第9話

#9 わかりやすすぎ(湊side)
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2026/08/06 05:01 更新
最初は、

静かなやつだと思ってた。

——

クラス替え初日。

窓側の席に座ってた葵は、

周りに合わせて笑ってるのに、

どこか少し緊張してる感じがした。

話しかけられたらちゃんと返す。

でも、

自分から輪の中心には行かない。

なんとなく、

無理してる感じ。

——

だから気になった。

……いや、

たぶん最初から、

目で追ってた。

——

数学の授業で、

わかりやすく困ってた時。

先生に当てられそうだったから、

見かねて教えた。

そしたら、

小声で「ありがとう」って笑って。

——

その笑い方、

なんかずるかった。

——

そこからは早かった。

毎日話すようになって、

LINEするようになって、

帰るタイミング合わせるようになって。

気づけば、

学校来て最初に探すの、

葵になってた。

——

席替え。

あの日、

普通に嫌だった。

——

新しい席、

遠すぎて。

前みたいに話せない。

振り向かないと顔見えない。

授業中ちょっと話すこともできない。

……思った以上にきつかった。

でも、

葵も同じだと思ってた。

たぶん。

——

だから。

白石が来た時。

葵の態度が変わったの、

すぐわかった。

——

避けられてる。

目、合わない。

LINE短い。

帰りも断られる。

最初、

普通に焦った。

俺なんかしたかと思った。

——

でも。

白石見てる時の葵、わかりやすすぎて。

——

嫉妬じゃん。

——

気づいた瞬間、

ちょっと嬉しかった。

最低だけど。

——

白石は最初からわかりやすかった。

距離近いし、

やたら話しかけてくるし。

でも、

正直、

全然興味なかった。

というか。

比べるとかじゃなく、

もう葵しか見えてなかった。

——

なのに。

肝心の本人は、

頑なに認めない。

——

「別に。」

「なんでもない。」

「普通だし。」

嘘ばっか。

ほんと下手。

——

教室で腕掴んだ時。

逃げんなって思った。

ちゃんと話したかった。

だって、

避けられるの、

想像以上に嫌だったから。

——

それで。

葵が、

「勘違いするじゃん」

って言った時。

——

あ、終わった。

って思った。

好きじゃん、俺。

完全に。

——

名前呼ぶ時、

ちょっと緊張する。

帰り道近いと、

普通に心臓うるさい。

LINE来るだけで嬉しい。

そんなの、

もう答え出てる。

——

でも。

葵は怖がってる。

期待するの。

たぶん。

——

だから、

急かしたくない。

……いや、

本当は今すぐ言いたいけど。

——

白石に告白された時、

正直困った。

“可能性ある?”って聞かれて、

すぐ否定できなかったのは、

葵がいたから。

——

勝手に、

期待させたくなかった。

もし、

葵が俺のこと何とも思ってなかったら。

その時、

ちゃんと白石に向き合わなきゃいけないと思った。

——

でも。

葵が帰ったあと、

普通に後悔した。

泣きそうな顔してたから。

——

次の日から、

なるべく普通にした。

いつも通り。

でも、

前より気にしてしまう。

ちゃんと笑ってるか。

無理してないか。

避けられてないか。

——

……重症。

——

帰り道、

車来た時に腕引いたら、

めちゃくちゃ焦った顔してて。

かわいかった。

——

「なんでもない。」

またそれ。

でも、

最近はその言葉の意味、

ちょっとわかる。

——

言いたいけど言えない。

期待したいけど怖い。

——

たぶん、

俺たち今、

同じところで止まってる。

——

だから。

もう少しだけ。

ちゃんと、

隣にいたい。

——

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