夏樹が倒れてから、教室は沈黙に包まれたままだった。
誰もが息をひそめ、私を見る目は疑念と恐怖に満ちていた。
だが、私は冷静だった。感情の起伏が乏しい私にとって、彼の死はただの事実に過ぎなかった。
私は教室の隅に置かれた鏡を見た。
そこに映る自分の目は、まるで冷たい蝶の羽のように輝いていた。
あの夜、私は初めて「名前」を持つことを決めた。
人は名前に宿る力を知らない。
名前はただの記号じゃない。存在の証明であり、運命の鎖。
私は、この檻の中で自由に羽ばたく蝶。
だが、同時に囚われの身。
誰にも気づかれないまま、私はこの舞台の中心に立っている。
これが私の本当の名前──
北条凛子。
そう、自分自身に与えた名前だ。
誰も知らない私の本質を封じるために。
私の冷たく計算された殺意。
それは、まるで蝶の羽ばたきが引き起こす嵐のように静かに、しかし確実に世界を壊す。
クラス全員を葬った後、私の物語はまだ終わっていない。
この名前と共に、新たな幕が上がる。
私が選んだ名前は、呪縛でもあり、解放でもあった。
誰も知らない真実の私を、この檻の中で生き続ける蝶として、私は受け入れた。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。