第27話

おちる
1,352
2026/01/19 14:13 更新

jn × tn












古びたマンションの一室。
ベランダの外をぼうっと眺めながら、あなたのことを考えていた。
何もかも、脳裏に深く焼き付いている。

初めて出会った日、ふいに手が触れたあのときのことも。
名前を呼ばれただけで胸が高鳴ったあの瞬間も。
お互いの気持ちが通じ合ったあの日のことも。
肩を寄せ合って、くだらないことで笑い合ったあの時間も。
言葉を交わさずにただ見つめ合ったあの時も。
求めあうようにキスして、深くつながったあの夜も。
何気ない笑顔を向けられたあの朝も。

たわいのない毎日が、あなたと出会ったことで何にも代えられない、特別なものになった。



ねぇ、ジャニヒョン。
もう、あなたとは一緒にいられないから。
きっと、一緒にいない方がいいんだってわかったから。




突然消えた僕を心配してくれてる?
悲しんでくれてるかな。それとも、案外平気だったりするのかな。
できれば、僕に一生依存し続けてほしいな、なんて。










「……ゆき、?」
窓の外では、白い雪がちらちらと舞い始めていた。
雲に覆われた空は、どこか現実味がなくて。まるで何かを隠しているような、そんな色をしていた。

ねぇ、懐かしいね。覚えてる?

初雪を一緒に見ると一生一緒にいれるんだって、そんな夢みたいな話をしてくれたっけ。

くだらない話をして、キスをして。
そうしていれば雪の寒さなんていつの間にか忘れていたのに。
迎えにきてよ、って言ったらすぐに僕の元に駆けつける、そんな素直なあなたが好きだった。

僕のこと、本当に大好きだったもんね。
そんなジャニヒョンのことだから、きっと僕がいなくなった今、苦しくてたまらないでしょう?

きっと何をしていても僕のこと思い出すでしょう?





窓を開けると冷たい空気が体中を突き刺した。

ベランダに出て息を吸う。
呼吸は苦しいのに、何故か少しスッとした気持ちだった。
右手の薬指にはめられた、愛おしくてたまらない、あなたがくれたリングを撫でる。


これでいつでもそばにいれるね、なんてキザな言葉。忘れもしない。
このリングを贈ってくれた日。僕の指に輝くそれに触れながら、あなたが言ってくれたよね。




雪が降っていても、寒くても、
そばにあなたがいるなら、きっと大丈夫。


ねぇ。

僕が本当に世界から消えたとしたら、あなたは僕のために何をしてくれる?


これは、僕の愛だよ。

僕なりの、愛し方。


世界で1番愛しているあなたに、たくさん愛してほしいだけ。
記憶という呪いで、あなたのことを縛りたいだけ。






柵に手をかける。

雪はさっきよりも強く降ってきた。
まるで密かに僕の様子を伺っているように、街は静かだった。






end

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