第34話

ちょっとひと休み 〜お別れ会①〜
7
2024/04/14 08:00
…それから何日かは、意外にも平穏な時間が流れた。
こころ達が来てから敵の襲撃が急激に増えていたが、突然に鳴りを潜めたのだ。
いつ来るかわからないため、警戒はしている。しかし、一向いっこうに来る気配がない。
かがみは「嵐の前の静けさ」だと言って、恵みの練習に力を入れた。
そのおかげで、多くの人が恵みをある程度使いこなせるようになった。
人間関係も変化した。
話す時間が増えたため、仲がぐんと深まり、自然と名前を呼び捨てするまでになった。…謎の多いかがみに対しては、いまだに敬語が抜けない人もいるが。
そんなある日の、全員がリビングに集まっているとき。
朔羅
…わたし、そろそろ帰ろうかな
朔羅がそう言い出した。
実々
元々の目的は「神様と会う」だったもんね
実々が少し寂しそうに呟いた。さゆなは「じゃあ」と尋ねる。
さゆな
神様探しの旅を続けるの?
朔羅はきょとんとした後、「あぁ違う違う」と手をひらひらと振った。
朔羅
それはね、諦めたの。ダメでもともとだったし、この森を探してもいない気がするし。それに、もうそろそろ帰らないと、心配させちゃうから
心配?
朔羅
うん。わたしの住んでいる家には、家族がいるの
そう言って、朔羅は笑顔で実々を見た。
実々
…うん。たった数日前だけど、懐かしいね
実々も目を細める。
あの家は温かくて、まさに理想のものだった。
朔羅
……ということで、帰るね、かがみちゃん
かがみ
うん、わかった
かがみは微笑んで頷く。しかしやはり、できれば朔羅にいて欲しいという思いは感じ取れた。
みなか
帰っちゃうの? いつ?
みなかが寂しそうに訊いた。朔羅は斜め上を見上げる。
朔羅
うーん…。明日、とか
ななか
明日、かー…
ななかはじっと宙を見つめている。
と、ぱちんと手を打った。
ななか
お別れ会しよーよ!
その言葉に全員が大きく頷いたのは、言うまでもないことだろう。
午後2時頃。
こころ
朔羅さんはあっちの部屋に行ってください!
朔羅
あ、はーい
こころの言葉に、朔羅は嬉しそうに笑みを浮かべる。
朔羅
みんな、ありがとうね
そう言って、さゆな達の寝室へ歩いていった。
かがみ
…で、どんなことする?
朔羅の姿が完全に見えなくなったところで、かがみが楽しげな声で問いかける。
と、さゆなが勢いよく手を挙げた。
さゆな
まずは発案者の意見を聞きたい!
そこで皆の視線がななかに集まり、ななかは動きを止める。
ななか
……あ、は、はいっ
ななかは声を上げて、さゆなを恨めしそうに見た。
ななか
え、っと……。
外で、恵みを使って何かする…とか…
いつになく自信なさげだ。
さゆな
はいっ、何かって何ですかー?
さゆなの揶揄からかうような言葉に、ななかは頬を膨らませた。あまり見ない光景だ。この逆パターンなら最近よく見るが。
ななか
そこはまだ、思いついてないっ
ななかがねたように言って、何人かが笑った。
この2人には、場を明るくする能力が備わっているのだろう。
話題を元に戻すために、かがみが両手を軽く叩いた。
かがみ
ななかちゃんの意見に付け加えで思いついたことがある人、いる?
そう尋ねると、こころが「はい」と手を挙げる。
こころ
ついさっき思いついたことなんですけど…








_____そして、お別れ会ですることが決まった。

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