『うん、いいと思う!』
そう一言発したら、心なしか彼の顔は暗くなった。
わたしはこんなにも寒い冬に、冷や汗をかいている。
蘇「…そうだね」
間があって、そう返された。
私たち、もう終わりなのかもね。
わたしいつからか、あなたに嫌われたくなくて、イエスしか言えなくなってた。
あなたのこと、否定できなくなってた。
こんなことになるなんて、あの時は思ってなかった。
『蘇枋くん、来ちゃった』
待ちきれなくって風鈴高校の前まで迎えに来てしまったわたし。
蘇枋くんは目を大きく開いて、それからふわりと笑った。
蘇「俺も早く会いたいなって思ってたとこだよ」
タッセルピアスが風に揺れて、ぐっと胸が高鳴った。
ーー
『あれ!?あれれれ!?蘇枋さーん!?もしかして〜!』
『照れてんのー!?!?!』
蘇「…そろそろ怒るよ」
口だけ達者な彼が面白くって愛おしくって。
赤く染まった耳を見て、思わずくすりと笑ってしまった。
ーー
『…もう、やだ……、最低、……』
かくかくしかじかで痴話喧嘩してしまった私たち。
それでも彼はこっちをちゃんと見つめてくれた。
蘇「…ごめんね…。」
泣きそうなわたしに謝ってくれる彼。
わたしだって悪いのに、彼はいつも率先して謝ってくれる。
そういうところがちゃんとできる素敵な人だ。
ーー
『ぃ、痛い、…』
蘇「はいこれ、あったかいココア。あとは」
蘇「今日はずっと隣にいるね」
生理痛でしんどいわたしに、ココアを買ってきてくれて、ずっと隣にいるって言ってくれた。
こんなことできる人、なかなかいないって知ってる。
わたしのことこんなに大切にしてくれる人、他にいないって、わかってる。
うまくいかなかった。
うまくいくわけなかった。
彼の優しさに甘えて、彼に嫌われないようにして。
そしたら途中で、お互い気がついてしまった。
本気で心から愛してないことに。
蘇枋隼飛という人にはわたしじゃだめだった。
ずっと、わたしじゃきっと勿体無かった…。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。