第7話

第六章 孤独の果て 〜許されざる夜〜
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2025/04/20 14:26 更新
「……雑渡」

🌸が彼の名を呼ぶと、雑渡は薄く微笑んだ。
けれど、その目はどこか遠くを見ているようだった。

ここは、隠れ里の一室。
闇に溶けるような静けさの中、灯りが揺らめいている。

雑渡は床に座り、酒を傾けていた。

——いつもと違う。

普段は決して乱れない男。
どんな時でも冷静で、すべてを計算している男。

なのに、今夜の彼は、まるでどこかが壊れてしまったかのようだった。

「酔ってるの?」

問いかけると、雑渡はふっと笑った。

「……私が? 酔うと思うか?」

「わからないわ。でも……」

🌸はそっと彼の隣に座る。

「あなた、少しだけ、弱く見える」

「……弱い?」

雑渡は静かに杯を置いた。

「……私のような人間が?」

「ええ」

雑渡はしばらく黙った後、ふっと息を吐いた。

「……あの夜、私は燃える屋敷の中にいた」

突如として語られた言葉に、🌸は息をのんだ。

「部下がいた。……いや、"いたはず"だった」

雑渡の声は、どこか遠い。
まるで、遥か昔の記憶を辿っているような。

「だが、私の判断が遅れた。いや——"間違えた"んだ」

手のひらが、そっと火傷の痕を撫でる。

「私が助けたのは、たった数人。……しかし、その何倍もの仲間が、私の命令のせいで死んだ」

「……」

「残された家族は私を責めたよ。……当然だろう? 彼らにとって私は"裏切り者"に等しかった」

雑渡の声には、冷笑が滲んでいた。

「それでも私は生き延びた。火傷を負いながらも、必死で——」

「……それでも、あなたは助けたのね」

🌸の言葉に、雑渡は小さく笑った。

「滑稽だろう? そんなもの、救いにはならない」

「……違うわ」

🌸はゆっくりと彼の火傷に触れた。

「あなたが助けた人がいる。彼だって、そう言ってた」

「……」

「それなのに、あなたはずっと"守れなかった"って、自分を責めてる」

雑渡の瞳が、わずかに揺れる。

「……何が言いたい」

「あなたは、自分を許せていないのね」

静かな夜の中、🌸の声だけが響く。

「私は——あなたの"本当の姿"が知りたい」

「……」

雑渡はしばらく黙っていた。
だが、やがてそっと目を伏せると、静かに囁いた。

「……君は、本当に愚かだな」

その言葉は、どこか震えていた。

次の瞬間、雑渡の腕が🌸を抱き寄せた。

「……私を知るというのは、そういうことだ」

囁きとともに、雑渡の唇が🌸の肌に触れる。
優しく、けれどどこか必死に。

彼はまるで、"確かめる"ように抱きしめていた——。

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