柔らかい笑みだ。昨日のことなんてまるでなかったかのような笑み。
なんだかちょっと、申し訳なさと気まずさが相まって…少し会釈をして、そのまま自分の席に座って強制的に会話を終わらせてしまう。
そのまま隣の席は人に囲まれた。…相変わらず、人気者なんだな、黒森さんって。
…昨日の事を思い出す。
こんな世界を逃げ出してしまいたい、完璧を演じるのがつかれてると言っていた人物と眼の前で笑顔で誰かを支える、才色兼備で完璧という言葉が似合うような人物が本当に同一人物なのかを疑ってしまう。
…けど…
よいしょっと先程の授業で使った資料を持ち上げる。そしてそのまま、昨日案内してもらった生物室へと歩いていく。
…昨日、黒森さんは…どんな気持ちで俺のことを案内してくれてたんだろうな。
…しょうがないって?完璧を演じながら、辛いと思いながら…しょうがないと思っていたのだろうか。
もうちょい穏やかに普通に過ぎていくと思っていた学校生活、なのに裏を返してみれば転校初日で人気者にとんでもない秘密を…っていうか本音を明かされてその件でめちゃくちゃ悩まされている。
…改めて文字に起こしてみるとかなりの特殊状況過ぎてちょっと笑えてくるほどだ。
俺程度にできることなんてたかが知れてるし…
言っちゃ悪いが、ほとんど面識のない人と急に駆け落ちのような真似事ができるほど自分は楽観主義ではない。
流されやすくもない。











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。