夜も更け、静まり返ったスカラビアの厨房。
俺は、目の前のまな板と格闘していた。
背後から呆れたような声がして、ジャミルの胸板が俺の背中にぴったりと重なった。
ジャミルは俺の背後から腕を伸ばし、俺の手を上から包み込むようにして包丁を握らせる。
ジャミルの低い声が、耳元で心地よく響く。
彼は俺の手を誘導しながら、鮮やかな手つきで野菜を刻んでいく。
トントン、とリズム良く響く音が、静かな厨房に心地よく響いた。
ジャミルは包丁を置くと、俺の肩に顎を乗せて、鍋から立ち上る湯気を眺めた。
いつもは完璧な副寮長として気を張っている彼も、俺と二人きりの時は、
こうして少しだけ甘えるような仕草を見せる。
ジャミルがスプーンですくったスープを、フーフーと冷ましてから俺の口元へ運ぶ。
俺は少し照れながらも、それを口に含んだ。
不意に、ジャミルの唇が俺の唇に重なった。
スープの熱さとは違う、心臓が跳ねるような熱。ジャミルは俺の腰を引き寄せ、深くて優しいキスを落とす。
ジャミルは俺の首筋に顔を埋め、低い声で、愛おしそうに囁いた。
俺の肌が、幸せな温度で淡い桃色に染まっていく。
支配や野心のために始まった関係だったけれど、今この場所にあるのは、誰にも邪魔されない、俺たちだけの温かな時間だった。
すみません、いつもより短くなってしまいました。














編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。