自分のデスクで編集作業をして、
帰宅してからなにしようかなと考えていたら、
声を掛けられてしまった。
葛葉さんはくろなんの収録があると聞いているし、
妹も仕事で家には居ない。
帰宅してからの予定なんてなにも決まっていなかった。
困っている様子なのも相まって、
正直に、手も予定も空いている、と答えた。
とある収録現場へ、ヘルプで入ることになりました。
「なんでいるの?」
という葛葉さんの心の声が聴こえる。
うん、まぁ、そう思うよね。
私も思ってる。
何かに答える時は、
答えた後にどうなるかは、ある程度予測を立て、
それを回避したいと思ったのなら、
嘘をつくことも視野に入れよう。
それが本日の教訓です。
ちらちらと、葛葉さんと目が合うけれど、
お互いやることが目の前にあるのだ。
見つめ合ってうっとりしている暇は無い。
頭を切りかえて、
アシスタントスタッフとしての仕事に集中した。
そう声をかけられ、大きく深呼吸をして
緊張感から己の体を解き放つ。
今日の収録は、食べ物を用意する系ではなかっただけ
マシだけど、通話をしたり動画を流したりするための
準備が必要なものが多く、地味に忙しかったのだ。
やっと訪れた安息に、目指す場所はひとつ。
部屋の隅のパイプ椅子。
靴を脱いで膝を抱えると、ものすごく安心した。
ふぅーと大きく息を吐き出し、
もらったペットボトルの水を乾いた喉へ流し込む。
と、並んで置いてあるもうひとつのパイプ椅子が
軋む音がした。
葛葉さんは、私と同じように靴を脱ぎ、
膝を抱えて小さくなった。
自身の膝の上に顔を乗せ、
こちらを見てくる葛葉さんは……
すっかり私からの「可愛い」に慣れたんだなぁ、
葛葉さん。可愛いんだ。
なんだかんだとふたりして、
顔が緩むのを止められなかった。
運命的な出会い方だったわけではない。
推しと、アシスタントスタッフなだけ。
なんなら、画面を通さずに会うことは
なかった可能性の方が断然高かったのに。
叶さんの結婚というおめでたい出来事が、
私と葛葉さんにも、幸せをくれた。
たどり着いた着地地点が同じだったらしく、
葛葉さんと声が重なった。
その偶然に、顔を合わせて笑い合い、
ふたりで一緒に、離れて休憩中の叶さんに手を振る。
叶さんは不思議そうな顔をしつつも、
手を振り返してくれた。
そう言ってくれた葛葉さんは、
出会った時とは比べ物にならないほど、
……いや、一段と可愛さを増した
満たされた笑顔を見せてくれた。
🄴🄽🄳
【あとがき】
推し無自も1周年を迎えることが出来ました。
一緒に楽しんでくださってありがとうございます!
ゼロ日婚を書き終わり、
毎日公開をしながら、
もらえるいいねに背中を押されながら、
ちまちまと書き始めた、
ゼロ日婚後の葛葉くんのお話。
どうしてもゼロ日婚のR18が取れなくて、
これでダメならもう、最初からそのつもりで書く!
と、自らR18にチェックを入れて書き始めました。
なので、私の作品の中では1番センシティブ。
外せる日が来るなんて思ってなかったから、
今現在とても驚いていますw
自分で書いておいて、告白シーンは本当に辛かった。
葛葉くんが悩んで自覚して告白して、
受け入れてもらえるのか不安な時間の長い書き方を
してしまったのでね……。
でも、とても好きな告白シーンになりました。
実った嬉しさが、灰崎ちゃんよりも葛葉くん側に
強く出てしまうタイプにはなりましたけどw
まだまだ浅い解像度でふわっちとド葛本社の方々を
書いたので、とても心配だったことを覚えています。
そして、「解像度低いのに書くの怖い」ということを
身をもって知れた作品になりましたね。
受け入れてもらえて安心しましたもん。
ひたすらに可愛い葛葉さんと
ひたすらにかっこいい灰崎ちゃん
という2人に落ち着きました。
考えている続編があるので、
いつかお披露目できたらなと思います。
頑張ります(*•̀ᴗ•́*)و ̑
これからも、推し無自を、
よろしくお願いします😊













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。