株式会社ⅤOISINGのとある一つの会議室。男性六人の賑やかな声が響いた。
この会社の初代歌い手グループ、『Irregular Dice』通称『いれいす』のとある仕事終わりのことである。
大きく伸びをしながら他の五人に問いかけるのは、赤髪の小柄な青年__りうら。真っ赤でサラサラとした髪を伸ばしていて、少し長めな前髪は黄色のヘアピンによって後ろにまわされている。
現役大学生でDice Number1__つまり、いれいすの最年少を担っている。時々出る可愛さと反して、最年少とは思えないほどの行動をとったりするため、その度メンバーを驚かせているという。しかし、彼に自覚はなく「みんな、どうしたのー?」と配信中容赦なく発言。いわゆる天然というやつだ。
そんなりうらの提案に真っ先に反応したのは白髪の青年。
Dice Number3__初兎。マッシュに似たような髪形をしていて、左右に特徴的なハネがある可愛らしい見た目だ。そのような見た目と相まって、好きなものはゲームでいれいす内で一位二位を争う強さだ。一方、嫌いなものは「世界」と回答。
関西生まれのため、会話中関西弁が多く入ってしまう。基本温厚だが、感情が高ぶると急激に口調が荒くなるためか、メンバー内で「腹黒」と囁かれているが、本人は否定中。
初兎に続いて、頭部の先にぴょこりと生えている双葉が特徴のピンク髪の男性が案に賛同。
名前はないこ__Dice Number4でメンバーの中間地点に立っている。ⅤOISINGの社長であり、いれいすのまとめ役を担うリーダーでもある、責任感の強い男性だ。左に三か所、右に一か所ピアスをつけていて、老若男女問わず好かれそうな親しみ深いような、安心できるような雰囲気を纏っている。好きな食べ物は寿司で、一日で何件かはしごする程だ。
因みに、今までのメンバーもまだ出ていないメンバーも髪色が自身の担当カラーなのだが、ないこがピンク色を選んだ理由は「なんかえっちだから」らしい。
成人男性とはかけ離れた声を出したのは青い髪の男性、If(以降いふ)。
Dice Number5番で年長組に入るはずなのだが、そうは思えないほどの声を発することが出来る。実際の声はもっと男性的色気を纏った声音である。
実は帰国子女で英語がペラペラ。自身のYouTubeチャンネルには、その時流行っていた歌を独自で英訳し、『英語で歌ってみた』として投稿している。また、いれいす内では清楚担当を自称していて、過去には女性向けシチュエーションボイスを投稿していた。現在は黒歴史らしく、もう投稿していない。動画は削除されていなく、再投稿を期待するファンも少なくない。
「まろ」というのは彼のあだ名で、メンバーの半分以上からそう呼ばれている。
いふに激しく反対したのは、先程紹介した、彼を唯一「まろ」呼びしない人物、–hotoke–(以降ほとけ)。
水色と薄紫色のグラデーションに外ハネの髪型、美しいまでに半楕円を描くアホ毛が特徴の愛らしい青年だ。まだ少年ではないか、と思ってしまうほどのあどけなさが残る童顔で声もそこまで低くなく、いわゆるショタボの部類に入る。
実際の名前は「ほとけ」だが、彼本人は「いむくん」と呼んでほしいと言っている。だが実際、ほとけを「いむくん」と呼んでいるのは同い年の初兎だけだ。
会話で理解できると思うが、ほとけといふは公式上仲が悪い、とされている。一時期はほとけといふのペア――青組の『ビジネス不仲』暴露が、他メンバーの個人配信で行われていた。
言いかけたないこの声を遮り長髪の男性が控えめに手を挙げる。
「アニキ」と呼ばれる長髪の男性の名は、悠祐。いれいすの保護者ポジションに立っている、グループ内最年長だ。アーティスト歴も他のメンバーよりも長く、悠祐は彼らにとっての歌い手としての、人生としての先輩なのだ。
公式では筋肉キャラとして登場することが多いが、リアルでもかなりがっちりした体格だ。「ママニキ」と呼ばれる程、しっかり者。
年齢だけでなく、中身もしっかりお母さんだった。
ずっと黙っていたないこがようやく口を開いた。
次々に野次やブーイングが飛ぶが、ないこの表情はそれ以上感情的になることなく、いつも通りの顔で「言ってもいいかぁ……」とため息を零す。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。