ーめめんともり視点ー
…そろそろ、新入生代表の言葉。
私の声で、めめ村メンバー達に私の正体がバレてしまう。
どうしよう、知られたくないよ。
私にとっての『幸せ』を、失いたくない。
私の『幸せ』は、
めめ村メンバー達と煽りあったりしながら、
沢山ゲームをして、笑い合うこと。
そんな幸せが、今、崩れようとしている。
この、私の返事で。私の「はい」だけで。
バレてしまう。幸せが崩れてしまう。
もう2度、めめ村メンバーで笑い合えないかもしれない。
唯一の居場所が、無くなってしまうかもしれない。
…でも、言わなくちゃいけない。
この苗字で生まれてきてから、
様々な場面で覚悟を決めてきた。
私は、息を大きく吸い込んだ。
私は明るく、完璧な笑顔で答える。
ガクガクと震えそうになる足を無理やり立たせ、
小さい階段をのぼり、ステージの上に立つ。
一礼をしてから、私は話し始めた。
一歩下がって一礼してから、席に戻る。
『めめ村メンバー達にバレた』
その事が永遠に頭の中で回り続ける。
代表の言葉の最中のことは、全く覚えていない。
ズキズキと痛む胸を抑える。
辛い、痛い、くるしい。
私は、爪が食い込むほど強く手を握りしめた。
ーiemon視点ー
……は?
声に出そうになり、何とか慌てて口を噤む。
『篠森 愛芽』
めめさんは、あの篠森家の令嬢だった……!?
だから「後でのお楽しみ」なのか。
理解したと共に、笑いが込み上げてきた。
いやいやいやいや、耐えろ俺。
笑っちゃいけない場面ランキング
第2位の場面だぞこれ(??????)
ほぼ同じタイミングでブフアッと吹き出す人がなぜか沢山居た。
なんとか笑いは堪えたけど、
やっぱりこの状況はおかしすぎる。
いつも放送禁止用語を言いまくるようなめめさんが
あんなにしっかりとしている姿が面白いし、
それも篠森家の令嬢なんて。
でも目の前を見たら、ちゃんと『篠森愛芽』として堂々と代表の言葉を言う、めめさんが居る。
めめ村メンバーでのめめさんと、
篠森愛芽としてのめめさん。
そして問題なのが、めめさんの発表中に吹き出した人が、俺以外でも何人もいるということ。
ーめめんともり視点ー
教室に戻り、担任の先生が来るまでを待つ間。
隣の席のいえもんさんは、
机に突っ伏して笑いをこらえていた。
そしてラテさん、ウパさんも。
え、何なんですかこの人達()
というか、気まずい目で見てこないことに、
正直結構動揺している。
とりあえず隣の席で過呼吸気味になりながら笑いを堪えているいえもんさんに話しかける。
改めてそう言われると、また胸がズキッと痛くなる。
……どう思われた?
いえもんさん、まじでずっと笑ってる…
というかウパラテは!?
というかこの2人席隣なんだよね。
2人の席の間まで来て、2人の顔をのぞき込む。
とりあえず、3人とはいつものように気兼ねなく話せた……
驚きと安堵で、危うく涙が溢れ出る所だった。
涙が出そうになるなんていつぶりだろう、
そんな私にも少し驚いた。
この高校にめめ村メンバーが他に居ることは、
いえウパラテは知らないはず……
みんな、吹き出して…?
緊張してて全然覚えてなかったから分からなかったけど、めめ村メンバー全員、吹き出したんだ……
なんか、不思議。
いえもんさんにもウパさんにもラテさんにも。
媚びを売られない。
気まずそうな顔をしない。
嫉妬の目を向けられない。
騙してたの?って言われない。
…なんで?
胸に湧き上がってきたのは、純粋な疑問だった。
…でも、絶望よりかは、全然良い。
私は1人安堵の表情でため息をつく。
そんな会話を出来ることの奇跡を噛み締めていると…
ガラッ🚪
あっ、先生だ!
ーなんか始まったー
いつどこでどんな時でも!!
完璧な笑顔で対応!!めめんともり!!!
カオスが起きたら即現実逃避!
それはめめ村の中で培われてきた能力!iemon!!
とにかく爆笑!!
彼の辞書に遠慮という言葉はない!!
ウパパロン!!!
とりあえず困惑!キャパオーバーになる!!!
1番正常な反応!!Latte!!
ーなんか終わったー
とりあえずウパさんが正常に呼吸できるまで待つことになり、結局5分弱はかかった。
ってことは、ここの中でめめ村メンバーは私、いえもんさん、ウパさん、ラテさんの順になるのか。
『篠森』という単語に一斉に視線が集まる。
最後にぺこりと礼をして、微笑む。
そう。私は高校1年生だが、生徒会長を務める。
この学校は、篠森家の人間が居れば学年関係なく、
必ず篠森家の人が生徒会長にならなければいけないというルールがある。
なぜそんなルールがあるのか。
それは
私の祖父が、この学校を設立したから。
そして今は私の父が校長を務めている。
何人か他の人が自己紹介をしてから、
いえもんさんの順番が回ってきた。
いえもんさんは「これでいい?」
と言うように隣の私を見てくる。
これ以上何を言えば良いのか分からないらしい。
睨んで意志を目で伝えると、
いえもんさんは思い出したように顔をはっとさせた。
とち狂った会話を終えてから、また何人か自己紹介をする。
「はい」と緊張した顔で立つラテさん。
おぉ、ラテさんがまとも…!と思ったら、ラテさんが私からなにかを感じたのか、私を睨んできた。
…エスパーかな?
また何人か自己紹介をして…
(((ウーパールーパーだからかな……)))
珍しく、私もいえもんさんもラテさんも、この意見は一致した気がした。
クラス全員の名前と顔を覚えて、
私はふぅーっと一息ついた。
ーあとがきー
追記・コメント、☆や♡してくれている方、ありがとうございます!!!
定期的に見てにやにやしてます、へへ…
ひとつ増えただけでも発狂ものなんですよ、ほんとに……
あの、少しでもいいなって思ったらコメント、☆、♡してくれると嬉しいです…!!!
ぜひ!!よろしくお願いします!!!
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!