第61話

事件の始まり.°
22,852
2020/07/12 02:40
あなた 𝓈𝒾𝒹𝑒.°





職場体験3日目。



今日も変わらず、3人で保須市内を散策した。




あなた「ヴィランって案外居ないもんだね」



エンデヴァー「この辺りは人口密度もそれほど高くない。渋谷辺りは小さないざこざが日常茶飯事だがな。……なんだ、戦闘したいのか?」




ニヤリと口角を上げて尋ねてきたので、ブンブン首を振った。



なんつー事を言い出すんだこのヒーローは……。







一通り職務を終えて、日が沈んだ。




ヒーロー殺しが近いうちにこの保須市に現れると言っていたけど……一向に気配がない。



まぁ……パトロールもヒーローの仕事のうち___。




ドォォォォォォォンッ!!!!!!




あなた「!!!?」



途端、進行方向で大きな爆発が起きた。




エンデヴァー「なんだ!?」



轟「あそこだ……!」




甲高い悲鳴と、こちらに向かって逃げてくる住民たち。


火事………!?




エンデヴァー「ああ、了解だ」




無線で話していたエンデヴァーが、私たちを振り返る。




エンデヴァー「事件だ。ついて来い!」




騒ぎの中心に走りながら、この騒動が今までの小さな事件とは比べ物にならない程のものだと確信した。



辺りは炎が散漫し、人の叫び声、よくわからない呻き声が聞こえてくる。




ブー……ブー…………




轟「っ、」





と、隣の轟くんが足を止めて携帯を出した。





あなた「轟くん________?」




エンデヴァー「焦凍!!携帯じゃない俺を見ろ!」




轟「位置情報だけ______」




そう呟いて、体の向きを反対に返して急に走り出した。





エンデヴァー「どこ行くんだ焦凍!」



轟「エコー通り4-2-10の細道!そっちが済むか手の空いたプロがいたら応援頼む。そっちの時間は任せた。お前ならすぐ解決できんだろっ」




あなた「えっ、轟くん……!!?」




誰からのメール……?


それに血相変えて……。




ただ事でない事が分かった。


だけど_________。





「誰か……誰か助けて!!」




あなた「!!」




必死に声を振り絞り、助けを求める声が聞こえて。



向こうは轟くんに任せよう……!




エンデヴァー「焦凍……」



あなた「行きましょう!轟くんなら大丈夫だからっ」




息子が心配なのは分かるけど、今はヴィラン退治が優先だ。



騒ぎの中心に行くにつれて建物の損壊が激しく、その中に瓦礫の下敷きになって閉じ込められている人がいた。




あなた「!!大丈夫ですか……!?」




「ギァァァァァァアァァァァァァウ!!!」




駆け寄ろうとした時、道路の方で暴れるヴィランの姿が目に入った。





エンデヴァー「救出できるな!?」



あなた「______はい!!」





ヴィランの方に走っていくエンデヴァーを見送ってから、崩れた建物に近寄った。




「う"ぅ……助け、て……」



あなた「大丈夫っ。今助けます!」




ガレキを退かさないと……!




両腕に力を集中させて、大きなガレキに手を添えた。





ゴゴゴゴゴッ、




動いた瞬間周りの市民から簡単な声が漏れ、近くにいた大人2人が下敷きになっていた人を外に出してくれた。




「ぁ……ありが、とう……ヒーr____ヒー、ロー……?」




……あ、コスチュームが私服みたいだからただの一般人みたいなのか。


改良を請求しよう。




それより……。




「歩けるか……!?避難しないとっ。酷い怪我だ」


「う"……痛ぅ、」




目に見えて酷い損傷を負っている。


頭も強く打ち付けているようだ。





あなた「…………」




『自分の命を、天秤にかけてはダメなんだ』





あなた「_________治療します」





今は……皆を助ける事を考えるんだ!



肩に触れて個性を使うと、光がその人を覆う。



あなた「〜っ、……」




相変わらずの副作用だ。


一つ深呼吸をしてから、回復している事を確認した。




「ありがとう……ありがとう!!」




何度も頭を下げてから、その人は周りの人たちと一緒に避難していった。




エンデヴァーの所に行こう……!





「きゃぁぁぁっ!」




全速力で走っていくと、道路の所でヴィランが這いつくばりながら市民に襲いかかっていた。



そこに飛び込んでいく小柄な老人。




ブォワッ……!




そのヴィランを、炎が覆う。




ちょぉぉぉ!?


今おじいちゃんにあたりそうだったよ!?



攻撃が決まり機嫌の良さそうなエンデヴァーが、悠々と近づいていっていた。





エンデヴァー「存じ上げませんが、そこのご老人。あとは俺に任せておけ……」



?「あんたは……」




「まじっ!?」



「なんでここに……!」




エンデヴァー「決まっている。ヒーローだからさ」




あなた「ちょっと!おじいちゃんに当たりそうだったじゃないですか……!もっと使用ルート考えて____」




エンデヴァー「…………避けただろう」




あなた「避けたけどっ!!」




全くもう……。



というか、このヴィラン……。






あなた「…………脳無……!?」




脳無がここにいるって事は……まさか、死柄木弔もここに?




……そういえば、体育祭の日に会ったステイン……ヴィラン連合の所に行ったんじゃなかったっけ。




…………と、いう事は_________。





あなた「エンデヴァー!!」



エンデヴァー「!?」



あなた「私は向こうの市民の救出に回ります!一通り終わったら轟くんの所に向かうので、ここは任せましたっ」



エンデヴァー「!?おい……!!百々!!!(勝手に居なくなる2人組だ全く……)」








まさか……まさか、ヒーロー殺しと出くわしてなんかいないよね……!?






_________轟くん……!!

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