レインがライオの事務室を離れると、ライオは再度あなたの偽名 下の名前の履歴書類に目を通す。
貴族家系だと言うのに、イーヴァル家は情報が少なすぎる。
あなたの偽名 下の名前は違くとも、イーヴァル家は精神関与の固有魔法の家系。
もし家系の情報が漏れようとも、その相手の記憶や精神を無くす事が可能だ。
本来なら重要警戒しないといけない家系だが、それもどうもできない。
その理由は
イーヴァル家が魔法局に多大なる寄付金を施している為。
イーヴァル家の寄付金が無ければ、この魔法局は多大なる損害が発生する為、無理にイーヴァル家を調査することが出来ない。
本来ならありがたい寄付金を、逆にこちら側が上手く使われているのだ。
資料を乱雑に置き、ライオは善は急げと言うばかりにいそいそと執務室を離れる。
目的の場所へと一直線へ向かい、その目的地の重い扉を開ける。
少し埃にまみれた暗い部屋の照明を付け、部屋の中央にある机に視線を向ける。
物が”2年前”とほぼ変わらずに放置されているが、物が乱雑に置かれているその上にひとつの分厚い本を手に取る。
埃っぽい部屋の中央にあるその机に物が積まれている中の頂上に置かれていたというのに、本の表紙は妙に綺麗だった。
その疑問を1度頭の隅に置き、本を1ページ事にめくる。
その1ページ目には、こう記されている。
「20XX年。5月15日。
現在の年れいは3さい。
まだ字を覚えたばかりなので、すこしずつ日記をかいていこうと思う。
この恨みを忘れないために。
今日はいつもの教育をされた。
なんでわたしがこんな苦しいめにあわないといけないの?」
その”日記”は、もう随分と古びていて、その1ページ目はとても幼い子供が書いた様な字だった。
少し顔を顰めながらも、また、1ページ1ページをかする紙の音が室内に響く。
「20XX年。12月24日。
明日はクリスマスというものらしい。
クリスマスは大切な人にプレゼントをあげる日だと聞いた。
ちょうど明日任務でニックとも会えるから、どうにかしてニックになにかプレゼントをあげたい。
明日が少し楽しみだ。」
「20XX年??2??5日?
なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで
わたしのせい?」
あなたの下の名前の捜索をする時に何度も見た事があるこの日記。
この日記を記し、ぐしゃぐしゃと乱雑に紙を扱った時、あなたの下の名前はどう感じていたのだろう。
嗚呼、やはりこの日記の部分は何度見ても心が締め付けられるんだ。
少しまたページをめくると、そこにはどうも綺麗な筆跡があった。

ページをめくっても、シワだらけでは無いところまで空白が続いた。
そして、”最後の日記”が記されている。
「今は何月だったか、覚えてすら居ない。
今、私の年齢は17。高等部3年だ。
私は1度神覚者を裏切り、再度ここに居る。
なぜ裏切ったのか、自分でも分からないんだ。
この日記が記せて、何方かが閲覧出来ていると言うことは、イノセント・ゼロは、私の父は負けたのだろう。
とても喜ばしいことだ。
……しかし、世界は時に非情であり、時に温情だ。
彼が死で罪を償うと言う結果に至る可能性は限り無く低いだろう。
この世界の規律は、あまりにも温情で、あまりにも一部の者に非情すぎる様だった。
そんな中、私はこの場で自死するだろう。
今の私がそれを望んでいるのだから、きっとそうだ。
この文を読んでいる者は数少ないのかも知れない。
しかし、私はそれで良い。
これは、ただのワルモノの息子として産まれた者の独り言なのだから。
ありがとう。心から感謝しますよ。読んでくれて。」
まるで遺書の様に記されているそれは、もうあの時であなたの下の名前は自死をする覚悟があったと言う意思表示でもある。
1ページ目とは格段に美しくなったその筆跡は、最期まで綺麗であった。
そこから先は、もう全て空白。
それがわかっているというのに、全てのページを隈なくめくってしまう。
もしかしたら、今もあなたの下の名前が生きていて、
また、この日記を書くためにここに来てくれたりしないか。
そんな弱すぎる可能性を感じて、感じたくて、
ページをめくっ━━━━━━━
「人生とは、意外と何度もやり直せる。
何が起こるか分からないものだ。」
……ああ!本当に生きていたのか!
そんな、高揚感とも言える激情が俺の中で渦巻いた……!!
あぁ!…
あぁ……!!!
俺の顔は、どれ程まで崩れていたのだろうか……!













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!