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第1話

砂の惑星
4
2026/06/25 04:28 更新
遂に、この都市は崩壊を迎えた。
キレイな音色で満たされていたこの都市も
今や廃墟と砂の惑星になってしまった。
荷物なんていらない、この都市の歴史をなぞるように、
私達は都市の亡骸の上を、歩き始めた。

この都市は、かつて音楽がもたらす不思議な力、
「マナ」によって栄えていた。
マナは人の目には見えない、科学でも証明されてない。
ただし、マナの力によってこの都市が栄えていたことは、誰の目から見ても明らかだった。
しかし、時の流れは残酷で、人からの興味や関心、
そんなものは時代と共に忘れ去られていく、
風が砂を攫うより簡単に。
この都市に残った最後の住民、私含め10数名、
都市復興のために、最後まで戦ってくれた仲間達。
私達は最初に、思い出のあの場所に別れを告げに来た。
音楽堂、この都市のかつて中心部だった場所。
常にこの場所は不思議な力で満たされていて
マナの始まりの場所だったとも言い伝えられてる。
……私が、友人と出会った場所もここだった。
 
まだ、私が幼かった頃の話。
この場所は、音楽堂の中も外も、常に人で溢れてた。
音楽が溢れる、素敵な場所。
私は、音楽堂の近くの広場でやってる、小さなライブの音を、
少し離れた場所から聞いていた。
私も、ここでライブがしてみたかった。
でも、私は全然、歌が得意じゃなかった。
楽器も、作詞や作曲だってできない。
音楽が大好きだから、それがずっと辛くて
遠くで眺めることしかできなかった。
「ねぇ、そんな遠くでなにやってるの?」
後ろの木の上から、声が聞こえる。
「え……?」
振り返ると、木から林檎をもぎ取って食べてる、
中性的な見た目の子供が木の上に座っていた。
「あ、食べる?」
「……いらない。」
「ふーん、あっそ。」
そう言うと、林檎の芯まで丸ごと食べてしまうから、
思わず目を見開く。
だけど、驚く私を無視して、その子は続ける
「音楽、好きなの?」
「……まぁ、一応」
「なんか歯切れ悪いなぁ〜」
「もっと近くで参加しないの?」
「……邪魔になるから」
「そんなの関係ないって」
そう言うと、その子が木から飛び降りてくる。
「ちょうどひましてたし、付き合ってあげる。」
「え…?それってどういう…」
言い切る前に、その子は私の腕を引っ張る。
「ちょ、ちょっとまってよ…!」
気付いたら、たくさんのお客さんの波に、
その子と一緒に揉まれていた。
……どうしよう、早く抜け出さないと
「ねぇ、なにやってんのさ
人の波に逆らったら危ないよ?ちゃんとリズムに乗って?」
「いや、でも、私リズム感とかないし…!!」
「そんなんいちいち誰も気にしてないって!
ほら、これに合わせて」
そう言うと、身体を支えてエスコートしてくれる
段々とリズムと人の波に慣れてくる。
「そうそう、その調子。」
すごい、少しだけ、楽しいかも。
「じゃあ次は、1人でやってみよっか!!」
そう聞こえたと思ったら、突然手を離されて、
バランスを崩しそうになる。
今まで支えられてたからか、ステップがおぼつかなくて、何度も人にぶつかってしまう。
その度に申し訳なくなって、下を見ることしかできない。
「ほら、ちゃんと前を見る!」
意識にそのまま入ってくるような声、
反射で言われた通り、前を向く。
……あれ、みんな、思ってたより、私のこと気にしてない
みんな、本気で音楽を楽しんでるから、
私を気にする余裕なんてないんだ。
……だったら、私も、気にしなくていいのかな。
そう思ったら、自然と身体と、心が動いてくる。
気付いたら、時間も何も気にせずに、このイベントを全力で楽しんでいた。
こんなことは、生まれてはじめてだった。

気付けば、イベントは終わっていて、
辺りも夕暮れ時になっていた。
「いやぁ〜楽しかったね!」
「……こんなの、はじめてだった。」
「キミ、最初より、ずっといい顔してるよ。」
……すごい、音楽って、こんなに楽しいんだ。
「ねぇ、私と、友達にならない?
キミのこと、もっとたくさん楽しませてあげる!」
友達、友達って、友達?
生まれてはじめて言われた言葉。
「私なんかで、いいの?」
「キミなんかじゃない、キミがいいの!」
胸の奥で、何かが込み上げてくる。
「ねぇ、キミの名前は?」
「……ミク、あなたは?」
「僕の名前は——」

それからは色々あった。
実は、はじめてできた友人は、
今話題の作曲家だったこと。
そして、2人でアーティストデビューしようって誘われて、歌の猛特訓がはじまって。
あはは、これは大変だったな。
音楽のことになるとすっごく真剣で、
スパルタ教育がはじまるのだ。
でも、私も一緒に楽しいこと、たくさんしたくて
必死に食らいついて、オリジナルの曲ができて
小さいライブも呼ばれるようになって。
今思えば、1番この時が楽しかった。

私達が出会った、音楽堂の前。
「……ねぇ、ここを出ていくって、どういうこと?」
友達から、新天地で、
もっと違った音楽をやろうって、そう誘われた。
私は、この都市の、ここの音楽が大好きだ。
今更出ていこうなんて言われても、そんなの飲めるはずなかった。
「ミク、聞いて、急速な人口減少で、
どんどん都市からマナの量が減ってきてる。
この都市には通貨がない、それはマナで物質が補えるから、でもそれが減少しつつある今、
別の土地で頑張っていかないとダメだよ。」
「そんなの!私達が頑張ればいいじゃん!
私達が居なくなれば、それこそマナが生まれなくなる、そしたら今度は本当に、この街が、この街の音楽がなくなっちゃう!」
「現実見てよ!もうないようなものだよ、この街も、音楽も。」
「それは私達若者が受け継ごうとしないからでしょ?
あなたがそんなことを言う人だなんて思わなかった!」
「ミク、ちょっと待って!」
「……行くなら、行けばいいじゃん。私は残る。」
「ねぇ、ミク!ミクちゃん!」
こうして、私は夕暮れの光の中に姿を消した。
それが、私達が交わした最後の会話だった。 

……ここを見ると思い出す。
マナが尽きて、建物が維持できなくなって
音楽堂の原型なんて、もうないけど
それでも、私には、面影が見える。
私には見える、あなたとの、
唯一の友人との、たくさんの思い出が
はは、なんでこんなことになっちゃったんだろ。
ただ、私はあなたとまた音楽がやりたくて、
戻ってきて欲しくて、かつてみたいな活気が戻ってきたら、またひょっこり帰ってきてくれるかなって、そう思ってたのに、結局、私には無理だったよ。
私はあなたがいないと何も……。
いや、この先はやめよう。
都市復興計画から今まで、気付けばこの計画のリーダー的な立ち位置まで上り詰めていた。
いつの間にか、強くないといけなくなって
いつの間にか、弱音を吐けなくなった。
でも、それでも、ついてきてくれる仲間のためにも、
弱音はまだ吐いたらダメだ。
「さて、積もる想いもあるでしょうが、
食料も飲み物も限られてる、先を急ぐよ。」
そう促すと、先程まで涙を堪えてた者、
座って休憩してた者が立ち上がってくる、
さぁ、進もう。まだ先は長い。
砂漠を彷徨い続けて数時間以上、
私達、復興チームがマナを局所的に貯め続けた最終地点、電子放送局。
この地点にマナを集めていた理由は単純明快、
全区間に一斉に音楽を響かせ、
マナをたくさんの土地に発生させることを試みた。
だから、廃墟にはなっているものの、
たくさんの大きな人工物が形を持って、
タワーとして残っている。
ごく限りない力だが、まだここにもマナは残っているかもしれない、私達にとって、本当の意味で、最後の砦。
拠点から持ってきた、1つの林檎の木の苗を取り出す。
ここならまだ、実るかもしれない。
今や、水は枯れ、草木も生えなくなったこの土地に
奇跡が、いつか訪れるかもしれない。
いや、きっと訪れる。
その時、なにかの希望になれると願って。
そして、辿り着いた国境付近
かつて一緒に戦った仲間は、別々の道へ歩き出す。
私も、自分の道を歩き出す。
またいつか、元通りになるその日まで。遂に、この都市は崩壊を迎えた。
キレイな音色で満たされていたこの都市も
今や廃墟と砂の惑星になってしまった。
荷物なんていらない、この都市の歴史をなぞるように、
私達は都市の亡骸の上を、歩き始めた。

この都市は、かつて音楽がもたらす不思議な力、
「マナ」によって栄えていた。
マナは人の目には見えない、科学でも証明されてない。
ただし、マナの力によってこの都市が栄えていたことは、誰の目から見ても明らかだった。
しかし、時の流れは残酷で、人からの興味や関心、
そんなものは時代と共に忘れ去られていく、
風が砂を攫うより簡単に。
この都市に残った最後の住民、私含め10数名、
都市復興のために、最後まで戦ってくれた仲間達。
私達は最初に、思い出のあの場所に別れを告げに来た。
音楽堂、この都市のかつて中心部だった場所。
常にこの場所は不思議な力で満たされていて
マナの始まりの場所だったとも言い伝えられてる。
……私が、友人と出会った場所もここだった。
 
まだ、私が幼かった頃の話。
この場所は、音楽堂の中も外も、常に人で溢れてた。
音楽が溢れる、素敵な場所。
私は、音楽堂の近くの広場でやってる、小さなライブの音を、
少し離れた場所から聞いていた。
私も、ここでライブがしてみたかった。
でも、私は全然、歌が得意じゃなかった。
楽器も、作詞や作曲だってできない。
音楽が大好きだから、それがずっと辛くて
遠くで眺めることしかできなかった。
「ねぇ、そんな遠くでなにやってるの?」
後ろの木の上から、声が聞こえる。
「え……?」
振り返ると、木から林檎をもぎ取って食べてる、
中性的な見た目の子供が木の上に座っていた。
「あ、食べる?」
「……いらない。」
「ふーん、あっそ。」
そう言うと、林檎の芯まで丸ごと食べてしまうから、
思わず目を見開く。
だけど、驚く私を無視して、その子は続ける
「音楽、好きなの?」
「……まぁ、一応」
「なんか歯切れ悪いなぁ〜」
「もっと近くで参加しないの?」
「……邪魔になるから」
「そんなの関係ないって」
そう言うと、その子が木から飛び降りてくる。
「ちょうどひましてたし、付き合ってあげる。」
「え…?それってどういう…」
言い切る前に、その子は私の腕を引っ張る。
「ちょ、ちょっとまってよ…!」
気付いたら、たくさんのお客さんの波に、
その子と一緒に揉まれていた。
……どうしよう、早く抜け出さないと
「ねぇ、なにやってんのさ
人の波に逆らったら危ないよ?ちゃんとリズムに乗って?」
「いや、でも、私リズム感とかないし…!!」
「そんなんいちいち誰も気にしてないって!
ほら、これに合わせて」
そう言うと、身体を支えてエスコートしてくれる
段々とリズムと人の波に慣れてくる。
「そうそう、その調子。」
すごい、少しだけ、楽しいかも。
「じゃあ次は、1人でやってみよっか!!」
そう聞こえたと思ったら、突然手を離されて、
バランスを崩しそうになる。
今まで支えられてたからか、ステップがおぼつかなくて、何度も人にぶつかってしまう。
その度に申し訳なくなって、下を見ることしかできない。
「ほら、ちゃんと前を見る!」
意識にそのまま入ってくるような声、
反射で言われた通り、前を向く。
……あれ、みんな、思ってたより、私のこと気にしてない
みんな、本気で音楽を楽しんでるから、
私を気にする余裕なんてないんだ。
……だったら、私も、気にしなくていいのかな。
そう思ったら、自然と身体と、心が動いてくる。
気付いたら、時間も何も気にせずに、このイベントを全力で楽しんでいた。
こんなことは、生まれてはじめてだった。

気付けば、イベントは終わっていて、
辺りも夕暮れ時になっていた。
「いやぁ〜楽しかったね!」
「……こんなの、はじめてだった。」
「キミ、最初より、ずっといい顔してるよ。」
……すごい、音楽って、こんなに楽しいんだ。
「ねぇ、私と、友達にならない?
キミのこと、もっとたくさん楽しませてあげる!」
友達、友達って、友達?
生まれてはじめて言われた言葉。
「私なんかで、いいの?」
「キミなんかじゃない、キミがいいの!」
胸の奥で、何かが込み上げてくる。
「ねぇ、キミの名前は?」
「……ミク、あなたは?」
「僕の名前は——」

それからは色々あった。
実は、はじめてできた友人は、
今話題の作曲家だったこと。
そして、2人でアーティストデビューしようって誘われて、歌の猛特訓がはじまって。
あはは、これは大変だったな。
音楽のことになるとすっごく真剣で、
スパルタ教育がはじまるのだ。
でも、私も一緒に楽しいこと、たくさんしたくて
必死に食らいついて、オリジナルの曲ができて
小さいライブも呼ばれるようになって。
今思えば、1番この時が楽しかった。

私達が出会った、音楽堂の前。
「……ねぇ、ここを出ていくって、どういうこと?」
友達から、新天地で、
もっと違った音楽をやろうって、そう誘われた。
私は、この都市の、ここの音楽が大好きだ。
今更出ていこうなんて言われても、そんなの飲めるはずなかった。
「ミク、聞いて、急速な人口減少で、
どんどん都市からマナの量が減ってきてる。
この都市には通貨がない、それはマナで物質が補えるから、でもそれが減少しつつある今、
別の土地で頑張っていかないとダメだよ。」
「そんなの!私達が頑張ればいいじゃん!
私達が居なくなれば、それこそマナが生まれなくなる、そしたら今度は本当に、この街が、この街の音楽がなくなっちゃう!」
「現実見てよ!もうないようなものだよ、この街も、音楽も。」
「それは私達若者が受け継ごうとしないからでしょ?
あなたがそんなことを言う人だなんて思わなかった!」
「ミク、ちょっと待って!」
「……行くなら、行けばいいじゃん。私は残る。」
「ねぇ、ミク!ミクちゃん!」
こうして、私は夕暮れの光の中に姿を消した。
それが、私達が交わした最後の会話だった。 

……ここを見ると思い出す。
マナが尽きて、建物が維持できなくなって
音楽堂の原型なんて、もうないけど
それでも、私には、面影が見える。
私には見える、あなたとの、
唯一の友人との、たくさんの思い出が
はは、なんでこんなことになっちゃったんだろ。
ただ、私はあなたとまた音楽がやりたくて、
戻ってきて欲しくて、かつてみたいな活気が戻ってきたら、またひょっこり帰ってきてくれるかなって、そう思ってたのに、結局、私には無理だったよ。
私はあなたがいないと何も……。
いや、この先はやめよう。
都市復興計画から今まで、気付けばこの計画のリーダー的な立ち位置まで上り詰めていた。
いつの間にか、強くないといけなくなって
いつの間にか、弱音を吐けなくなった。
でも、それでも、ついてきてくれる仲間のためにも、
弱音はまだ吐いたらダメだ。
「さて、積もる想いもあるでしょうが、
食料も飲み物も限られてる、先を急ぐよ。」
そう促すと、先程まで涙を堪えてた者、
座って休憩してた者が立ち上がってくる、
さぁ、進もう。まだ先は長い。
砂漠を彷徨い続けて数時間以上、
私達、復興チームがマナを局所的に貯め続けた最終地点、電子放送局。
この地点にマナを集めていた理由は単純明快、
全区間に一斉に音楽を響かせ、
マナをたくさんの土地に発生させることを試みた。
だから、廃墟にはなっているものの、
たくさんの大きな人工物が形を持って、
タワーとして残っている。
ごく限りない力だが、まだここにもマナは残っているかもしれない、私達にとって、本当の意味で、最後の砦。
拠点から持ってきた、1つの林檎の木の苗を取り出す。
ここならまだ、実るかもしれない。
今や、水は枯れ、草木も生えなくなったこの土地に
奇跡が、いつか訪れるかもしれない。
いや、きっと訪れる。
その時、なにかの希望になれると願って。
そして、辿り着いた国境付近
かつて一緒に戦った仲間は、別々の道へ歩き出す。
私も、自分の道を歩き出す。
またいつか、元通りになるその日まで。

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