花香の目が紅色に染まった。
そう認識した次の瞬間には、また別の見知らぬ世界に居た。
地面を見れば水が張ってあり、一歩あるけば、コツンと音がした。まるで、ガラスの上を歩いているようだった。
更に上に視線を向ければ、巨大な紅月が視界全体を覆うように鎮座していた。そして、月の中心には巨大な時空の歪みが発生している。
ブラックホールと見紛うソレは、月の輪郭すら歪め、その存在を確固たるものにしていた。
シアーネとは反対側に位置する場所に花香は居た。目は元に戻っている。
シアーネは答えない。
そこから、無音の時間が続いた。
それが、1秒なのか、1分なのか…はたまた1時間なのか、時間という概念から切り離されたように、刹那がいくつにも渡り、その場を支配した。
どれだけ時間が経ったのか、シアーネは重い口を開いた。
シアーネが返答するよりも早く、花香は話し始める。
花香は驚きと困惑に満ちたシアーネへ目線を合わせた。
花香は溜め込んでいた感情を吐き出すかのように、苛立ちを叩きつけた。
その声は悲痛で、痛々しい。
シアーネがその言葉に疑問を持つよりも先に、この空間に来た時の感覚がシアーネを襲う。
視界が暗転する直前、シアーネは見てしまった。
花香の目から一筋の涙が流れ、水面に波紋を浮かせたのを。
次にシアーネが目を覚ました場所は、あの民家だった。
シアーネは、今起きた出来事について考えた。
この異変の真の目的、花香の独白……だが、考えれば考える程、分からなくなっていく。
シアーネがバハートを見つけようとオーラを使った瞬間、ゾクリと背筋が凍った。
だが、それも直ぐに収まる。
_同時刻_月刻の間
花香は赤い空を見上げ、息を吐き出す。気持ちを落ち着かせるように。
そして、意を決したように、門を前にして言った。
巨大なドラゴンのような生物を従えたその姿は、圧倒的強者として、その場に君臨していた。
その一言が合図かのように、生み出された怪物達はブラックホールのような裏門から現世に降臨している紅月の表門を通り、地上へと舞い降りる。
約10年以上にも及ぶ花香の計画__
その最後の段階が始まった。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。