第3話

57
2026/03/10 10:00 更新


午後二時前


🍭
ほら、ちょこぺろ、そろそろお客さん来るよ
 
🍫
あ、うん
 
🧢
ちょこぺろ緊張してる?


鏡を見ながら着物の襟を正していると





りうくんとオクラさんが、ひょっこりと顔を覗いてくる


🍫
あんまり...でも、俺に会いに来るお客さん珍しいなって
 
🍭
たしかに。いつもは旦那様に会いに来る人ばっかりだもんね
 
🧢
とうとうちょこぺろの凄さが世に広まるのか〜
 
🍫
いや、俺なにもすごくないよ...笑
 
🍭
えー?そんなことないよ...ねぇ、りうくん?
 
🧢
そうだねぇ...
 
🍫
...


まただ





二人は時々、俺の知らない二人になる





まるで、俺を通して、別の人物を見ているかのような顔をする





...まぁ、前に仕えてたところの人でも思い出してるのかな


🍭
あ、ほらそろそろ洋館に移動しないと
 
🍫
うん













🧢
うわー...なんか俺も緊張してくる
 
🍭
なんでよ笑



二人がいつも通り、仲良く喋るのを聞きながら目を閉じる





なんとなくざわつく胸の奥を落ち着かせるために





ひとつ、深呼吸をする


🧢
ちょこぺろめっちゃ緊張してるじゃん笑
 
🍭
緊張する時はやっぱり深呼吸だよね〜





 " ____、緊張してるの?ほら、深呼吸して! " 





🍫
っ、!



ふと、脳内に響く声に驚いて腰を上げる





なんだ、これ...


🍭
...ちょこぺろ、?どうしたの?
 
🧢
......ゆっくり座って、大丈夫だよ
 
🍫
...、は、ぁ...



どこかで聞いたことがあるような声なのに





まるで脳にノイズがかかったかのような感覚に陥る





あとちょっとで、思い出せそうなのに





俺は、一体_____


🧢
__、...ちょこぺろ!
 
🍫


ぱち、と小さな、何かが弾けるような音で、意識が返ってくる





二人の心配そうな瞳が、俺を映す

🍭
大丈夫、?具合悪い...?
 
🍫
うん...多分、大丈夫...
 
🧢
...来客が終わったら、横になって休みな。ちょっと顔色悪いよ
 
🍫
...わかった


胸のもやもやが晴れないまま、柱時計の長針がⅡに近づいていく




" コンコン、コンコン "




🍭
あ、来た。行ってくる
 
🍫
うん



さっきまで俺の肩に手を乗せていたりうくんが、スッと離れていく





肩にはほんのりとぬくもりが残っている

🧢
......遅いな



確かに、玄関までの距離はそう長くない





もしかしてオクラさんになにかあった...?





" コツ...コツ... "




そんな心配は、遠くから聞こえてきた二つの足音によってかき消された


🍭
...お連れいたしました
 
失礼いたします
 
🧢
っ、......



後ろから小さく、りうくんが息を呑む音が聞こえた





知り合い...?

初めまして。お父様にはいつもお世話になっております、トドと申します
 
🍫
...ちょこぺろです。お忙しいところご足労頂きありがとうございます



なぜだろう





この人にも、りうくんやオクラさんと似たものを感じる





初めて会うはずなのに…





考えていても仕方がないので、椅子に腰掛けるよう勧める


🦭
早速ですが、私が今日若様を訪ねたのは、貴方のお父様に依頼されてのことです
 
🍫
...父が?
 
🦭
はい



正直に言うと、俺は父との思い出というものが全くない





家を空けることが殆どで、最後に共に食事をしたのなんて数年前のことだ





唯一、うっすらと覚えていることがあるけれど、あまりいい記憶ではないことは確かだ


🦭
お父様が仕事の都合で、最低でも一年は帝都を離れなくてはいけなくなりまして
 
🦭
その間、いくら武術に長けた使用人がいるとはいえ、若様の身に危害が及ぶ可能性も無くはない
 
🍫
...


まぁ、確かに





りうくんやオクラさんが、その武術に長けた使用人だけれども





基本、彼らはこの家から出ない





外にいるときに事故や事件に巻き込まれる可能性はあるだろう


🦭
なので、家の体面を守るためにも、とのことで、こちらで連れてきた二人の護衛を付けさせて頂きたい
 
🍫
護衛...ですか


それなら父が直接連れてくればよかったのではないか





なぜ己の知人に人選と説明を頼むのか





護衛をつける理由からも、父の、俺への関心の薄さが垣間見えた気がした


🦭
呼んでもよろしいですか?
 
🍫
はい、お願いします
 
🦭
ありがとうございます。外で待たせているので、少々お待ちを
 
使用人
...どうぞ、こちらへ



使用人が扉を開けて、トドさんの後ろをついて行く





トドさんの背中を、どこか掴めない表情で見つめるオクラさん


🍫
...ねぇ、
 
🍭
なんでしょう
 
🍫
...オクラさんとりうくんって、トドさんと知り合いなの
 
🍭
...!
 
🧢
っ、...



自分の口からでた声は、驚くほど冷静だった





オクラさんの戸惑ったような、悲しそうな瞳が俺を見つめる

🍭
.....に...
 
🍫
...?
 
🍭
...いえ、なんでもございません
 
🧢
...



りうくんも、何も言わずに床を見つめている





そんな二人の間には、言葉にし難いなにかが漂っていた


使用人
失礼します...りうさん、オクラさん、すこし宜しいでしょうか
 
🍭
どうしました?
 
使用人
少し急ぎの事案がございまして...お坊ちゃま、申し訳ありませんが、お二人を少々お借りしても宜しいでしょうか?
 
🍫
構わないよ
 
🧢
では、少し失礼しますね



二人が部屋を出ていって、代わりの使用人が入ってくる





静寂が続く中、複数の足音が徐々に近づいてきた


使用人
どうぞ、お入りください
 
🦭
若様、お連れいたしましたよ
 
失礼しまーす
 
...失礼します



どこかふわふわとした柔らかい声と





この静寂を貫くような凛とした声が部屋に響いた




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