第31話

4-5 最大の試練(自己紹介)
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2025/08/17 03:04 更新


セレンディア学園における昼食は

大半のものが校舎にある食堂を利用する




学園の食堂は一流の料理人達が揃っているし、給仕役もいる

一応鍋ごとに簡単な毒見を行われているので

安心して食べられるという



ただ、ごく一部の裕福な生徒は寮に自前の料理人や

給仕を連れ込み、寮の食堂で調理をさせて自室で食事する



護衛対象である第二王子もそのパターンらしい



だから、別に食堂には行かなくても、いい、よね…



自分に言い訳をして

昼休みになるとコソコソと教室を抜け出した


クラスの生徒達はみな、流れるように食堂へ移動していくが

モニカはその流れに逆らって、校舎を出る



ポケットには木の実が一握りほど入っている

これを人の少ないところで食べよう






昔から人の少ないところを探すのが得意である

ミネルヴァに通っていた頃は秘密の隠れ場所にこもって
……否、一人だけいたけれど

その友人とも最後は決別してしまった


それでも魔術の才能があったから、

ミネルヴァでは研究室に引きこもることが許されていた


だが、セレンディア学園において

その才能を発揮することはできない


セレンディア学園にも魔術に関する教科は

選択制で用意されているが、そこで魔術を披露してしまえば

大変なことになるだろう



あがり症である私は、無詠唱でしか魔術を使えない



そして、ここで無詠唱魔術を披露したら

〈沈黙の魔女〉であることがバレてしまう



ため息をつきながら髪に結ばれたリボンに触れる


私……ありがとうの一言すら、言えてない


いつだって、言いたい言葉は喉に貼りついて

そのまま声にならずに飲み込まれてしまう


クラスメイトとだって、まともに話せないのに

どうやって王子様に近づいたら良いんだろう


護衛をするためには、第二王子に近づかなくてはならない

だが、第二王子は3年、私は2年でそもそも学年が違うのだ


……王子の護衛が目的なら

アルスさんは同じ学年に私をねじ込むぐらいしてたはず……

ううん、そもそも確実に護衛をしたいなら

男の人を送り込む、はず。

だって、男子と女子は寮が離れているもの



アルス・ミラーは傍若無人で壊滅的に性格が悪いが、有能だ

この護衛任務が絶対に失敗できないことは、

この計画は穴が多すぎる


そもそも極度の人見知りのあなたの下の名前(カタカナ)・エヴァレットを

この学園に送り込む時点で無謀だ

アルスさんは、他に何か考えがあるんじゃ……



そんな事を考えながら庭園を横切ると

ふと校舎の奥に大きな柵を見つけた


この先も学園の敷地内のはずだが、

それ以上先に進めぬように柵の鉄門は閉ざされている

門扉には「旧庭園、現在整備中」

という札がかけられていたがよく見ると

鍵はかけられていない


……ここなら、人が来なそう


周囲に人がないことを確認し、旧庭園に速歩で進んだ

こういう閉鎖されている空間は、絶好の隠れ場所だ


整備中の札が枯れられていたけれど

思っていたほど木々は荒れていない


ただ、花の類はほとんど見当たらなかった

どうやら花は全て表の花壇に移してしまったらしい

咲いているのは秋の野草ぐらいだ


でも、静かでいい場所……



ここなら落ち着いて過ごせそうだ


少しだけ気持ちを浮上させ、座るのに丁度いい場所を探す





だが、その浮かれた足取りは


通じの茂みをひのつまがったところで


ピタリと止まった


旧庭園の奥、古びた噴水の縁に


ミルクティーベージュの髪をなびかせる青年が


腰掛けて何かを読んでいる


誤字修正しました


まだあったら諦めます

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