ある朝。
この家のお母さん、
優吾は、目覚ましよりも早く目を覚ました。
……というより、眠りが浅すぎて、ほとんど寝ていない。
ズキン、とこめかみを殴られたみたいな痛み。
身体は重く、布団から起き上がるだけで目の前がぐらりと揺れる。
2週間近く続いている微熱と倦怠感。
今日はそれに加えて明らかな高熱。
だけど今日は、生放送に収録、打ち合わせ……休めない一日。
キッチンに立とうとして、壁に手をつく。
低くて優しい声。
この家のお父さん、
慎太郎が心配そうに覗き込む。
笑うけど、声がかすれている。
そこへ。
長男大我。
北斗がじっと観察する。
樹が一歩近づく。
ジェシーはまだ眠そうに目をこすっている。
そう言って、優吾は無理やり薬を流し込んだ。
慎太郎は何か言いたげだったけど、
仕事の日の優吾は止められないと分かっているから、何も言えなかった。
楽屋
大我、北斗、樹は先に楽屋に入り。
大我がそわそわ。
北斗は冷静だけど、どこか落ち着かない。
そこへ。
ふらっ、と肩にもたれるように優吾が入ってきた。
一瞬、全員固まる。
北斗が即座に言う。
笑うけど、額にうっすら汗。
樹は何も言わず、そっと近づいて、優吾の手に触れた。
樹side
……熱い
でも、あえて言わない。
樹が空気を変える。
優吾は一瞬だけ樹を見た。
気づいてるな、って顔。
でも、何も言わないでくれた。
その後慎太郎とジェシーとも合流。
生配信(車内)
揺れる車内。
画面の向こうにはファン。
優吾の顔色はどんどん悪くなる。
頭痛、吐き気、そして車酔い。
一瞬、視界が暗くなる。
その時。
そっと、身体を支える感覚。
樹の肩。
軽い声で言いながら、しっかり背中を支える。
優吾は樹にもたれかかる。
一瞬はファンに向かって明るく話を繋ぐ。
樹side
嘘だよ、ごめん。でも心配させたくない
トークを回し、笑わせて、
さりげなく優吾の負担を減らしていく。
配信終了。
カメラが止まった瞬間。
声色がいっきに変わる。
優吾は目を逸らす。
昼休憩
慎太郎も来て、額に触れる。
でも歩き出した瞬間、よろける。
樹が即座に腕を掴む。
次の集録が始まる。
最初はもちこたえていた。
けど途中から、明らかに様子がおかしい。
視界が揺れる。
音が遠い。
樹の声。
その瞬間。
力が抜けた。
倒れ込む身体を、樹が受け止める。
帰宅語
優吾は自室のベッド。
他のみんなはリビングで心配そうに待っている。
樹が言った。
部屋。
薄暗い中、優吾はうなされている。
樹は冷たいタオルを額に乗せ、手を握る。
かすかに目が開く。
優吾は首を振る。
樹は優しく、でも真っ直ぐに言う。
小学生とは思えない落ち着いた声。
ぎゅっと手を握る。
優吾の目から、涙が一筋。
樹はそっと額に手を当てる。
部屋の外では、大我と北斗とジェシーと慎太郎が静かに待っている。
この家は、強い。
だって。
ママをみんなで守る家族だから。
end


















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。