深澤side
ピピピピ……、ピピピピ……
…眠い。
眠いけど、起きなきゃ…。
そう思って、重たい腕をスマホの方に伸ばした。
まだ覚醒しきってない頭で今日のスケジュールを確認する。
…あれ?なんかおかしくないか?
なんか違和感があるけど、寝起きだからか分からなくて、とりあえず仕事に行く準備をした。
……今日は、めめがいなくなって、翔太が入院してから初のそれスノの収録か…。
少しだけ重くなった気持ちのまま、迎えに来たマネージャーの車に乗り込んだ。
「なんでですか?」って聞いた?
なんでって決まってるじゃん。
あんなことがあったんだよ?
…ほんとに覚えてないのか?
純粋そうに疑問に思ってる顔を見れば、ふざけんな、なんて言えなかった。
少しの不満を覚えながら俺はマネージャーの運転する車をおりて、楽屋へと向かった。
いつもは騒がしすぎる楽屋。
翔太とめめはぴったりとくっつきあって座ってたな…。
大きな声で笑う翔太と、微笑みながらそれを見てるめめ。
めめに抱きついて翔太に怒られてる、康二とラウール。
もう見れないのか…。
今日の楽屋は前みたいに騒がしいのかな?
それとも、怖いくらいに静かなのかな?
分からないけど、少なからず前見たいな光景は見られないんだろうな。
着いた楽屋の前でいちど深呼吸をした。
…よし、はいるぞ…。
ガチャ……
そんな俺の間抜けな声と一緒に荷物が俺の手から滑り落ちた。
楽屋の中には、たしかにあの日いなくなっためめと、病院にいるはずの翔太がいた。
みんなが俺のことを不思議そうに見てくる。
いや、そんなわけない…。
慌ててスマホをカバンから取り出して日付けを見た。
……戻ってる…。
事故が起きた2日前に戻ってる…。
朝感じた違和感はこれだったのか。
じゃあ、あの事故はなんだったんだ?
夢?
そんなわけない、確かにこの目で見たんだ。
頭の中はぐちゃぐちゃなのに、俺の体は勝手に2人のことを抱きしめてた。
大粒の涙が、2人のお揃いの服に染み込んで跡をつけてく。
抱きしめてる2人の感触が現実なんだって分からせてくれた。
生きててよかった。
あれは嘘だったんだ。
よかった。
あれは夢だったんだ。
「事故に巻き込まれた〜〜」
イタズラ電話。
慌ててるスタッフ。
そのスタッフの口から発せられてくる言葉。
なんで……
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!