第6話

【第五章】近づく終わり。
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2025/10/28 21:00 更新
>写真と思い出
港町の小さな宿の前で、未來は今日もカメラを構えていた。
七瀬 未來
「咲季、こっち向いて」
来栖 咲季
「……いいけど、」
シャッターの音が小さく響く。
ボクの笑顔は、夕陽に照らされてやわらかく見えたけど、心の奥には小さな影が揺れている。
――もし、勇気があったら全部終わらせるのに。
でも、ボクにはその勇気はない。
だから、まだこうして未來と笑っている。
>海辺での午後。
午後、二人はまた海辺に出た。
遠くで子供たちが遊び、波が白く砕けている。
来栖 咲季
「もうすぐ夏休みも終わりだね」
七瀬 未來
「うん。でも、思い出は残るよ」
ボクは小さく息を吐く。
心の中では、残る思い出なんていらない、と叫んでいる。
でも目の前の未來の笑顔に、それを言えない。
来栖 咲季
「……ボク、また今度って思うことばっかりだ」
七瀬 未來
「……でも、今は、わたしがそばにいるから。」
握った手の温もりが、少しだけボクを支えてくれる。
>夜、宿にて
夜、宿の部屋で二人は窓の外を見つめる。
遠くの港に灯る灯りが、波にゆらゆらと映っている。
来栖 咲季
「ねぇ、未來」
七瀬 未來
「ん?なに?」
来栖 咲季
「ボク…ほんとは、君に、言いたいことがあるんだ」
ボクはそれ以上、心で思っていることを、上手く言葉に出せない。
来栖 咲季
「ごめん、やっぱり、なんでもないや」
七瀬 未來
「……そう、」
――言ったら、全てが変わってしまう気がする。
だから、心の奥にそっとしまったまま。
>終わりに近い朝。
翌朝、港町は夏の光に包まれていた。
二人は海辺に立ち、水平線の向こうの太陽を眺める。
来栖 咲季
「また、こうして、見られるかな……」
七瀬 未來
「……二人でいる限りは、見られるよ」
でも、その「いる限り」がどれだけ続くかは、誰にも分からない。
ボクの心の奥にはまだ、影が揺れているから。
To be continued……

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