第15話

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2022/02/11 08:00
………。
ゆきむら。
ゆきむら。
は?
そうま
そうま
ん?
理解が出来ない。脳が追いつかない。
今僕は何を聞いていたんだ?何が耳にはいってきたんだ?
ゆきむら。
ゆきむら。
今なんて言った?
そうま
そうま
だから
そうま
そうま
お前の意見に共感する部分もあるけど、もっと考える必要もあるし、言い過ぎてるってこと。
耳がそうまの言葉を受け付けなかった。

そまはいつも僕の味方をしてくれた。
だから、僕の意見はいつも正しいと思っていたし自信を持って伝えることが出来た。

それなのに…。
ゆきむら。
ゆきむら。
意味わかんない。僕の意見間違ってないだろ。言わないと伝わんねーじゃん。僕だって最初は見てたよ。でも誰ももっとしっかりしようって言わねーじゃん。じゃあ誰が言うんだよ
ゆきむら。
ゆきむら。
僕しかいないだろ。傷つく?考えるのは時間がかかる?知らねーよ。もっと真剣に活動してたら、考えてたら、こんなことにならねーだろ。
そうま
そうま
いや、お前の意見が間違ってるなんて言ってないだろ。もっと柔軟に考えろって、それだけだよ。
ゆきむら。
ゆきむら。
何がだよ。否定してんじゃん。いつもお前は俺の意見いつも肯定してくれてたのに。僕の意見が間違ってるなんて有り得ない。肯定してくれなくなったなんて。なんだ、僕のこと嫌いにでもなったのか?なんだよ。
何か想いがあるのに、言葉にできない。
それなのに思ってもいないようなことが次々と口から出てくる。
そうま
そうま
好き?嫌い?関係ある?いつも肯定してたのは、お前の意見と同じだったからだよ。でも今回はお前の意見に思うことがあったから言った。ただそれだけの話だよな?
そうま
そうま
俺らはぶつかり会えないような関係なのか?みんな仲良しこよしでやっていけばいいのかよ…
ゆきむら。
ゆきむら。
だって、お前…いつも…!!
てると
てると
あ…えと…
てるとが困った顔で2人の顔を見る。
ばぁう
ばぁう
そま、ゆきむ…
しゆん
しゆん
ゆきむごめん。それにそまも…ね。
まひと
まひと
ちゃんと考えとけば良かったよね…。ごめん。
そまむらの乱に1度終止符が打たれた…






とはならなかった。
ゆきむら。
ゆきむら。
は、は、は、なんだよ。俺らが言い合ってるのにまともに参戦もできねーのかよ。何がゴメンだよ…。
ゆきむら。
ゆきむら。
帰る。
立ち上がり、最低限のものしか入っていない小さなリュックを背負う。

何も考えられなかった。ただただ無心に足と口を動かした。
ゆきむら。
ゆきむら。
お疲れ。
─────────バタン
会議室の扉が閉まる
まひと
まひと
ゆ、ゆきむ…!
まひとが立って追いかけようとする
そうま
そうま
まひと
そうまが首を横に振る
まひと
まひと
な、なんで?
そうま
そうま
ただでさえ1人いないのにお前がいなくなったら話進められなくなるだろ。
まひと
まひと
でも…
そうま
そうま
1人にさせてあげよう
──────────────────
ゆきむら。
ゆきむら。
っ…。
僕は間違ってない。正論を言っただけだ。何も間違ってないんだ。

ずっとそう言い聞かせていた。
でも分かっていた。ただの自分のワガママだってことに。

もちろん最初の想いが間違ってるとは思わない。

でも、僕が好きな相手とぶつかり合うのを怖がり、実際に起きてしまいただヒステリックになっただけ。ただそれだけなんだ。
「好きも嫌いも関係ない」
「僕達はぶつかり合える関係」
その通り。そまの言ってることの方が正しいのに…なのに。

思ってもないことを口にしてしまった。人を傷つけてしまった。最低だ。
ゆきむら。
ゆきむら。
僕は何をしているんだろう…。
電車の中、1人考えていた。

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