死柄木Side
2週間前、神野事件直後。
とある暗い倉庫にて。
んなもん分かってるよ。
これから何をすればいいか、俺が一番考えてる。
林間合宿襲撃でいくつかの手駒を失い、先生もいなくなってしまった。
いつも俺を導いてくれていた先生。
この社会を崩壊させる為に俺たちがすべきこと。
俺らが置かれている状況にメンバーが苛立っているのが手に取るように分かった。
暗闇。
僅かな月明かりだけが俺等を照らしている。
俺は顔につけていた手を外した。
あまりに抽象的な計画とも言えない計画だ。
しかしそれを聞いて彼らは満足そうに笑みを浮かべた。
なんやかんやあって俺たちはとある古民家に住み着いた。
まあまあ広いし人目もないので過ごしやすい。
するといきなりトガがテレビを指さす。
シフト・セレナ。
個性は変速。
物体以外にも作用する個性で勿論強い。
よくテレビとかで華麗な戦闘シーンが報じられていた。
チャートは10とかだったか?
荼毘は何故かテレビの画面を穴が空くほど見つめている。
驚きだが敵の貴重な最高戦力の1つだったことには変わりない。
特段興味はねーけど。
そういえば先生が気になるとか言ってたな。
またのんびりし始めたコイツらを横目に俺は家を出る。
パラパラ、と塵が舞う。
細い路地裏。
当然のように裏の人間がうじゃうじゃだ。
いい奴いるかと探したがこういう馬鹿しかいない。
あと2人、目の前で恐れをなして座り込んでいる。
俺はそいつらを見下ろす。
こいつらはもうないな。100%必要ない。
消えてもらうが、少しだけでも情報がほしい。
冷や汗をかきながら必死に記憶を探っているようだ。
見ていて滑稽。
すると一人が声を上げる。
嘘だろ遠いし本当のことか分かんねぇ。
でも命の危険にさらされたコイツらが嘘をついているはずはない。
何を期待したのか知らないがとりあえず塵にしといた。
それにしても。
俺はそいつを連合に取り入れるべく他の奴らにも声をかけていった。
集まった情報はこうだ。
その女は長野県のある町にいる。
昼間は外でぶらついているらしい。
戦った奴は一人しかいないが、その男は強かったのに一撃で倒された。
長い黒髪を持ち、息を呑むほど端正な顔をしているとか。
一拍。のち、
とりあえず荼毘は一発殴りたい。
あの話を聞いて一週間ほど。なかなかこれ以上の情報が集まらず苦戦していたある日。
予想外の手助けがあった。
古民家の電話がいきなり鳴る。
なんとなく、出るべきだと思った。
電話の相手は……
ドクター。
先生の主治医。
俺が仲間探しと並行して探していた相手。
なんでここにかけることが出来たんだ?
いや、それは愚問だ。
ずっと生きてるらしいから容易いことなのかもしれない。
俺が必要な情報?
それは、あの女に関することか?
先生がここで絡んでくるとは予想外だ。
何を言われたか分からなかった。
シフト・セレナ?なんで今。
その女がってことか、?
いや、ちょっと待て。
あいつは引退したよな?
でもフリーの女がシフト・セレナだった場合……
俺は(トガたちがうるさかったので)別室に行ってドクターの話を聞いた。
なんか腹の底から何かが登ってくる感覚。
どぷり、と泥が口から出る。
これは神野のときの転送のやつ…!
視界が変わり……降り立った場所は路地裏。
少し先に日傘を差した黒髪の女が見える。
歩き方。オーラ。雰囲気。
直感で分かった。こいつだ、シフト・セレナ。













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。