烙陽の路地裏は 、
子供にとっては残酷な遊び場だ
よそ者だった私は地元のガキ大将たちに囲まれ 、
冷たい泥水の中に這いつくばっていた 。
飛んできた石が頬をかすめ 、 じわりと血が滲む 。
傘も持たず 、 毒を含んだ雨に打たれながら 、 私はただじっと耐えていた 。
けれど 、
次に振り下ろされるはずだった拳は私の顔に届くことはなかった 。
鈴を転がすような 、 けれど底冷えのする声 。
顔を上げると 、 そこには朱色の傘を差した少年が立っていた 。
透き通るような肌に 、 三つ編みに結った髪。私と同じ年くらいなのに
その瞳には大人さえ黙らせるような 、
凄まじい「圧」があった 。
神威くんがふわりと微笑んだ瞬間 、 空気が凍りついた 。
いじめっ子たちは悲鳴を上げて逃げ出し 、
路地裏には私と 、 その少年だけが残された 。
少年の背後から 、 小さな女の子がひょこりと顔を出す 。
神楽だ 。
彼女は自分の着物の袖で 、 私の泥だらけの顔をごしごしと拭った 。
神威は私を見下ろし 、 呆れたようにため息をついた 。
そして 、 自分の差していた傘を無造作に私に押し付ける 。
神威が差し出した真っ白な手 。
それを握った瞬間 、 私の止まっていた時間は動き出した 。
雨の降るこの星で 、 私は一人じゃなくなった 。
神楽の無邪気な笑い声と神威の少し意地悪な優しさ
それが私の世界のすべてになった 、 あの日 ____












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。