iw side
いつものようにバーに行くと、舘さんがサプライズでケーキを作ってくれていたらしい。
何故かお客さん全員を巻き込んでの騒ぎになった。
普段とは違ってクラブみたいな盛り上がりに、お客さんも楽しんでいる様子。
ふっかは嬉しそうにありがと〜なんてスター気取りで皆に手を振ってる。
その横に座りながらノリつつ、お酒を楽しむ夜。
今日はふっかは店員側じゃなくてお客さん側の席にいて、時に舘さんのサポート、時に俺と飲む、そんな感じで遊びと仕事の間を行き来してるような面白い状態にあった。
お祭り騒ぎも体に回る酔いでだんだん終焉を迎え始める。
そう言うとカウンターの裏側からラッピングされた箱を取り出す舘さん
康二もそそくさと包みを取り出す。
箱の中には丁寧に包装されたグラスが入っていた。
小さくすぼまった飲み口にくびれるような細長いボウルをもつフルート型。
そう言われてグラスに口付ける様に軽く唇を押し当ててる。
割れないようにそっとカウンターに置く。
中からは高級なおつまみのアソートパック
普段自分で買うには中々勇気が要る代物だ。
その質問に対してよくぞ聞いてくれたとでも言いたげにふっかが胸を張る。
盛り上がっているうちにいよいよ帰る時間になる。
ふっかが帰ってくると、荷物を舘さんから貰った袋に詰めて店を出る。
その言葉に三人ともまたね、と返す。
店を出たら割とすぐ康二とは道が別々になる。
康二とも別れるとあとはふっかを送り届けて終わり……なんだけど。
とりあえずいつもみたいに話題を振って、いつも通りふっかの家に着いて。
聞いてみても良いのかな。
そのためにふっかの誕プレと一緒に布団を買ったんだから。
ふっかが住んでるアパートは2階の1番隅の部屋らしく覚えやすい。
玄関だけでも上げてくれるのがすごいよなあ
彼女とかいたら簡単には呼べないもんなあ……
ふっかって恋人いんのかな。
ふと気になった。
後で聞いてみよ。
しばらくするとふっかが戻ってきて、泊まるために必要な物も一式持ってきた。
鍵を閉めると俺の家へ。
ふっかって彼女いんの?
何故か口が動かない。
なんでだ?
ただ聞けば良いだけなのに聞きたくない。
何故か居るって言われたくない。
どうした?俺
変な間の後に全然関係無いことを聞いてしまう。
疲れててバグったのかな
原因はそれしか思いつかなかった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。