「てか出水先輩!毎回射線に入るの辞めてって言ってますよね!?」
「わりーわりー」
ついさっき終わった試合のログを見ながら、先輩であり私の恋人である出水公平に文句を垂らしていた
ランク戦が終わったことで出場していた隊員も、観戦していた隊員もゾロゾロと休憩の為に食堂の席に着いていた。
「よぉ、今日もラブラブだな」
フラっと現れたのは三輪隊の米屋陽介とうちの隊長の太刀川さんだ。
2人とも食券を持っていて席を探しているようだった。
「お前ら最初はあんなに仲悪かったのになー」
「え?俺たち仲悪くなかったですよ」
「そんなことあるんすか?」
米屋がすっとぼけた声を出した瞬間、私は思わずむせそうになった。
「いや、ほんと違いますよ!というか私たち別に仲は悪くなかったですし!」
「え?お前、めっちゃ出水のこと嫌ってたじゃん」
太刀川さんが、当たり前のように言った。
「太刀川さんさぁ…!」
私の声が裏返る。
「え、そうなの?」
出水先輩がぽかんとした顔でこちらを見る。
最悪だ。なんで太刀川さんはこういう時だけ余計なことを言うのか。
米屋先輩が面白がって身を乗り出す。
「おいおい何それ、詳しく聞きたいっす」
「いやもう過去の話ですから!」
私は慌てて手を振った。
しかし太刀川さんは、いつもの調子で淡々と言葉を続ける。
「あなたは、一時期お前のこと一方的に嫌ってたぞ」
出水先輩の視線が、驚きと困惑を混ぜてこちらに向く。
私はテーブルの端をぎゅっと掴んだ。
「いや…その、嫌ってたっていうか、まぁ…ほんのちょっと…イラッとしただけで…!」
「ほんのちょっとじゃなかっただろ」
太刀川さんが素直に刺してくる。
米屋先輩が口元を押さえて耐えきれず笑い声を漏らす。
「お前そんなツンツンしてたのかよ!なんで?」
身を乗り出してニヤついているのを視界の端で感じながら、私は必死に話題を変えようと口を開きかけたが、
その一瞬の隙を、太刀川さんは逃さなかった。
「理由は簡単だぞ」
太刀川さんが、淡々と、しかし容赦なく言葉を落とす。
「あなたは“俺の隣”を出水に取られたと思ってたからだ」
空気が一瞬で静まり返った。
「ぁ〜ほんとにさいあく……」
出水先輩は固まったまま瞬きを忘れたように無表情で私を見つめ、米屋先輩は「えっ、そういうこと!?」と声を裏返しながら腹を抱えて笑っている。
太刀川さんは変わらず真顔でうどんを啜り、
まるで「事実を言っただけだが?」という態度だった。
「いや、ほんとちがうんですよ先輩!ほんとに…!!」
顔が熱くてたまらず、私は手で必死に覆いながら早口でまくしたてる。
だが出水先輩が口を開くのが先だった。
「え?それって」
「ほら出水、気づいてなかっただろ」
太刀川さんが淡々と追撃する。
「俺がお前と組む機会が増えた時期、こいつずっと機嫌悪かった」
「もう静かにしててくださいよ…!!」
私は悲鳴のような声を上げたが、もう遅かった。
出水先輩はゆっくりと、信じられないものを見るような視線をこちらへ向けた。
「……俺に太刀川さんとられてキレてた……ってこと?」
「違います!!!!!!!!」
私の全力の否定を、米屋の爆笑がかき消した。
隣の先輩はニヤニヤし始めたし
太刀川さんは余計なことしか喋らないし
米屋先輩はずっと他人事で笑ってるし!!!!
「はーあなたちゃんにも先輩思いの可愛いとこあんのな?笑」
私の頭を大きな手でぐしゃっと撫でる
「太刀川さんのせいで嫌われてたのは解せねぇけど…ま、今こんなに好きでいてくれてるならいいや。」
先輩は肩をすくめ、ひどく自然にそんなことを言う。
米屋先輩が「うわー甘っ」と呟き、太刀川さんは無言でうどんを啜り始めた。
私は耳まで熱くなりながら、出水先輩を睨む。
「ほんとそういうところがムカつくんですよ」
「え、なんで?」
「なんでもです!」
そう言いつつ、もう昔みたいに先輩を嫌う理由なんてどこにもなかった。
【てかなんでお前は気づいてねぇんだよ】
【いや確かに冷たいなとは思ってたんだけど、まさか嫌われてたとは】
【やっぱお前バカだな】
【黙れ槍バカ】












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。