声が漏れてしまったのだろうか。
ドアの外から声が聞こえる。
返事をしなきゃ。
でも今しゃべれば、声で泣いていることに気づかれてしまう。
……どうしよう。
そのとき、ガチャと音がしてドアが開いた。
僕はとっさにドアに背を向ける。
鍵は閉めたはずなのに…。
「ごめん、心配で10円玉で開けちまった。…って、三郎?」
後ろに二郎がいる。
どうしよう、泣くのをやめないと、気づかれないようにしなきゃいけないのに。
僕は体育座りをして顔を膝の間にうずめる。
二郎は僕の隣に座ると、
「三郎の部屋って、なんか広くね?」
と言った。
は?と言いたくなるほど話のつながりがない。
「俺の部屋もっと狭い気がしたんだけどな。兄ちゃん三郎へのひいきかぁ〜」
お前の部屋が散らかっているからだろと言ってやりたい。
言ってやりたいが、しゃべれない。
「三郎?なぁ、どうした?体調悪いのか」
「………ち、が」
質問を投げかけてばかりの二郎に意を決して僕は口を開いた。
思ったより声が出なくて、いつもよりかすれて上ずった声になってしまった。
「………三郎、ちょっとこっち向けるか」
向けるわけがない。
顔を見られたら泣いていたとすぐにバレてしまう。
そのままでいると二郎の手が頭に当たった。
何をされるのかと思っていると、頭を撫でられる。
予想をしていなかった。
こんなことをされるなんて思っていなかった。
されるとしても、無理やり顔を膝から引き剥がされるといったことだと思っていた。
「……どうした?お前元気ないだろ。
………俺は、頼りないし馬鹿だからさ、もしお前に悩みがあっても、難しすぎて相談に乗れないかもしれない。
だけど…三郎がこのままじゃきっと兄ちゃんも心配するから…帰ってきたら相談しろよ、ちゃんと。
………兄ちゃんなら、聞いてくれるよ」
二郎の口から出た言葉ひとつひとつが、心の中に染み込んでいくような感覚になる。
……こんなに優しくて、いいやつだと思っていなかった。
昔は、
施設にいたから、
一兄がいないことが多かったから、
だから僕に優しくしてくれているんだと思っていた。
でも、違かった。
二郎は何も変わっていない。
昔も今も、環境が変わっても、僕の傍にいてくれていた。
ずっと、そうだったんだ。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!