最初は、
静かなやつだと思ってた。
——
クラス替え初日。
窓側の席に座ってた葵は、
周りに合わせて笑ってるのに、
どこか少し緊張してる感じがした。
話しかけられたらちゃんと返す。
でも、
自分から輪の中心には行かない。
なんとなく、
無理してる感じ。
——
だから気になった。
……いや、
たぶん最初から、
目で追ってた。
——
数学の授業で、
わかりやすく困ってた時。
先生に当てられそうだったから、
見かねて教えた。
そしたら、
小声で「ありがとう」って笑って。
——
その笑い方、
なんかずるかった。
——
そこからは早かった。
毎日話すようになって、
LINEするようになって、
帰るタイミング合わせるようになって。
気づけば、
学校来て最初に探すの、
葵になってた。
——
席替え。
あの日、
普通に嫌だった。
——
新しい席、
遠すぎて。
前みたいに話せない。
振り向かないと顔見えない。
授業中ちょっと話すこともできない。
……思った以上にきつかった。
でも、
葵も同じだと思ってた。
たぶん。
——
だから。
白石が来た時。
葵の態度が変わったの、
すぐわかった。
——
避けられてる。
目、合わない。
LINE短い。
帰りも断られる。
最初、
普通に焦った。
俺なんかしたかと思った。
——
でも。
白石見てる時の葵、わかりやすすぎて。
——
嫉妬じゃん。
——
気づいた瞬間、
ちょっと嬉しかった。
最低だけど。
——
白石は最初からわかりやすかった。
距離近いし、
やたら話しかけてくるし。
でも、
正直、
全然興味なかった。
というか。
比べるとかじゃなく、
もう葵しか見えてなかった。
——
なのに。
肝心の本人は、
頑なに認めない。
——
「別に。」
「なんでもない。」
「普通だし。」
嘘ばっか。
ほんと下手。
——
教室で腕掴んだ時。
逃げんなって思った。
ちゃんと話したかった。
だって、
避けられるの、
想像以上に嫌だったから。
——
それで。
葵が、
「勘違いするじゃん」
って言った時。
——
あ、終わった。
って思った。
好きじゃん、俺。
完全に。
——
名前呼ぶ時、
ちょっと緊張する。
帰り道近いと、
普通に心臓うるさい。
LINE来るだけで嬉しい。
そんなの、
もう答え出てる。
——
でも。
葵は怖がってる。
期待するの。
たぶん。
——
だから、
急かしたくない。
……いや、
本当は今すぐ言いたいけど。
——
白石に告白された時、
正直困った。
“可能性ある?”って聞かれて、
すぐ否定できなかったのは、
葵がいたから。
——
勝手に、
期待させたくなかった。
もし、
葵が俺のこと何とも思ってなかったら。
その時、
ちゃんと白石に向き合わなきゃいけないと思った。
——
でも。
葵が帰ったあと、
普通に後悔した。
泣きそうな顔してたから。
——
次の日から、
なるべく普通にした。
いつも通り。
でも、
前より気にしてしまう。
ちゃんと笑ってるか。
無理してないか。
避けられてないか。
——
……重症。
——
帰り道、
車来た時に腕引いたら、
めちゃくちゃ焦った顔してて。
かわいかった。
——
「なんでもない。」
またそれ。
でも、
最近はその言葉の意味、
ちょっとわかる。
——
言いたいけど言えない。
期待したいけど怖い。
——
たぶん、
俺たち今、
同じところで止まってる。
——
だから。
もう少しだけ。
ちゃんと、
隣にいたい。
——












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!