プルルルルと、スマホが鳴る
電話番号で書かれており、誰かが分からない
虹夏ちゃんと、リョウは顔を見合わせる
プツリと、電話が切れる
スターリーを飛び出し、3人は、別々のところを探しに行く
言葉がないってどんな感じなんだろう
私だって、ちゃんと喋ったことなんて…ない
もし、もしも、言葉がないなら、何で伝えるの?
息ができない…いろいろ考えて…脳にまで酸素が行かない…
空は暗いが、星なんてない
喜多ちゃんなら。生きてる
そう簡単に諦めるような喜多ちゃんでは無い
私は、足を動かす
ギターが重い、こんなにギター恨んだ日は無い
ギター…?
私は、下ばっかり向いていた
足元に白いギターケースがある
驚いたようにこちらを見る喜多ちゃん
その頬にはうっすらと涙の跡がある
私はギターケースから、ギターを取り出す
アンプなんてない…けど
『喜多ちゃんなら分かってくれます』
私は、弦を抑える
そして口ずさむ
私は喜多ちゃんの顔をまじまじと見ながら歌う
喜多ちゃんの頬には涙が伝う
小さい、とても小さい声で反応してくれる
私は、喜多ちゃんに、目線で合図を送る
その合図を見て、喜多ちゃんも、ギターを持つ
本当に一瞬だ
流れ星のように きらりと光って消えてゆく
でもね、きっと
また、夜空いっぱいの星になるから
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。