第170話

限界_10
1,222
2026/01/05 13:56 更新
ラジオの本番中も

私はずっとスマホを裏返しにしたまま

何度も時計を見ていた。

画面が光らないことに、ほっとする気持ちと

同時に胸の奥がざわつく感じ。

……体調悪いんだもん。

連絡できなくても、当たり前だよね。


そう思おうとしても、気にならないわけがなくて。

収録が終わる頃には無意識にスマホを握りしめていた。
SOTA
…あなた
そうたに名前を呼ばれて顔を上げる。
SOTA
ちょっと話せる〜?
いつもの軽い声だったけど、目が少しだけ真剣で。

私は頷いて、そうたの後についてRECルームに入った。

ドアが閉まると、外の賑やかさが遠のく。
SOTA
…Jから連絡あった?
あなた
…ううん。まだ

そう答えた瞬間、自分の声が思ったより静かで

ちゃんと平気なふりをしてるのが分かった。
SOTA
心配?
あなた
…うん
否定する理由はなかった。

自炊はする派だけど、体調崩すことはあんま無いから

こういう時にちゃんと栄養あるもの取らないと…


そうたは少しだけ考えるような間を作ってから
SOTA
俺さ、Jと同じマンションなんだよね
あなた
うん、知ってるよ
SOTA
…合鍵持ってる
差し出された鍵を見て、言葉が詰まる。
あなた
…え?
SOTA
様子、見てきてあげて
鍵を受け取る時、指先が触れて

私は思わず手を引っ込めそうになった。


そうたに合鍵を預けてるってことは

それなりに自由に出入りしてるってことだよね。

同じマンションになったら

そうやって会いたい時に会いに行けるのか。

実はだいぶストレスフリーかも…?


一瞬、そんなことが頭をよぎって

自分で自分が嫌になる。

今は、そんなこと考えてる場合じゃないのに。
あなた
…わかった、ありがとう
鍵を受け取って、私が言葉を探していると

そうたは何も言わずに、そっと手を伸ばしてきた。

大きな手が、私の頭に触れる。

撫でるというより、包むみたいに。

一度、ゆっくりと。

それからもう一度、少しだけ指先に力を乗せて。

重さがある。

男の人の手だ、ってはっきり分かる安心感。

その重みが、さっきまで張りつめていた気持ちを

少しずつほどいていく。

焦ってたんだな、私。

自分でも気づかないくらい。
あなた
…。
何も言わなくても

“大丈夫”って言われてるみたいで。

そうたは特に、「分かってるよ」「気づいてるよ」って

伝えてくれる。

私が泣いてたり気分が落ちてる時は

すぐ気づいて、絶対そばにいてくれる。

私は無意識にほんの少しだけ身を預けてしまってから

はっとして顔を上げた。


そうたはもう手を離していて

いつもの穏やかな表情に戻っている。
SOTA
起きてたらさ
そうたは軽く笑って言う。
SOTA
ちゃんと休めって言っといて笑
あなた
…うん笑
鍵を握る指に、さっき触れた手の感触が残っていた。

RECルームを出ると

メンバーたちの声が戻ってきて

空気が現実に引き戻される。


私はその中に一瞬だけ身を置いてから

すぐに気持ちを切り替えて、片付けを始めた。


今は、じゅのんのところへ行く。



そうたの手の温度を、心の奥にそっと残したまま。

10,000♡ ありがとうございます。
自己満で書き始めたこのお話に沢山の人が♡してくれて
読んでくださって、、暖かいコメントもありがとうございます🥹
少しずつしか進んでいかなくて申し訳ないですが
今後ともどうぞよろしくお願いします🙏

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