第2話

人生万事塞翁が虎
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2024/03/03 01:36 更新
一杯の茶漬け…梅干しに刻み海苔…それに夕餉の残りの鶏肉…そいつを熱い白湯に浮かべ、塩昆布と一緒にかき込む
中島敦
(旨かったなぁ…孤児院の台所で人目を忍んで食った茶漬けは…)
中島敦
ダメた…腹減って死ぬ…僕の名前は敦。故あって餓死寸前です。孤児院を追い出され…食べる物も寝る所もなく…金もなく…
中島敦
(しかし、もはや生きたければ盗むか、奪うしか無い)
《出て行け穀潰し!お前などこの孤児院にもいらん!》
中島敦
うるさい…うるさい!うるさーい!よし!この次に通りかかった奴を襲って、そいつから金品を奪ってやる!
敦の目にはバイクが映った
中島敦
さすがにこれは無理だ…空腹じゃ追いつけない
中島敦
次!……トレーニング中の軍警が財布を持っているとは思えない
途方に暮れていた時、1人の女性?に声を掛けられた
???
あの、大事ですか?俺の名前は
吾峠呼世晴
吾峠呼世晴です
中島敦
あ……まぁ
敦に声を掛けてきた人は吾峠呼世晴という人で
軍服めいた洋装に市松模様の羽織を羽織っていて、耳には花札の様な耳飾り。背には木箱を背負っている僕より歳上だと思われる男性だった
中島敦
グゥ〜……
吾峠呼世晴
お腹……空いてるんですか?
中島敦
少し前に孤児院から訳あって追い出されまして
吾峠呼世晴
すいません……俺も今食べられる物は持ち合わせてないんですよ
中島敦
いえ……そんな。
あっ、僕の名前は中島敦です
吾峠呼世晴
そうなんですね笑。
所であれは……何でしょうね……?
中島敦
……?
五峠さんが言った方向を見ると川から足が流れてきた
中島敦
これは流石にノーカンでしょ
吾峠呼世晴
(ノーカン?)
中島敦
ええい!
吾峠呼世晴
中島さん!?
そう僕は足が流れていく所に飛び込んだ
吾峠呼世晴
中島さん、俺の手をつかんで!
中島敦
ゲホッゴホッ……ケホッ
五峠さんの手に掴まって僕は土手にあがり息を整えていた
川で流れていた男がパチッと目を開け、行き良いよく起き上がった
中島敦
うぉ!
吾峠呼世晴
……!
中島敦
あ、あんた川に流されてて……大丈夫?
川を流れていた男
__助かったか
川を流れていた男
ちぇっ
中島敦
ちぇっ!?(今“ちぇっ”て言ったかこの人…)
川を流れていた男
君達かい?私の入水を邪魔したのは
中島敦
邪魔なんて僕はただ助けようと_入水?
吾峠呼世晴
……入水って自殺行為じゃ?
川を流れていた男
然り、入水は自殺だよ
川を流れていた男
私は自殺をしようとしていたのだ
それを君が余計な事を……
中島敦
は、はぁ……(あれ?僕今怒られてる?)
吾峠呼世晴
……はぁ
はあ、と溜め息をついてゆっくりと顔をあげた。
目を開くと、何故か先程の男は目を輝かせていて、ぎゅっと五峠の手を握った。
川を流れていた男
海を閉じ込めた様な髪、透き通るような白い肌、太陽のようなその瞳。まるで妖精のようだ!
お嬢さん、どうか私と心中を!
吾峠呼世晴
!?……お断りさせて頂きます。
川を流れていた男
そんなこと云わずにどうでしょう!
吾峠呼世晴
否、その前に俺は男ですよ?
お嬢さんでは無いですね
川を流れていた男
……え?
静寂な時間が過ぎ去ったあと
川を流れていた男
コホン……とは言え、人に迷惑をかけないクリーンな自殺が私の信条だ。なのに、君に迷惑をかけた時点でこちらの落ち度…何かお詫びでも
中島敦
ぐううう
と、お腹の音が鳴り響く
川を流れていた男
空腹なのかい?少年
中島敦
実は…ここ数日何も食べてなくて…
川を流れていた男
奇遇だな。実は私もだ
中島敦
それじゃ!
川を流れていた男
ちなみに財布は流されたようだ
吾峠呼世晴
(この人、大丈夫なのか……?)
中島敦
え~~そんな~~
吾峠呼世晴
中島さん、心の声ダダ漏れですよ……
後ろの方から1人の男性が大声で話しかけてきた
???
こんな所におったか唐変木!
川を流れていた男
国木田君!ご苦労様!
川を流れていた男は、親しげに男性の苗字を呼んだ
どうやら、この2人は知り合いの様だった
国木田独歩
何がご苦労様だ!苦労は全てお前のせいだ!この自殺マニア!お前はどれだけ俺の計画を乱せば気が済む
この会話を聴いているとどうやらこの川を流れていた男は常習犯らしい
川を流れていた男
あ、そうだ!よい事思いついた
川を流れていた男
彼は私の同僚なのだ。彼に奢って貰えばいい
国木田独歩
人の話しを聞けよ!
吾峠呼世晴
(ごもっとも……)
川を流れていた男
君達、名前は?
中島敦
中島敦ですけど…
吾峠呼世晴
吾峠呼世晴……
川を流れていた男
ではついて来たまえ敦君、呼世晴君!何が食べたい?
吾峠呼世晴
特には……
中島敦
あの…できれば…
川を流れていた男
なに遠慮はいらないよ
中島敦
茶漬けが食べたいです
吾峠呼世晴
(中島さんは、茶漬けがお好きなのかな?)
すると、突然男は笑いだし、
川を流れていた男
ふふふ…はっはっは!餓死寸前の少年が茶漬けを所望か
川を流れていた男
いいよ!国木田君に30杯くらい奢らせよう!
国木田独歩
俺の金で太っ腹になるな太宰!
中島敦
太宰?
川を流れていた男
私の名だよ
太宰治
私の名は太宰。太宰治だ
風が吹き抜け、砂色の外套が靡いた
𝑁𝑒𝑥𝑡➯➱➩

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