第31話

26話 人生の分岐点
793
2025/07/21 21:00 更新





あなた
………?…







あなた
(何か、違和感があった様な……)




魔法道具管理局での仕事を行っているが、どうしても胸騒ぎが収まらない。





何か良からぬ事が起こる気がした。





レイン・エイムズ
あなたの偽名 下の名前。




少し周囲を見回していた時、背後から低い声が響いた。




その声の方に体を向けると、少し外していたレインが戻ってきていたという事がわかった。




あなた
戦の神杖様。




レイン・エイムズ
仕事は順調か。





あなた
はい。今行える仕事は全て終わりました。




記していた魔道具の資料をレインに渡し、1ページ1ページ確認してもらう。





レイン・エイムズ
……ああ。問題無いようだな。
レイン・エイムズ
今日はそこまで忙しく無い。30分休憩に入れ。




あなた
ありがとうございます。戦の神杖様。





.
休憩なら少しあなたの偽名 下の名前を借りても良いか?




レインと会談していた時、また新たな人物がこちらに歩みを進めてきた。





レイン・エイムズ
……ライオさん。




レインが発した言葉と同時に振り向くと、そこには綺麗な金髪が良く煌めいている男性がいた。





あなた
光の神杖様。私めに何か用でしょうか?




165cmの自身では180越えのライオを下から見ることしか出来ない。




それでも、失礼の無い様な態度をする。





私が質問をライオへと問いかけた時、ライオはこちらに刺さるような鋭い視線を向けていた。




今までライオに向けられたことが無いような視線が、私にずっと突き刺さる。




ああ、私は朗らかな性格であるこの方に何か粗相を行ってしまったのだろうか?




ずっと突き刺さると思っていたその視線は、とても煌びやかな笑顔へと変わった。




ライオ・グランツ
あぁ!あなたの偽名 下の名前に少し聞きたいことがあってな!
ライオ・グランツ
少し借りても良いか?レイン。




レイン・エイムズ
……はい。丁度休憩に入らせた所なので。あなたの偽名 下の名前さえ良ければ。



あなた
私は勿論大丈夫ですが……




ライオ・グランツ
そうか!なら少し借りていくぞ。




くるっ、と急ぐようにローブやら髪やらをひらめかせ、長い足でいそいそと歩き始める。





身長差が大きいなら、足の長さの差も大きい訳だ。




ただえさえライオはスタイルがいいと言うのに、その長い足で速く歩かれてはこちらは少し走るように追いかけなければいけない。




いつもは誰にでも歩幅を合わせてくれるこの方が、今は目的の場所へと吸い寄せられる様に速く歩いていた。




あなた
……っあの。光の神杖様……
あなた
これ程急いで、何か至急の用事なんでしょうか……?




ライオ・グランツ
……大丈夫さ、そろそろ着く




無我夢中でライオへついて行くと、急にライオはピタリと足を止めた。





ふと周囲を見渡すと、そこには誰1人歩いている者は居なかった。




当たり前だ。ここは長い間誰も使用していないミーティング室なのだから。





薄暗くなってきた室内の中をよく目を凝らしながら捜索しているが、特に何も無い。




あなた
……ここで、一体なんの用━━━




ライオの方へと振り返ろうとした時、私は大きな衝撃と共にライオに壁に抑えつけられていた。





あまりにも急で、あまりにも力強くて、あまりにも体格差があり過ぎて、





私が抵抗する余地も、考える余地もなかった。




抵抗しようにも、両腕を上げるように拘束されてしまった。





魔法を使うにしても、光魔法のライオの方が速いだろう。




あまりにもこの貧弱な体では、警備隊隊長として日々身体を鍛えている男に魔法無しで勝ることは出来ない。




あなた
っ!?……っなにを……っ……?!




顔と顔があまりにも近く、ギラギラと光っている彼の目がとても恐ろしく感じた。




私が言葉を放つ度に、ライオの拘束する手が強くなる。





あなた
っ……!……ライオっ……様っ…………!!





ライオ・グランツ
…………ライオ様……か。
ライオ・グランツ
随分と偽る事が身体に染み付いているようだな。




あなた
な……にを、っ……!





ライオ・グランツ
お前は、2年間ずっとそうやってあなたの偽名 下の名前として生きていたのか?
ライオ・グランツ
また、オレ達に偽って来たんだな。






あなた
……は………………





ライオのその宝石の様に美しかった目は、今はどうも今の私あなたの偽名 下の名前の目と似ていた。





とても濁っている。




ここが暗がりだからか?




いや、違う。




ライオの目は、ライオはどんな所でも輝いていた。




ライオ・グランツ
ここから居なくなったと思ったら、態々全てを偽り再度ここに来た。
ライオ・グランツ
それは何故だ。





段々と口調が強くなり、それに比例するようにアパタイトの様な目は汚濁して行った。




ライオ・グランツ
あなたの下の名前。






その名前を聞いた時、改めてここの状況が理解できた様に感じた。





ああ、私は、バレたんだ。




ライオに捕まってから、薄々気づいていたというのに、ライオの問いかけに答える声が出なかった。




不意にも、私はバレたことの恐怖よりも、ライオの目が濁ったことに恐怖を感じていた。





この状況では、完全に、





あなた
(わたしが、ライオの目を汚してしまったんだ。)




ライオ・グランツ
……あなたの下の名前…!




少し口調の強いその名前の呼ばれ方が、どうも苦しかった。





ライオに剣幕立てられているからでは無い。




ただ。





ライオにこのように尋問させてしまった事に申し訳なさしかなった。





魔法界でもトップクラスのお人好しが、あまりに裏の仕事が好きではない彼が。




私を問い詰める為だけにこんな剣幕立てなければいけなかったんだ。




あなた
………………すみません。





ライオ・グランツ
……!…………





あなた
すみません。ライオ。




ライオ・グランツ
!!……あなたの下の名前……、





あなた
…………やっばりだめなんです。私は。
あなた
光のような……、いや、光そのものである貴方から、光を奪ってしまった。
あなた
……私が…………光を求め過ぎて、貴方の光まで奪ってしまった。





あなた
もうだめです。私。





あなた
これ以上貴方を、ライオ・グランツを、苦しめたくないです。






徐々にあなたの偽名 下の名前の髪は、黒曜石の様な黒から、月の光を受けた様な銀へと戻って行った。






昔懐かしいその銀の髪が、戻ってきた。





ライオ・グランツ
…………もう、…良いのか。
ライオ・グランツ
あなたの偽名 下の名前・イーヴァルは捨てるのか。





あなた
…………さぁ……。
あなた
……その様子では、ライオは他の方に教えていないんでしょう。
あなた
あなたは優しいから、他の皆に教える前に、自分が先に確かめておこうとした。





ライオ・グランツ
…………ああ、オレ以外にお前の正体は露見して無い。
ライオ・グランツ
……だが、その事を隠していたのは、オレの為でもあった。
ライオ・グランツ
……オレは……





なにか言葉を続けようとしていたと言うのに、ライオはその先の言葉を話すことはなかった。




ライオ・グランツ
……嫌、何でも無い。
ライオ・グランツ
先にお前の目的を知っておこうと思っていたんだ。
ライオ・グランツ
何が目的でお前は態々死んだことにして、態々あなたの偽名 下の名前として生きていたのか。





ライオ・グランツ
その質問に、今答えてくれないか。





先程とは違うその柔らかさのある言葉に、私はただ頷き、息を吸った。




あなた
……私は、貴方々の光が昔から好きでした。
あなた
神覚者の皆さんといると幸せで、いつも体の中が暖かくて。
あなた
………………でも、私が生き返った時、もう既にあなたの下の名前・あなたの名字は罪を重ねすぎました。
あなた
その重圧と罪の意識から逃れてはいけない。……せめて、皆さんと居る幸せを無くすことで、自身の罪を償おうとしました。






1度白銀に戻した髪をまた闇に染め、‪”‬あなたの偽名 下の名前‪”‬はいつもと変わりの無い声色で話し直す。





あなた
………ですが、私はこの光をまた望んでしまった。
あなた
……私は、あなたの偽名 下の名前・イーヴァルとして、またやり直そうとしたのです。






あなた
………傲慢ですよね。
あなた
全ての責任や罪を放り投げ、私はまた1度感じた光を求めてここまで来たのですから。





ライオ・グランツ
………では、お前はもうあなたの下の名前・バイガン、あなたの下の名前・あなたの名字は捨てた、全くの別人なんだな?





あなた
………えぇ。もう区切りが着いている今、全てを捨てた方が皆さんの為になるでしょう。





ライオ・グランツ
………、……
ライオ・グランツ
今でもお前あなたの下の名前・バイガン)の帰りを待っている者がいるとしても、か?





あなた
!………




その言葉を聞いた時、私は1人の人物の顔が浮かび上がった。




白銀の髪をたなびかせ、緋色の目を瞼で隠している者。




そして、私が愛していた人。




あなた
………、……





ライオ・グランツ
最低でも1人の顔は思いつただろ?
ライオ・グランツ
その1人の為に、オレは正体を明かすべきだと思う。
ライオ・グランツ
勿論、オレもお前の帰りを待っている。
ライオ・グランツ
………だが、オレはお前の選択を否定しないさ。





ライオ・グランツ
判断を間違えるとよくお前は言うが……
ライオ・グランツ
ここで、お前は最後の判断をしろ。






ライオ・グランツ
あなたの下の名前・バイガンとして戻って来るか。
ライオ・グランツ
あなたの偽名 下の名前・イーヴァルとしてここにいるか。




あなた
!……………






そんなの、決められるわけが無い。



私は、もうあなたの下の名前として罪をまた背負うことも出来ない。



でも、皆との、あの時の神覚者の皆と仕事をした日々を無くしたくも無い、今更名残惜しく感じてきてしまった。




ああ、私は、














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私は、どうすればいいんだ。
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