「……何が…でも、これでっ」
攻撃によるものすごい地響きの後、ゆっくりと目を開ける。
そこには、無惨にも命を散らした少女__パンドラが居「突然驚きました。けど、とても素晴らしい魔法でしたよ。」
「___っ!?」
フォルトナが氷杭で確かに殺したはず。なのに何故、パンドラは生きているのか。
その疑問に答えるかのように口を開き___
「私の死を『見間違え』たのではないでしょうか?」
「………は、あ?」
理解できない。見間違える?何をどうすればあの惨状を見間違えることができるだろうか。現に、一度血を撒き散らして死んだではないか。なら、あの男___レグルスはどうなのだろうか。できれば巻き添えになっていて欲しいと思うが、
「…あのさ、ちょっといい?今のは明らかに僕も巻き添えにしようとしたよね?それって僕のこともついでにってことでしょ?ついでに巻き込むってどういう思考してるのかなぁ?まずついでってところに僕を軽視してるのがありありと伝わる。人をついでに」
この異世界はそんなに都合よく行かない。
今も長々とご高説を垂れているが、全部自己保身で自己愛の塊。見事な反面教師として機能していた。
そんな、状況に流されるままのスバルとは違い、頼れるジュースとフォルトナはこの状況をどうにかしようとしている。
「……フォルトナ様、エミリア様とスバル様を連れてお下がりください。我々だけでは、あの二人は危険すぎる。」
「ジュース!?何を言って…私も戦える!それに、あの女が目の前にいるのに…っ!」
「あなたの後ろには今誰がいらっしゃるのですか!!」
「…!」
「母様…」
「…フォルトナさん」
バッと振り返ると、フォルトナの服の裾を掴んで立つエミリアと、その後ろで寄り添うスバルの姿が。
「エミリア…スバル…」
「…なに、私も無策で残るほど無謀ではありません。この場は私に任せて、どうかこのお二人を。広場には私と志を同じくした方々がいるはず。あの方達なら、きっとあなた達の手助けをしてくださることでしょう。」
と、明らかに緊張で強張る顔で笑みを作り、気丈にも送り出そうという意思を示すジュース。
「___必ず、後で戻ってくるから」
俯き、一瞬の逡巡を経てからその一言を残し、エミリアを大切に抱き、スバルを連れて走り出す。
「じゅ、ジュースさん…!」
「ジュースぅぅぅう!!」
切実な気持ちが乗った二人の声に、ジュースは先ほどとは違う種類の微笑みを見せた。
___それが、今から手加減抜きに命を懸けて戦いに行く人の、最後に見せる穏やかな笑みに見えて。
「___絶対、また後で会わなきゃ許しませんから!!」
「…ええ、また後で会いましょう。」
その声を合図に、弾かれたように全力で森を駆け抜ける。
_____きっと、「また後で」だなんて約束が守られることはないだろうと直感しながら。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!