リカバリーガール「あの子の個性___“全回復”だけどね……」
静まってしまった僕たちに、苦しい顔をしながら続けた。
リカバリーガール「私のように対象者の体力を削ることはない____というかむしろ、その“体力さえも”回復させてしまうんだよ」
飯田「……言われてみれば」
轟「……」
百々さんに回復させてもらった飯田くん、轟くんに視線が集まり、2人とも首を縦に振った。
リカバリーガール「勿論デメリットが無い訳じゃない……あの子自身の体力と引き換えなのさ……」
……!
リカバリーガール「だから、あの子の体力は今底をついている……加えて、酷なことを言うけど___」
チラッと僕の後方……轟くんの方を見て、目を伏せた。
リカバリーガール「個性を使う度、あの子の脳には対象者の受けた痛みを数千倍に圧縮した負荷がかかってる……」
轟「……!!」
対象者の痛み……って。
ふと、轟くんがあのヴィランに攻撃を喰らったときの事を思い出した。
どう見ても生死に関わる大ケガだった。
あの怪我の痛みを……圧縮して脳に喰らった?
リカバリーガール「仮に体力が戻ったとしても、目を覚ます可能性は限りなく低い……目を覚ましたとしても、元通りあんたらとヒーローを目指すことはできないんだよ」
……。
クラスの全員が、静まって。
どうしようもない時間が僕たちの間に流れた。
何もできない悔しさ、あの時動けなかった不甲斐なさに腹が立って仕方がない。
相澤「お前ら……分かってると思うが」
相澤先生はリカバリーガールを気にしながら、轟くんと、飯田くんに目をやった。
相澤「目を覚ましたあいつに、「悪かった」だの、「自分がもっとしっかりしていれば」だの、間違っても言うんじゃねぇぞ」
飯田「っ、…………」
相澤「自分の無力さは充分分かったはずだ。あいつの意思を無駄にするな。……お前らが体育祭でいい結果を残すことが、あいつにとっての心の助けになる」
……相澤先生は、こういうことを言うタイプだと思わなかった。
“心の助け”なんて……。
だって先生なら、そんな根拠のないことをきっと言わないから……。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。