濡れた制服が肌に貼りつき、雨の匂いが混ざる。私は傘を忘れてしまったけれど、もう気にならなかった。目の前に出水公平が立っているから。
「おい、大丈夫か?」
彼の声は普段より柔らかく、胸がざわつく。公平の瞳が私をまっすぐに見つめると、世界が少しだけ止まったように感じる。
「うん…大丈夫」
緊張で声が震える。公平はにっこりもせず、でもほんの少し口角を上げる。その笑みだけで、心臓が暴れ出す。
「これ、貸してやるよ」
彼は私の手に傘の柄を重ねた。手が触れた瞬間、じんわり温かい。鼓動が耳まで響く。公平は微動だにせず、ただ私を見つめる。
放課後、訓練を終えた帰り道、偶然公平と二人きりになることが出来た。雨上がりの街灯が水たまりに反射して揺れる中、私は勇気を振り絞る。
「公平、私さ…公平とずっと一緒にいたい」
私たちがボーダー隊員として戦っている間は、確実に明日が保証されているわけではない。明日突然起きる大規模進行でどちらかはお互いの傍から居なくなるかもしれないし、遠征から帰って来れないかもしれない。
それでも公平は立ち止まり、少し顔を赤らめる。普段おちゃらけている彼が、ほんの少し戸惑っているのがわかる。
「俺も…ずっとそう思ってた」
その短い言葉に、胸がいっぱいになる。彼は少し傘を傾け、私との距離をぐっと縮める。肩に触れる手が自然で、心臓が跳ねる。
「…公平」
思わず声を漏らす私に、彼はゆっくり顔を近づけた。目が合う瞬間、世界が静止する。公平の手が私の頬に触れ、指先が温かく伝わる。
「好きだ」
耳元で囁く声に、体が震える。思わず私も彼に顔を寄せる。次の瞬間、唇が触れ合った。柔らかく、でも確かな熱を持つキス。世界が甘く溶ける。
雨の滴が肩を伝い、夜風が二人を包む。手を絡め、そっと抱き寄せられる。その温もりに、胸がいっぱいになる。公平の存在が、こんなにも愛おしいなんて知らなかった。
「ずっと…一緒にいよう」
「…うん」
彼が低く囁き、唇を再び重ねる。小さな触れ合いが、二人の距離を完全に消し去る。届かないはずの想いが、今は確かに形を持った。
雨上がりの屋上で、私たちはただ抱き合った。心の奥で、これ以上ない幸福を感じながら。公平の温もりが、夜の冷たさを優しく溶かしていく。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!