第12話

禁断 Part1
992
2024/01/20 20:00
アラスター
と、いうわけでハスカー!
僕とあなたは婚約したんだよ!
オスカー(ハスク)
(盛大に酒を吹き出す)
アラスター
そうかい♪ キミも僕らの幸せな未来を祝福してくれるんだね?
オスカー(ハスク)
ゴホッ! ゲホッ! ウォエ……!
おいコラ! アル!
オスカー(ハスク)
言っていい冗談と悪い冗談があるぞ!
あなた
あの……本当なのオスカー。
私……アラスターのことを……
言って「ポッ」と頬を赤らめるあなた。
ああ、なんて可愛いんだ♥️

ん? なぜ僕をにらむんだい友よ?
オスカー(ハスク)
おいラジオ野郎。そのニヤけたツラを一発なぐらせろ。
アラスター
ダメに決まってるじゃないか。
口を切ったら仕事に差し支えるさ。
あなた
あ、あの……オスカー!
彼女は僕に寄り添い、そっと手を重ねた。
あなた
私…アラスターを愛しているの。
彼の財産や名声が目当てじゃない。
弄ばれているわけでもない。
あなた
私たちは真剣なの………。
オスカー…あなたは私の兄も同然よ。
あなた
認めてはもらえないかしら?
オスカー(ハスク)
………………ハー……
キミはため息をつき、高価そうなボトルを開けてくれたね。
オスカー(ハスク)
俺様のとっておきだ。
さあ、乾杯だ。
これだからキミは最高の親友だというんだよ。
ハスカー。





三人で乾杯し、とても楽しい時間を過ごした。

バーも閉まる時間になったので、僕たちは、あなたを彼女のアパートまで送って行った。
あなた
二人ともありがとう。
今夜はとても楽しかったわ。
まだお酒が残っているのか、あなたは天使のような微笑みに少し赤みを浮かべていた。

彼女が部屋に入るのを見送り、僕たちはホテルへ戻る。
オスカー(ハスク)
なあ……アル?
アラスター
なんだい? ハスカー
オスカー(ハスク)
お前、本気であなたと結婚するつもりなのか?
アラスター
ああ、まずはニューオーリンズに戻って色々と下準備が必要だから、今すぐとはいかないけど……僕は本気さ。
オスカー(ハスク)
あの蛇みたいなストーカー女は
どうするんだ?
アラスター
ああ、ゴルゴナのことか……
オスカー(ハスク)
本当に迷惑で、タチの悪い女だな。
アラスター
何度も何度も拒絶しているのに、
自分に都合の悪いことは
話が通じないんだよ。
アラスター
僕に粘着して、同じホテルに
客として泊まるとは。
アラスター
ハスカー、
キミが助けてくれてよかったよ。
オスカー(ハスク)
気にすんな。あのイカレ女、
俺様のバーでヒステリーを
起こしたあげく、
オスカー(ハスク)
酒の勢いで無理やりお前に迫ろうと
したからな。
オスカー(ハスク)
バーは出禁。また騒ぎを起こしたら即通報って警告した。
また迷惑をかけられたら、俺様の所に避難すればいい。
アラスター
ニューオーリンズに戻ったら、
彼女には相応の罰を受けてもらうよ。
アラスター
今の僕なら、彼女を業界から追放するなんていくらでも手はある。
なんなら殺せばいい。
死体を残さずに始末する方法はいくらでもある。

だが、その事は友には内緒だ。
オスカー(ハスク)
そうか、お前に任せるが……。
あのバカ女が、あなたに何かしないか心配だ。
アラスター
フム……
その時だ。
アラスター
!?
なんだか視線を感じて振り向いた。
………誰かに尾行されている?
僕がラジオスターだと知ってのパパラッチか?

だが、正体を確かめる間もなく、その人物は立ち去った。

……………嫌な予感がする。





翌朝、何だかあなたが心配になり、
ホテル内をうろついていると……ひどく耳障りな金切り声が聞こえた。
ゴルゴナ
ちょっと! 聞いてるの!?
あんたがアラスターに色目使ってるのはわかってんのよ!
あなた
色目なんて、そんな……
人気のない非常階段のところで、ゴルゴナが最愛のあなたに言い掛かりをつけていた。
ゴルゴナ
ハ! そんな可愛い顔してとんだ
アバズレだこと! あんたみたいな女に付きまとわれるアラスターがホントかわいそう!
ゴルゴナ
当然アラスターとは
別れてくれるのよね?
ゴルゴナ
あんたみたいな下働きとスキャンダルなんて、アラスターがどれだけ迷惑に思うか……
アラスター
迷惑なアバズレはキミだろゴルゴナ!
ゴルゴナ
あ、あら? アラスター!
違うのよ、アタシ、この女があまりにも図々しくて身のほどを教えようと……
アラスター
次のラジオは『旅先で会った迷惑な客』でもトークしようか?
アラスター
若く美しいホテルメイドに嫉妬して、
酷い嫌がらせをしていた……とかね?
ゴルゴナ
お、覚えていなさい!
ゴルゴナ
あんたたち! 絶対に引き裂いてやるんだから!
呪いの言葉を吐き、醜く顔を歪めてゴルゴナは去って行った。
あなた
アラスター……
アラスター
あなた
あんな女のことなど気にするな。
アラスター
ほら、いいものがあるんだよ。
僕はポケットから、キャンディのビンを取り出した。

小さなガラスビンの中に、ラズベリーキャンディがぎっしりつまっていて、口にピンクのリボンがかかっている可愛いギフト菓子だ。
アラスター
ハスカーから聞いたんだ。
キミがラズベリーキャンディが好きだって。
あなた
わざわざ私のために?
………ありがとう。
ゴルゴナに悪意を向けられて青ざめていたあなたがようやく顔を緩めた。
僕は微笑んだ。
アラスター
笑って、お嬢さん。
笑顔じゃなきゃ、オシャレとは
言えないだろう?
僕らは抱き合った。
ラジオスターとホテルメイド。
その恋はまだ秘密。





あなたが元気になったのはいいが、あの執念深いゴルゴナのことだ。
また彼女に嫌がらせをするに違いない。
いい加減に思い知らせてやろうと、
ゴルゴナの部屋に向かった時だった。
ゴルゴナ
いいこと? 絶対にあの女と
アラスターを別れさせて。
ゴルゴナの部屋のドアが少し開いていて、隙間から声が漏れていた。

殺人鬼である僕は、気配を消すのが得意だ。そっとドアの隙間から中を覗き込んだ。
ゴルゴナ
もうあの女のアパートは突き止めたんでしょ? 遠慮はいらないから、思いっきり怖い目にあわせてやって。
ゴルゴナ
二度とアラスターに近づく気が起こらないほどにね。
室内にはゴルゴナと、何だかロクでもなさそうな感じの男がいた。
へへへ、あんたも悪い女だねえ。
ま、なかなかの上玉だったし、楽しめそうだな。
ゴルゴナの奴、人を雇ってあなたに危害を加えようとしているのか。
全く…………
この僕を………
本気で怒らせたらどうなるのか……
思い知らせてやろう。


続く

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