「やっぱ、こっちの方が妥当か・・・?」
僕は今、脱出計画をたてている。
もちろん、この家からのだ。
もうこの家に来て一週間はたった。
間取りも頭に入ってきたし、隠し通路なんかがない
のもわかった。
奏空くんはゴミ捨てと買い物以外で基本外に出ないし、すぐ玄関に来にくい場所にいるタイミングでの
実行が良さそうだ。
外出時に出れたとしても駅にいく前に見つかる可能性が高い。
多分、僕を置いて遠くに出かけたりはしない。
先日も、YouTubeの仲間か何かに旅行に誘われていたが断っていた。
「それに・・・」
前に行った駅に、違和感がある。
ここは都会じゃないとはいえ住宅街だ。
最寄駅にしては結構遠かった。
ドアが開く音がした。
僕は慌ててさっきまで切っていたテレビの音をONにした。
「陸、多分脱出する気なんだろうな・・・」
湯船につかりながらそんな事をつぶやいた。
最近は留守番中の様子を見ると何かを考えこんでいる様子が多い。
おそらく脱出計画でもたてているのだろう。
盗聴器は置いていないから何を呟いているのかわからないし、多分盗聴器を置いたところで具体的な情報を得られるとも思わない。
「まあ、暗証番号が分かるとは思えないけど」
4桁とはいえ、多分俺にしか分からない物だ。
この数字を陸が覚えていても試したりしないだろう。
「計画の実行中に俺に見つかったら、どんな顔する
んだろうな・・・」
絶望顔もいいし、恐怖にそまった顔もいいな。
俺はしばらく妄想にふけった。
「陸、寝るぞー」
「はいはい」
壁側に陸を寝かせてから自分も布団にはいる。
そして陸を抱きしめる。
寝ている間にいなくならないように。
逃げられないように。
「そういえば陸ってさ」
「ん?」
「あの日、自主するつもりで行ったの?」
「いや・・・」
「じゃあ何で?」
前々から気になっていた事だ。
どうせなら聞き出してしまいたい。
「買い物にいく時、警察署の前を通ったら怖くなって
きて・・・」
「ふーん・・・」
まあ、いらないと思われた訳じゃないだけいいのか・・・?
俺は陸を抱きしめる力をつよめた。
もう、離れていかないように。
離れられないように。
ソルティライチって美味しいですよね。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。