家に帰り、
リビングのソファーに腰掛ける。
『はぁ…』
未だに侑が浮気していたことが信じられない。
私以外の女の子に触れて、
キスして、
「好きや」______なんて
言っちゃってさ。
『っ………』
ズキッ。
胸が痛い。
苦しい。
1人になればなるほど痛感して
涙が溢れ出る。
……これからどんな顔して侑と会えばいいのか。
いや、もしかしたらもう「別れようや」なんて
言われちゃったりして。
『……あ。』
ふと手元に目をやると…
080__と治の電話番号が書いてある。
『……これくらいいいよね。』
侑だって浮気してたんだし。
ピッ_ピッ。とスマホを操作して
「登録」ボタンを押した。
別に登録した所で何かが起こるわけでもない。
〝俺が必要になったら____〟
『……』
必要になる事なんて……ないと思うし。
________________
侑side
空き教室を出て、すぐに外の手洗い場へ向かった。
ジャーッ___。
勢いよく水をだして〝触れた口元〟を洗う。
侑「チッ………きっしょ。」
あなた以外の女から口付けをされ、
そして…その唇を黙らせるように抱き寄せた。
キュッ。
水をとめ、ポタポタと水滴が落ちる。
侑「ふっふ……いつ気づくやろなぁ。」
俺があなた以外の女と「浮気」しとったって気づいたら…
お前は嫉妬してどんどん俺に溺れるやろなぁ。
俺の事だけしか考えられんくなるやろ……?
俺の事だけしか見えんくなるやろ……?
もっとや。
もっと俺に溺れて
もっと俺を欲しがれ。
侑「ふ…
俺が〝愛しとる〟のはお前だけなんやから…」
治「……ツム。」
侑「…なんや、サムか。」
少し表情の強ばったサムが「早う部活行くで。」と
俺に背を向け歩き出した。
侑「……なぁ、サム。」
治「…なんや。」
侑「俺………あなたん事愛しすぎて
〝溺死〟させてまうかもなぁ。」
治「……………アホなこと言わんでええから、
北さんがカンカンやで。」
_________________
あなたside
午後8時過ぎ。
ブーッブーッ__
『っ………きた……』
スマホには「着信中:侑」の文字。
正直__あんな事を目の当たりにした今日、
一言も口を聞きたくない。
でも出ないとまた……
『ああもう。
__はい、もしもし。』
侑「あなた、何しとった??」
『……何って、お風呂上がったとこ。』
侑「さよか、風邪ひかんようにな。」
『うん、ありがと。じゃあまた明日。』
侑「はぁ?なんやそれ、まだ俺話t))」
ピッ。
『…あ。やっちゃった。』
彼の会話を遮って通話終了ボタンを押した。
『私の事なんかどうだっていいでしょ。』
あの子が本命なんでしょ…?
本当はさっさと別れたいんでしょ?
『……やだ……行かないで……
っ___。』
あれ…?
どうして__?
苦しくて悲しくて__イライラしてるのに。
行かないで欲しい……そう思っちゃうの_?
私以外の女の唇に触れないで…。
お願い……
『っうッ……ヒック……やだよ……っ__。』
ああ、私
本当に矛盾してる。
__________________
次の日の昼休み。
昨日は結局散々泣いた。
声だって枯れたし、目元も腫れている。
なるべく顔を見られないように
下を向きながら廊下を歩いていると、
ガシッ_。
『__!』
突然腕をつかまれ、「進路相談室」とかかれた教室に
引きずりこまれた。
侑「捕まえたで……あなた。」
『あ……っ、侑……』
彼は片手でドアを閉め、もう片方の腕で私を抱き寄せる。
侑「なぁ……なんなん?自分。
俺の電話途中で切るし、LINEも未読無視やし。」
『…それは……』
侑「ん…?目ぇ腫れてるやんか。
何かあったん?」
『…別に。』
侑のせいだよ_______。
なんて言えない。
侑「自分……その態度ええ加減にせぇよ。」
『…!!__んっ。』
私の顎をつかみ乱暴にキスを落とす侑。
侑「は……っ……」
ヌルッ_、と舌が入ってきて
呼吸が段々と苦しくなっていく。
チュクッ……チュッ…
『んんっ……ふっ…あっ、あつ…むっ……』
苦しくて彼の胸元を押すも、ガシッと手首を押さえつけられてしまった。
『(息が………っ……できない……)』
限界まで深いキスを続けられ、
足元から崩れそうになった瞬間
…やっと唇が離れた。
侑「ふ……涙目やんか。可愛ええなぁ。」
『はぁっ……はぁ……』
はやく酸素が欲しくて大きく呼吸をする。
侑「……で、何があったかいうてみぃや。」
『……』
本当は言ってやりたい。
「浮気してるでしょ」って。
でも………何故だか言えない。
言ってしまえば全てが壊れてしまいそうで、
侑を失いそうで___怖い。
『…じ、実は…体調悪くて……』
侑「……嘘はええから。はよ言えや。」
『っ…』
やっぱり全部わかっちゃうんだ。
でも、、もうどうしたらいいの。
言えない……言いたくないのに。
ガララッ__
『!!』
途端、ドアが勢い良く開けられた。
侑「……なんやねん。今取り込み中なんやけど。」
『……っ………』
そこにいたのは
治だった。
治「…別に邪魔するつもりやなかったんやけど。
ここ、今から使うから他でやってや。」
侑「あ?なんでや。」
治「2者面談や。……先生くるで。」
『(あれ……今日2者面談の日だったっけ……)』
侑「しゃんなしやな、行くで、あなた。」
『う、うん…』
侑に腕を引かれ、進路相談室を出る。
最後に治と目が合ったが、
とっさに逸らしてしまった。
侑「…もう、ここでええわ。
何があったが早う言えや。
俺次移動教室やねん。」
……ああ、もうやっぱり
言わなきゃいけないのか。
『……私……』
キーンコーン_____
『!予鈴だ……』
侑「はぁ………もうええわ。
部活終わり電話で聞く。」
『えっ………』
そう言って背を向ける彼。
どうして…?いつもなら「放課後な」って言うのに。
もしかして……今日もあの子と会うの、?
やだ……
やだよ、侑……
〝行かないで。〟
『ッ………!!侑!!』
気づけば走り出していて、
侑を後ろから思いっきり抱きしめていた。
侑「…!!っな____」
『…ねぇ、私の事___好き…?』
他の生徒や先輩たちが見ている。
…でもそんな事今はどうでも良かった。
侑「ふっふ……何言うてんねん。
愛してるに決まってるやろ?」
『…!うん。』
その言葉を聞いて__少しだけほっとした。
それがたとえ……〝嘘〟だとしても。
貴方から離れたくなくて。
私から離れないで欲しくて。
そしてゆっくりと侑から離れ、
他クラスの子達の目線をくぐり抜け
そのまま自分の教室へ向かった。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!