魔法道具管理局での仕事を行っているが、どうしても胸騒ぎが収まらない。
何か良からぬ事が起こる気がした。
少し周囲を見回していた時、背後から低い声が響いた。
その声の方に体を向けると、少し外していたレインが戻ってきていたという事がわかった。
記していた魔道具の資料をレインに渡し、1ページ1ページ確認してもらう。
レインと会談していた時、また新たな人物がこちらに歩みを進めてきた。
レインが発した言葉と同時に振り向くと、そこには綺麗な金髪が良く煌めいている男性がいた。
165cmの自身では180越えのライオを下から見ることしか出来ない。
それでも、失礼の無い様な態度をする。
私が質問をライオへと問いかけた時、ライオはこちらに刺さるような鋭い視線を向けていた。
今までライオに向けられたことが無いような視線が、私にずっと突き刺さる。
ああ、私は朗らかな性格であるこの方に何か粗相を行ってしまったのだろうか?
ずっと突き刺さると思っていたその視線は、とても煌びやかな笑顔へと変わった。
くるっ、と急ぐようにローブやら髪やらをひらめかせ、長い足でいそいそと歩き始める。
身長差が大きいなら、足の長さの差も大きい訳だ。
ただえさえライオはスタイルがいいと言うのに、その長い足で速く歩かれてはこちらは少し走るように追いかけなければいけない。
いつもは誰にでも歩幅を合わせてくれるこの方が、今は目的の場所へと吸い寄せられる様に速く歩いていた。
無我夢中でライオへついて行くと、急にライオはピタリと足を止めた。
ふと周囲を見渡すと、そこには誰1人歩いている者は居なかった。
当たり前だ。ここは長い間誰も使用していないミーティング室なのだから。
薄暗くなってきた室内の中をよく目を凝らしながら捜索しているが、特に何も無い。
ライオの方へと振り返ろうとした時、私は大きな衝撃と共にライオに壁に抑えつけられていた。
あまりにも急で、あまりにも力強くて、あまりにも体格差があり過ぎて、
私が抵抗する余地も、考える余地もなかった。
抵抗しようにも、両腕を上げるように拘束されてしまった。
魔法を使うにしても、光魔法のライオの方が速いだろう。
あまりにもこの貧弱な体では、警備隊隊長として日々身体を鍛えている男に魔法無しで勝ることは出来ない。
顔と顔があまりにも近く、ギラギラと光っている彼の目がとても恐ろしく感じた。
私が言葉を放つ度に、ライオの拘束する手が強くなる。
ライオのその宝石の様に美しかった目は、今はどうも今の私の目と似ていた。
とても濁っている。
ここが暗がりだからか?
いや、違う。
ライオの目は、ライオはどんな所でも輝いていた。
段々と口調が強くなり、それに比例するようにアパタイトの様な目は汚濁して行った。
その名前を聞いた時、改めてここの状況が理解できた様に感じた。
ああ、私は、バレたんだ。
ライオに捕まってから、薄々気づいていたというのに、ライオの問いかけに答える声が出なかった。
不意にも、私はバレたことの恐怖よりも、ライオの目が濁ったことに恐怖を感じていた。
この状況では、完全に、
少し口調の強いその名前の呼ばれ方が、どうも苦しかった。
ライオに剣幕立てられているからでは無い。
ただ。
ライオにこのように尋問させてしまった事に申し訳なさしかなった。
魔法界でもトップクラスのお人好しが、あまりに裏の仕事が好きではない彼が。
私を問い詰める為だけにこんな剣幕立てなければいけなかったんだ。
徐々にあなたの偽名 下の名前の髪は、黒曜石の様な黒から、月の光を受けた様な銀へと戻って行った。
昔懐かしいその銀の髪が、戻ってきた。
なにか言葉を続けようとしていたと言うのに、ライオはその先の言葉を話すことはなかった。
先程とは違うその柔らかさのある言葉に、私はただ頷き、息を吸った。
1度白銀に戻した髪をまた闇に染め、”あなたの偽名 下の名前”はいつもと変わりの無い声色で話し直す。
その言葉を聞いた時、私は1人の人物の顔が浮かび上がった。
白銀の髪をたなびかせ、緋色の目を瞼で隠している者。
そして、私が愛していた人。
そんなの、決められるわけが無い。
私は、もうあなたの下の名前として罪をまた背負うことも出来ない。
でも、皆との、あの時の神覚者の皆と仕事をした日々を無くしたくも無い、今更名残惜しく感じてきてしまった。
ああ、私は、
アンケート
私は、どうすればいいんだ。
バイガン
83%
イーヴァル
17%
投票数: 383票













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。