「……….」
「……こわかったーーっ!!」
部屋に帰った途端壁にもたれかかり、声を上げる。
というか、そもそもとしてなんであんなに口説いてくるのかがわからない。ファイノンはお姉様が好きなんじゃないの? 頭の中にぐるぐると渦巻く疑問に自問自答しているとドアが控えめにノックされた。
「あなたさま。すこしよろしいでしょうか」
「あーー、キャス?いいよ、入って!」
「失礼します」
お淑やかにドアを開け入ってくるのはキャストリス、洗濯などをやってくれているメイドだ。いいや、メイドといっても同級生なんだけど。
「で、どしたの!なんかよう?」
「ええ、今日はシーツのお洗濯をする日ですので……」
「あれっ、そうだったっけ!?ごめん!全然気にしてなかった!!」
「いえ、謝らないでください……!」
「あ、ねえキャス。私今日と明日ご飯いらないってシェフの方に伝えといてくれる?」
ファイノンさんにもいったけど多分伝えてくれないだろうから、とつけたしてキャストリスにお願いする、けど少し時間が経っても返事が来なくふとキャストリスの顔を見ると顔が曇っていた。
「わっ、なに!?ごめん!なんかしちゃった!?」
「……いいえ、あなたさまに言うほどでは……」
「いいよ!はなして!」
「……最近、お食事をご一緒にすることが少ないな、と思いまして……」
少し俯きがちにそう言う彼女の耳はすこしあかくなっていて、私のために勇気を出して伝えてくれたことがわかって、とてもかわいらしい。
「……じゃあ!!あした、のお昼に一緒に食べる」
「いえでも……あなたさまにご予定があるのでしたら」
「ない!明日のお昼はないから平気!」
「僕には『外で食べてくる』っていったのに?」
「ぎゃあっ……!!!」
「ぎゃあだなんてひどいなあ」といいながら私の前に来て目を見つめてくるファイノン。
「ぅ…きゃ、キャスーーっ……」
「あ、ええっと……」
「はあ、あなた様、なんでそんな嫌そうな顔をするんだい?」
「嫌だからに決まってるでしょ……っ!!私の部屋に入っていいのは女の子だけなの!」
じじつだ。私の部屋は神聖な場所。男……私のことが嫌いな男が入っていい場所ではない。
「んー、じゃあ僕が女の子になればいいのかな?」
「っそういうわけじゃない!とにかくでてって!」
「わっ、押し出そうとしなくてもいいじゃないか!」
どれだけおしてもファイノンはどいてくれないしキャスはおどおどしてるし、そろそろ支度をしないと間に合わなくなってしまう。
「ほんとにでてって、私そろそろ支度しないと間に合わないんだけど!」
「だから、君、最近出かけすぎだよ。たまにはいえにいても……」
「ファイノンはだまってて、関係ないじゃん!自分のことしか考えてないしさ……!!聞くけど私が家にいて欲しい理由って何?」
「……君と話してたいんだ」
「……嘘つくのやめたら?私知ってんの、私がいたほうがお姉様が幸せそうだからいてほしいだけだって!お姉様の機嫌取り……自分の好感度上げのために意味わかんないことで私の事引き止めないで」
「っそんなこと」
「私から見たらあるから言ってるの!!!!ほんとに自己中。最低!!」
「……僕の我儘で、君をこまらせてしまったみたいだね。本当にすまなかった」
そういいってファイノンは部屋から出て行った。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!