う。
呼吸は苦しいのに、何故か少しスッとした気持ちだった。
右手の薬指にはめられた、愛おしくてたまらない、あなたがくれたリングを撫でる。
これでいつでもそばにいれるね、なんてキザな言葉。忘れもしない。
このリングを贈ってくれた日。僕の指に輝くそれに触れながら、あなたが言ってくれたよね。
雪が降っていても、寒くても、
そばにあなたがいるなら、きっと大丈夫。
ねぇ。
僕が本当に世界から消えたとしたら、あなたは僕のために何をしてくれる?
これは、僕の愛だよ。
僕なりの、愛し方。
世界で1番愛しているあなたに、たくさん愛してほしいだけ。
記憶という呪いで、あなたのことを縛りたいだけ。
柵に手をかける。
雪はさっきよりも強く降ってきた。
まるで密かに僕の様子を伺っているように、街は静かだった。
end











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。