体調も安定してきて、今日は会社に来ている
妊娠6ヶ月に突入したところだ
常に自分の秘書室か社長室の中での行動が制限されて
見た目もお腹がで始めてるからあんまり社内をうろつけない
そこまでの範囲なら僕たちのことを知ってくれてる人がいるから行ってもいいよって
リノ社、…リノヒョンは送り出してくれる
まだちゃんと残されてる僕のデスクに座ってみんなが僕を囲う
なんてお喋りをしていると
誰かが廊下からこちらに向かってくる声が聞こえた
一瞬でみんなが僕の周りから撤退して座席に戻る
そこにやってきたのはきっと財務部との会議終わりのイエナと、資料の受け渡しでここまできたジウンさん
なんか、久しぶりに顔見た気がする
なんて歩いて15秒ほどの距離まで腰を支えられるようにして連れて行かれる
いやいや、やめてよ恥ずかしい
そうジウンさんは僕の顔を見て呟く
お腹に手を当ててそこまで言った所で
リノヒョンに手を回されて僕は無意識にその出された手を掴む
そのまま社長室の中に連れて行かれた
社長室のソファに座りただぼーっとする
あのジウンさんの顔を思い出すと申し訳ない気持ちになっちゃうな
それから1時間ほどでリノヒョンの仕事が終わり、2人ランチにやってきた
なるべく妊婦には良くない食べ物は避けて自分の食べたいものを注文する
日陰のテラス席で、外には川が流れているいい場所だ
そう、川辺を散歩している人たちや、川を泳ぐ鯉、リードに繋がれたわんちゃんを眺めた
プルルルルップルルルルッ
料理を待っている途中、リノヒョンのスマホが鳴り席を離れる
ただじぃーっと人たちを見下ろしていると
きっと、お姉ちゃんと弟、そしてそのお母さんかな
お父さんの帰りを楽しみにするように3人で歩いている
6年半ほど前、僕のヌナは交通事故で亡くなった
車に撥ねられちゃったんだ
僕とヌナは昔から仲が良かった
ヌナも2個しか違わない僕のことを可愛がってくれて
僕もそんなヌナが好きだった
ヌナも成績は優秀で、韓国でも有名な大学を受験するためによく勉強をしていた
そんなに毎日必死にやっているような素振りはなかったけど、しっかり頭は良くて
なんていつもヌナの明るさに、アッパがいない3人でも笑っていられた
優しくて、強くて思いやりのある、人として尊敬できる人だった
アッパがお酒に溺れて暴力を振るっても
いつも盾になって守ってくれた
家から逃げ出した時もヌナは僕の手を離さなかった
そんな僕にとっては幸せな生活をしていた高校一年生の冬
ヌナの大学受験の合格発表の日の朝
2月20日、今でもあの朝の事は覚えている
なんて、僕も朝早くに学校に行って勉強しようとしていたので素っ気なく返し
起きてきたヌナにも適当に返事をして家を出ようとしたんだ
それが僕たちの最後の会話だった
学校も早下校で、お昼の段階で家の方まで帰ってくると
近所のおばちゃんが焦ったようにキョロキョロしていて
僕を見るなり言葉詰まるようにとにかく車に乗るように促された
意味もわからず、乗り込み連れてこられた場所は大きな病院
嫌な予感しかしなかったんだ
僕にとっての家族はオンマとヌナの2人だけ
その2人の声はどこからも聞こえず、僕1人が部屋に連れて行かれる
誰がいるかもしれないなんて予想はつくのに信じたくもなければ認めたくもなくて
真っ白になった毎日毎日見てきた顔
下半身は見られないほどの有様になってしまったらしい
涙も出なかった
朝、いい結果なんじゃない?なんて言った自分を恨んで
もっと顔をちゃんと見て、話してたらなんて考えて
ヌナに「車気をつけてね」って言われて「ヌナもね」って返してればなにか違ったのかなとか
全て自分に非があるとまで考えてしまった
でも、どう後悔しても結果は何も変えられない
本当に突然いなくなってしまったヌナ
事故のせいで全身麻痺になり、機械に繋がっていないと生きていられなくなったオンマも
ヌナの死を受け入れられず、精神的におかしくなっていた時期もあった
あの日、僕が一緒に合格発表を見に行ってたら何か少しは違ったかな
僕が死んで、ヌナは生きてたかな
リノヒョンが戻ってくるまでの間に、ヌナとの記憶が蘇る
また、会いたいな
ヌナが生きてたら、今頃どんな暮らしをしていたんだろう
なんてリノヒョンは僕の変化にいち早く気がつく
そのタイミングで提供される料理
お腹も空いてたのですぐに僕たちは食事を始めた
僕が好きなものをしれっと僕のお皿に乗っけてきたり
飲み物の減り具合に合わせて店員さんにお願いしたり
手はあんまり動いてないくせに僕の顔を見ながらうまいとかいうから面白くて
そう優しく笑うリノヒョンを見ると、僕もふわっと軽くなって
また好きって気持ちが増えていくんだ






















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。