私にはお姉様がいる。
文武両道才色兼備、といったものか。
性格も顔も全てがカンペキ。それに人に好かれやすい
おまけつき。
わたしは姉のことが嫌いなわけではない。そう、嫌いなわけではないのだ。
だけどすこし、ほんの少しだけ苦手意識がある。
なぜなら彼ら、彼女らが姉のことを好きすぎるから。
廊下の真ん中に立ちそう考えていると後ろから声をかけられた。
「何を突っ立っているんです。邪魔なのでどいていただいても?」
彼はアナイクス。 所謂私たちの専属家庭教師というものだ。ただ、私より圧倒的に姉が好きなのは目に見えてわかる。対応、いいや。声の甘さやトーンがぜんぜんちがうから
「あ、すみません。すぐどきますね」
「はあ……そもそも廊下で考え事をしないでくださいといつも言っているでしょう。何度いえば理解するんですか」
「……すみません。次から気をつけます」
「チッ、次はありませんよ」
次はない。次がないからなんていうんだ。
そもそもとして、こちらはあなたの主人。
お嬢様、と言うものだ。そんな口を聞いていいのか??
……ひどいことを言われたからと言って私がクビにできる権限など持っていないし、クビにするつもりもないが。
せっかく土曜日に朝早く起きたのに、これじゃ全てが台無しだ。だけど、今日は二度寝ができない。なぜなら、星ちゃんと穹くんと、丹恒となのかとあそぶから。
そろそろ支度しようかな〜なんて考えながら自室がある階へと足を動かす。
下を向きながら階段を登っていると大きな壁にぶつかった。
「っうぐ……」
「わっ、すまない。怪我はないかい?」
後ろに倒れそうになっている私を受け止めてくれたのはファイノン。ファイノンは私と姉の護衛だ。
そして、姉が好きな人間。
「大丈夫。……モーディスさんは?一緒にいないの?」
「ああ、モーディスなら……」
「ここにいるのが見えないのか?」
「うわっ」
姉をお姫様だっこして階段から降りてきたのはモーディス。モーディスもファイノンと同じように私たちの護衛。
「なんでお姉様、かかえてるの?」
「あなたのヒロインの名前が起きないからだ」
「はーあ、あなたのヒロインの名前さまったら……もう朝食の時間なのに、二度寝するーって言ってきかないんだよ。それで君はなんで上に行くんだい?」
「……それ、ファイノンさんに関係ある?」
「関係あるよ」
「ないでしょ。あとシェフの方に今日ご飯いらないって伝えといて」
「え?なぜだい。最近ずっとそればっかりじゃないか」
困った顔をしながら子犬のように聞いてくるファイノン。だけど、きっと私なんかに興味はなく私がいないとお姉様が悲しむから言っている。
「友達と……あそびにいってくるから」
「ふうん……門限は破らないようにね。心配だから」
「……」
無視してさっさと部屋に行こうと思って階段を登ろうとするのに、ファイノンが邪魔をしてきて登れない。
「邪魔。てかモーディスさんもういってるけど、いいの?」
「……いいよ。今は君と話す方が大事だからさ」
「はあ。早くお姉様のところ行きなよ。そろそろ支度始めなきゃ待ち合わせに間に合わなくなっちゃうからどいて」
「君……ここ最近ずうっと友達と遊びに行ってるし、今日くらい間に合わなくてもいいんじゃないかな?ね、僕と一緒に居よう」
私に甘い言葉を囁いているように見えるが、そんなことはない。少なくともファイノンとあってはなしているここ5分ほど、一度も私の名前をよんでいないから。
その程度もわからない女だとおもわれているのか。わたしはファイノンに
「……ファイノンさんは私がせっかくできた友達に嫌われればいいって思ってるの?」
「なっ、別にそんなことは言ってないだろう」
「私にとっては同じ意味なの」
「……すまなかった」
「……あ、やっぱり明日もごはんいらない。外で食べてくるから」
「……」
美人の無言は怖いと言うもので、すこし恐怖を覚えた。まだ10時だと言うのにファイノンの体の半分は影に覆われていてなんとも不気味だ。
「っ!そういうことだから!!つたえといて!」
言い捨てるように伝え急いでその場を後にした。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。