SOTA side
次の仕事場は
さっきまでの慌ただしさが嘘みたいに落ち着いていた。
スタジオの隅で待機しながら
俺たちはそれぞれ適当に腰を下ろして
他愛もない話をしている。
そんなやり取りを
俺は頬杖をつきながらぼんやり聞いてた。
会話の輪には入ってるけど、どこか半歩引いた位置。
俺の視界の端には、ずっと同じ光景があった。
少し離れたところにいる、あなた。
壁にもたれて立ったまま、スマホを見て。
ポケットにしまって。
また出して。
今度は腕時計を見る。
……分かりやすすぎる。
Jのことだろうな、って思う。
さっきから、もう何回目だ。
まなとはちらっと目線を向けて
すぐ察したように肩をすくめた。
…こいつはかなり見てるからな…笑
それでもってなんも言わず見守ってる。
必要な時はちゃんと出てくるし…
ほんとすげえやつ。
あなたの様子は気になるけど
一旦いつも通り仕事をこなす。
ラジオ収録が終わって、現場が一気に片付いていく。
スタッフの声、バッグの音、椅子を引く気配。
その中で、あなただけが少し動き遅れてる。
スマホを見て、何も来ていないのを確認して
また画面を暗くする。
俺は自然に近づいた。
声をかけると、少し驚いた顔でこっちを見る。
一拍置いてから、軽く言う。
一瞬だけ迷ったあと、あなたは小さく頷いた。
空いてるRECルームに連れていく。
ドアを閉めると、外の音がすっと遮断されて
空気が一段落ち着いた。
さっきまでのざわつきが嘘みたいに静かで
呼吸の音がやけに近く感じる。
俺が聞くと
あなたは少しだけ眉を下げて、素直に頷いた。
その一言が、思ってたより重くて。
俺は無意識に、ポケットの中で指を握り込んだ。
言葉の途中でスマホを見下ろす。
画面はもう暗いのにそれでも離さない。
俺的に、その答えだけで十分だった。
少し考えてから静かに切り出す。
少し間を取ってから、俺は続けた。
一瞬、あなたの視線が俺に戻る。
驚いたように瞬きをしてそれから少し戸惑った顔。
ポケットから鍵を出すと、金属が小さく音を立てる。
そう言って差し出した時
あなたが鍵を取ろうとして指先が俺の手に触れた。
ほんの一瞬。
でも、なぜかちゃんと分かるくらいの温度。
あなたは慌てて手を引こうとして
俺の方が先に、そっと力を抜いた。
小さく言われて、胸の奥がきゅっとなる。
俺は衝動を誤魔化すみたいに
あなたの頭に軽く手を置いた。
ぽん、っていうより、撫でるに近い動き。
そう言った声は、自分でも少し優しすぎたと思う。
こいつは何も言わなかったけど
一瞬だけ、肩の力が抜けたのが分かった。
正直、妬けないわけじゃない。
あなたが一人でJの部屋に行くのも
そこに自分がいられないのも。
でも。
――俺がJの立場なら。
今は、あなたにそばにいてほしい。
それだけは、迷いなく思えた。
鍵を握るあなたの手を見ながら、俺は続ける。
あなたは鍵を握り直して、しっかり頷いた。
RECルームのドアを開けて出ていく背中を
俺はしばらくそのまま見送っていた。
ーー俺はゆっくりと息を吐いた。
主
- ̗̀ 🎍 𝙷𝚊𝚙𝚙𝚢 𝙽𝚎𝚠 𝚈𝚎𝚊𝚛🎍 ̖́-











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!